親子の心のすれ違い
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親子の心のすれ違い

2019年12月04日(水)6:50 PM





もう一度、子育てのやり直しがしたい





心の苦しみのほとんどは、人間関係の歪みによって起こります。そして、悲しいことにその歪みは人が人と共に生きていくこの世界の中においては、いつの時代にも存在するものです。





でも、人はその悲しみ、痛み、つらさを背負いながらも自分の思い通りにいかない人間関係の切なさを周りの誰かに支えられることによって人の魂に触れ、尊い命を自らも支えて生きていくのだと思います。





それはまさに光と闇の繰り返しであり、人は人に傷つき、人に癒されていきます。さらに付け加えるならば、その荒波とコミュニケートしていく営みを通して、人は優しさとたくましさを獲得し、新たな人間関係に可能性を見出していきます。





知的に割り切れない社会の現実も、「自分を必要としてくれる」メッセージを背に受けながら、不純なものも引きずり”丼勘定”で「人間っていいな」とつぶやくのです。





わたしはそこに子どもの健気さを見、生きるパワーを感じるのです。それだけに街中にある小さな相談室を訪ね来る親子を通して、あらためて傷つきもがき、苦しむ子を支える親の姿勢にときに切なく、そして悔やまれるのです。





「戻れるなら、生まれ直しできるなら、もう一度子育てのやり直しがしたい」と多くの親御さんが言います。でも、子育てにやり直しはききません。





しかし見直すチャンスはたくさんあります。そんなきっかけを子供達は時に、荒々しく時にさりげなく与えてくれるのです。





ただ、聞いてほしかっただけ





ショートカットにジーンズが似合うボーイッシュなA子さん(二十歳)は、今、母親を前にしていたわりつつも悔しさを隠しきれずに何度も言います。





「お母さん、まだわかってくれないの。ただ聞いてほしかっただけなのよ。それだけでよかったの」





晩婚だった両親は、一人っ子のA子さんを、ことのほかかわいがって育てました。父親は「何かと頬ずり」、母親は「どろんこ遊び」をさせなかったようです。





彼女はいつの間にか”お姫様”になり、友だちに対しても「好き嫌いの激しい子」に育っていったと自ら言います。





A子さんは対人関係の距離感、間の取り方に悩み始め、孤立感を抱いた小学校五年生のときを思い出します。





「わたし、あだ名で呼ばれたことがないんです。どうしてみんなあだ名で呼び合うのかな、と思っているうちにわたし一人だけが名字だったんです。『Aさん』って浮いた感じでした。





不安だったので母に、『ねえ、ねえ聞いて』ってたずねたんですが、『しつこい子だね、お前にはそう呼びたいんだろう』と言われ、相手にしてもらえませんでした。





伝えたい気持をさえぎられたんです。それだけではありません。わたし、もうこの人(母親)には、一生愚痴を言わないでおこうと心に誓ったことがあったんです」





そのように言うと、背筋を伸ばし顔をこわばらせながら横目で母親を見ながら言いました。





「わが子、という気持ちだったのでしょうが、わたしはまず、わたしを受けとめてほしかったんです。母は何かと言うと『うちの子に何をするんだ』といったかばい方ばかりするんです」





A子さんは母親に、同意を求めるかのように見つめました。





「わたし、目立ちすぎたのか、いじめられたんです。だから辛くて母に聞いてほしかったんです。話すと母は”事実確認が大事”だと言っていろいろ具体的に質問してくるんです。





わたしには母が言うような”原因と結果”を詳しく説明できる余裕はありませんでした。やっと打ち明けたんだから、黙って最後までわたしの話を聞いてほしかったんです。





それなのに母は、連絡帳にその事実を自分で書いて、わたしから先生に渡すように命令するんです。そのうちにわたしが軽く言っただけで、自分勝手に先生に言いに行くんです」





おまえのお母さんは恐いな





「だんだん、『A子のお母さんは恐いぞ』という噂が友だちの間に広まり、近づいてくるクラスメイトはいなくなりました。悲しかったです。





本当は、いじめられていることなんて、親には言いたくないでしょう。それを話すわけですから、わたしに相談してから動いてほしかったんです。





それに、母が話せ話せというので話すと、『おまえの友だちはいつも悪い子ばかりだな、そんな子とは付き合うな』と言われてしまうんです。





こうなると、何も話せませんよね。それにこの人(母親)、何かというと『もっとわかりやすく話して』とか、『自分の気持ちを整理して順序よく言ってごらん』と言うのです。





そんな言い方、小学生にできるわけないでしょう。心の中は複雑なんだから思いついたことをポツン、ポツンと言うしかないですよね。





それをまとめるのが親の役目でしょう。整理して話そうとしたら、何も言えなくなるんですよね」母親はA子さんの一言ひと言にうなずきながらも何か言いたいようでした。





でも、彼女は目で母親を制止していました。「決定的だったのは授業参観日でした。母は廊下に立ち、わたしの後ろに座るいじわるな子を見ていました。





その子はそのことを知らないで、わたしにはたくようなちょっかいを出したんです。すると、それを見た母はいきなりその子に、『なにするの!アンタもはたかれたら痛いだろう!』と手を出したんです。





わたし、びっくりして後ろを振り向いたんです。するとその子が、『バカ』とわたしに言ったんです。そうするとまた母は、その子のところに近づいて、『バカって言われたらアンタどう思う?』と威すんです。





これじゃあわたし、母に何も言えませんよね。ただ、聞いてくれるだけでいいのに」





A子さんがひとしきり話し終えると、うつむく母親が遠慮するように口を開きました。





ただ聞くだけじゃどうしようもない。解決できないことを言わせておくだけじゃ、親として情けない。聞くだけで解決してあげられないのは、親のふがいなさになってしまう、そう思って」





「お母さん、その気持ちはわかるけど、友だち関係をつくっていくのはわたしよ。助けてと言った時、助けてくれればいいのよ。その前にただ聞いてほしかったの。





自分のことをわかってくれる人が、一人だけでもいれば解決していく勇気も出てくるのよ。それを聞いてもくれないで”可愛さ”だけで行動しちゃうんだから。





そして、中学を卒業したら、『もう大人なんだから、愚痴なんて言わないで自分で解決しなさい』だって。勝手よね」





こんな混乱した心の状態をアンビバレンスといいます。母親はA子さんの話に何度もうなずきながら、やはりどこかで戸惑っていました。





親子とは、離れていては不安で寂しくて、近づきすぎるとうっとうしい、なんとも切ない関係です。



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