何が原因でひきこもるのか
何が原因でひきこもるのかということをよく聞かれますが、ひきこもりの直接の原因というのは本人に聞いてもよくわからないことが多いです。
周りから見ていてもはっきりしません。多くの場合は、学校でのいじめだとか不登校だとか職場でのトラブルとか、何かの挫折体験のエピソードを持っているということは言えます。
確かに、それが直接の原因という場合もありますが、過去にそういうことがあったものの、すでに数年経過していて直接の因果関係は何とも言えないということもあります。きっかけというのは、なかなかはっきりしません。
「実らない努力」
不登校の場合を見ても、本人に聞いても理由などはたいていうまく説明できませんし、理由が言えるようなときというのは、すでに不登校からはるかに遠ざかってしまった時期になってからです。
だから、どうして学校に行きたくないのか、行けないのか、その理由を探るのはほとんど実らない努力になってしまいます。面接の中で、ひきこもりの本人が、かつて自分が引きこもった理由について次のように語ったことがあります。
「自分自身、ひきこもりになった理由は全然わかっていません。でも、わかっても仕方がないかもしれません」「親って、何でひきこもりになったのかとけっこう聞きたがるんですよね。その気持ちはわかるんです。(中略)でも、そんなこと聞いてもしょうがない。みんな違うんだから」
学校場面での体験、対人関係、家族関係、社会的背景などいろいろなことが微妙に絡み合っているものの、結局はその理由を絞り込むことはできないようです。
ひきこもりの状態にあるということは、生まれてこのかたずっと続けてきた自分なりの対処の仕方では、もはや現在の時点で間に合わなくなったということを意味しています。すでにもう役に立たなくなってしまった過去のやり方をどうひっくり返してみても、今のわれわれの役には立ちそうにありません。
ひきこもりの解決の鍵は、過去を探っても見つかりません。それは、ひきこもりのプロセスを先に進める中で、きっといつかめぐり合うものでしょう。
「病気の症状としてのひきこもり」
小林清香氏と伊藤順一郎氏は、統合失調症の症状の経過の中で見られるひきこもりについて、「消耗のためのひきこもり」、「陰性症状によるひきこもり」、「敏感すぎるためのひきこもり」の3つに分けて説明しています。とても簡明にまとめられていますので、その部分を引用します。
○ 入院を必要とするほど具合が悪くなった後、少し落ちついてから「ひきこもり」が見られることがあります。眠れなかったり妄想や幻覚に悩まされる時期には非常にたくさんのエネルギーが使われます。そのため、症状が落ち着いても、しばらくの間はエネルギーが回復せずに、気力も体力も消耗した状態になります。いわば消耗のための「ひきこもり」です。
○ あるいは慢性の経過の中で、どうしても意欲が出ない、感情の起伏もあまりない、話しかけても返事がなかなかかえってこない、という様子での「ひきこもり」があります。いわゆる「陰性症状」と呼ばれる状態が強くなって、動きがとれない「ひきこもり」です。
○ あるいはまた、妄想や幻覚のような「陽性症状」が持続するため外へ出られない場合もあります。人が自分のことを見ているのではないか、誰かに何か言われるのではないかという不安や心配が高まり、外出することが難しい、いわば敏感すぎるための「ひきこもり」です。
○ いずれの場合にも共通していることは、①自分に対する自信や安心感がとても小さくなっていて、人と関わることに強い緊張や不安を感じる、②活力や意欲が減っていて、外へ出るときには非常にたくさんのエネルギーが必要とされる、ということであると思われます。
では、こうした病気によるものと、そうでない場合とでは、実際上どんな違いがあるのでしょうか。一言でいうと、その違いは「社会性の向き」にあると思われます。病気の場合のひきこもりでは、病気の性質から、あるいは服薬等の影響もあって発揮できる社会性そのものが狭められています。
社会性のベクトル(矢印)が十分に伸びきらないのです。でも、本人の気持ちは社会の方向に向いていて、ベクトルはまっすぐです。活動のしにくさはあっても、活動できる範囲で社会的なのです。「外に出るのがしんどくて、とても出られない」ことはあっても、外に出る以外の、今できる限りの精一杯の社会性を発揮しています。
たとえ自室に閉居しているときでさえ、それがギリギリ発揮できる社会性の有り様なのです。このように、社会性自体は外向きですから、SST(生活技能訓練)などにより技術を身につけることで、社会活動を拡大していくことが可能になります。
これに対して病気でないひきこもりの場合、同じように生活技能を高めることで社会的な活動につながっていくかというと、必ずしもそうはなりません。
病気でないひきこもりの場合は、社会性のベクトルがどこかでUターンしている、あるいは複雑に折れ曲がっていて自分の方に戻ってきてしまうのです。
病気によるひきこもりの場合には、ときには外部からの刺激に反応することが難しい状態になることもありますが、病気でないひきこもりの場合はむしろその逆で、外部からの呼びかけに対しては聞き耳を立てているのではないかと思えるほど敏感です。
そしてそこに、「外に出て行ったほうがいいのは分かっている。でもこんな自分ではとても出て行けない」といった、自分を圧し止める何かがあります。
ですから、病気でないひきこもりの場合は、社会性を伸ばそうというより、むしろそうした自らの社会性をいったん受け入れ、そこから立て直していくプロセスが必要になります。
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