父親の不在と母子の密着
ホーム > 父親の不在と母子の密着

父親の不在と母子の密着

2019年11月24日(日)11:38 AM





思春期の子どもの不適応に関連した家族の問題で、まず第一に指摘されるのは「父親不在」と「母子の密着」です。





これに関連して「父なき社会」といわれる観点がありますが、このほうは、一般に家父長制の崩壊による社会機構全般に見られる規範維持機能の後退を指しています。





わが国では、戦後の民法改正による戸主制度の廃止による影響は後者の意味で大きいのですが、これには、平等化の実現という大きなメリットもありました。





しかし、これとは別に、家庭という空間に父親がほとんどいないという現象と、その結果現れた母子中心の家庭生活という点は、わが国の特徴的な問題として指摘されています。





わが国の戦後の経済復興は、第二次産業を中心とした都市集中型で始まり、これが機械化と生産規模の拡大へと進むなかで、多くの人が三大都市圏に移住し、同時にサラリーマン化していきました。





その結果、職場が家庭から離れると同時に、都市では通勤距離が拡大し、多くの父親がその生活時間の大半を家庭外で過ごすようになってきています。





この点、西欧諸国では、昼食に帰宅して食事を家族と共にすることが可能な距離に職場があり、父子の関係は日本に比べて長い接触時間を日常的に保っているように思われます。





さらに、わが国では、性別役割分担(男は外に出て働き、女は家にいて家事を行う)が観念的には否定されながら、その習慣は根強く残り、税制や給与体系もこれを支えたので、父親(夫)が仕事に専念し、育児は結婚ないし出産を機会に退職した母親(妻)任せという生活形態が多くの家庭で続けられました。





また、地方では、父親が都会に職を求めて出稼ぎとなり、大企業の従業員は転勤に際して子どもの教育環境に配慮して、単身赴任生活を選択することが一種の社会的習慣として広まっていきます。





このようにして、父親の姿が家庭のなかからどんどん消えていったのが、ここ三、四○年間の出来事といっていいでしょう。





そのうえ、フルタイムで働く父親たちの多くは、終身雇用制の下で企業別組織に帰属していて、地域社会とのつながりが少なく、家族ぐるみで付き合う社交の習慣も乏しかったため、父親として地域の子どもたちと接する機会が乏しく、地域社会から遊離した存在となっていきます。





このことは、職場と住居の分離と遠隔化によって、父親の働く姿が子どもたちの目に触れなくなっただけでなく、大人として人と接する社会人としての父親の姿も子どもたちの目に写らなくなり、極端な場合には、疲れて横になってテレビを見ている父親の姿しか子どもたちの目に写らなくなりました。





しかし、父親が不在にならないで、児童期から学童期を通じて子どもとよく遊んでいた家庭では、思春期に子どもが問題を抱えたとき、子どもの反抗を超えて接触できる絆をもっていることが観察できます。





特に、小学校の就学前後の男の子と父親との接触は有意義です。ちょうどこの年齢の男の子は、背伸びして新たなことへ次々に挑戦したがり、それができると得意がり、時には反抗的になりますが父親が「男同士」という意識を介して子どもの冒険を手助けし、成功して得意がる子をほめてやるという交流が見られます。





ここには、自立と依存の双方向の感情を同時に受け入れる関係があり、また、何でも上手にこなす父親を尊敬すると同時に、父親に同一視して友人に向けて父親を自慢します。





このような体験が思春期という難しい時期に生きてくるといえるでしょう。しかし、最近の電車内ではこのような親子関係に満ち足りていると思わせる微笑ましい腕白坊やが減り、衝動を抑えきれないでわがまま放題という子どもが目につきます。ここで考えなければならないもう一つの問題は、父親の不在による母子の密着です。





先にも述べたように、父親たちは生活時間の大部分を職場(時には接待や憩いの場)で仕事の関係者と過ごし、その関心事も仕事や職場の人間関係が中心になっていきます。





そのうえ、家事と育児を妻に委ねて、家族のことに関心を向けないため、夫と精神的な交流が十分できないことに失望した妻たちは、専ら育児に力を注ぐようになり、母子関係が夫婦の関係より密接になっていきます。





その結果、育てる人と育てられる人という親子間の境界が曖昧になり、友だちのような親子が理想であるといった価値観さえ生まれてきます。





こうなると、子どもたちは大人への尊敬を失い、大人になって自由を手に入れたいという成長の動機が弱められ、いつまでも母の膝の上にいたいと願うようになりかねません。これが、不登校の要因として述べた分離不安の心理を生む一つの要因となります。





また、幼い頃は「いい子」であった子どもが、思春期になってさまざまな不適応を示す事例では、幼児期に反抗が見られなかったという特徴が指摘されています。





このことは、就学前の四、五歳の時に、乳児期から続いた母子間の密接な相互関係を解消して、子どもの心を家庭外に向けさせるべき時期に、父親の存在が家庭のなかで十分に機能しなかったときに生じやすいと考えられています。



メニュー

過去の記事

団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援