社会的ひきこもりについて
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社会的ひきこもりについて

2019年11月12日(火)10:48 PM






一般に「社会的ひきこもり」という名称が用いられる事例には、次のような特徴があります。





第一に、多くは不登校の状態から始まり、学校を卒業あるいは中途退学した後、進学や復学することもなく、仕事にも就かないで社会的な役割や社会的人間関係から身を引いていることで、例外的に、いったん就職して退職した後、この状態になることもあります。





家族や限られた友人との間では、わずかながら会話が保たれていることが多いのですが、なかには、家族との関わりを避け、自室からほとんど出ないこともあります。第二に、その状態が長期にわたって継続することです。六ヶ月以上と定義している人もいます。





第三に、その状態が思春期ないし青年期に現れたものであることです。多くは、前記の状態が二十歳代後半までに現れるので、そのように定義している人もいます。





第四に、その状態が統合失調症やうつ病などの精神疾患から発しているとは考えられないことです。以上のことから、この「社会的ひきこもり」は、精神病の症状として現れる自閉などとは区別される精神状態で、思春期・青年期に見られる発達障害の一種と見られていて、わたしは、子どもから大人に移行する時期の心理的危機に、「ひきこもり」と名づけられるような反応を示している状態と考えています。





前記で述べたような症例が、「社会的ひきこもり」という名称で広く一般的に知られるようになってきたのは、それほど古いことではなく、ここ二十年ぐらいのことです。





他方、病的なひきこもりは古くからあり、各種の人間関係から身を引いて外出せず、自室にひきこもってしまうような病態を示す統合失調症の自閉状態や、躁うつ病のうつ状態などがあります。





そこで、これらの精神疾患の症状とは明らかに異なり、「社会的ひきこもり」のように何らかの心理的な問題が原因で学校や職場などの社会的な場面に出ることができなくなる症状としては、昭和三十年代にすでに見られた「学校恐怖症」があります。





「学校恐怖症」と名づけられたこれらの症例の典型的な症状は、前の晩までは、明日は学校に行くと話して登校の支度をしながら、朝になると頭とかお腹が痛くなって、学校に行くことができません。





しかし、友だちたちが学校から帰ってくるころになると、頭痛や腹痛はすっかり治ってしまい、元気に遊ぶことができます。しかし、翌朝になると、また同じことが繰り返されるというものです。





このような症状は、小学生に多く見られ、その原因については心理的な発達が不十分で、親といっしょにいないと不安になるため、頭痛や腹痛といった無意識的身体症状が現れて、事実上学校に行けなくなるという「分離不安」説が有力でした。





その後、中学生や高校生の年齢段階で、なんだかんだと理屈をつけて登校しなくなる人が見られるようになります。これらの生徒は、それまではよく勉強する生徒であったり、部活等を通じてスポーツに一生懸命取り組んできた生徒であることが多く、従来の学校嫌い、特に怠学とは明らかに異なっていました。





そして、これらの生徒にとって、周囲が気づかないような小さな失敗や、先生のちょっとした叱責が本人には大きな挫折として体験されていたことなどがわかってきます。





また、これらの事例の中には、「学校恐怖症」と同じように頭痛や腹痛などを伴うものもあり、これらを含めて広く「登校拒否」という名称で表すようになります。





その後、いじめや学校内の人間関係の問題等で学校に行けなくなるものが加わり、長期間欠席する生徒の総数が増加し、その名称も「不登校」へと変化していきます。





そして、その原因も、生徒個人の問題との見方から学校制度の中に潜む問題も含めて考えるようになり、いろいろな要因が複雑に絡みあった現象と考えるようになってきました。





なお、文部科学省では、昭和四十一年から病気などの明確な理由によるものを除いた五十日以上の長期欠席者の統計を作成していて、このなかに上述した事例が怠学とともに含まれています。





それによると、長期欠席者の人数は、昭和四十年代には、全国の小・中学校を合わせておおむね一万人であったものが、昭和五十年代後半から一貫して増え続け、平成十年には十万人台に達し、平成十一年には十三万人に達し、この数値は四国四県の小・中学生全員に匹敵するといわれています。





なお、高等学校については、長期欠席の場合進級できずに退学する例が多いためか、長期欠席者の統計がなく中途退学者の統計が作られています。また、大学生については、昭和五十年代から長期欠席者のなかに「スチューデント・アパシー」と呼ばれる特徴的な事例が認められるようになります。





このスチューデント・アパシーは、大学に入学したところで、その先の目標が失われて学業に対する無気力、無関心が見られるようになり、そのため長期欠席の状態に陥っているものを指しています。





大学生の場合には、中学生や高校生と違って出席が強要されることが少ないため、登校を拒否する理由を見つける必要もなく、焦燥感も生じない代わりに、無気力状態から抜けだそうとする意欲も見られないことが特徴とされています。





そして、授業には出席しないがアルバイトは続けているなど、ひきこもり傾向が顕著でない事例も少なくありません。これは、わが国の大学が比較的自由で多様な学生生活のあり方が許容されているためといえます。





しかし、これらの学生は、人からどのように評価されるかには非常に敏感で、失敗したり叱られたりするとひどく傷つくことが認められます。そのため、自分が確実に受け入れられる場面意外には、できるだけ外出することを避けるようにするなど、対人関係の困難さは、不登校の生徒と共通する問題を抱えているとみることができます。





そこで、単位が取れないで学籍を失ったり、単位はなんとか取れたとしても、いざ大学を卒業する段になると次の進路を選択しなければならなくなり、これまでのように社会との関わり方を曖昧にしておくことができなくなります。





すると内心に葛藤が生じてきて身動きが取れなくなり、ひきこもり状態に陥ることが少なくありません。また、このような心理的な問題を抱えたままですと、卒業時にはいったん就職したとしても、まもなく理由をつけて退職し、そのまま働くことを止めてしまうことがあります。





そのため、スチューデント・アパシーを「社会的ひきこもり」の一つの形態として考えている専門家もいます。ところで、「社会的ひきこもり」と見られる事例は、どの程度あるのでしょうか。この点については残念ながら、不登校のよう全国統計はありません。





そこで「社会的ひきこもり」事例の多くが、中学・高校在学中に始まった不登校が、その後に卒業や退学して学籍がなくなったあとも引き続き社会関係から身を引いた生活を続けている事例であると考えると、不登校の統計から推定することが考えられるのですが、高校生や大学生に関する不登校の統計がないので、この推定も困難です。





しかし、中学生の不登校事例が著しく増加していることを考えると、「社会的ひきこもり」事例も、今後確実に増加していくことが想定されます。





そして、今から少なくとも三、四十年前には見られなかったことが、これだけ問題となってきているのですから、その原因に個別的要因はあるとしても、その背景に社会的・時代的要因を想定しなければなりません。



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