メールによる不登校の子供支援
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メールによる不登校の子供支援

2019年11月10日(日)8:01 PM



通常、不登校の子供本人が自ら進んで、相談所に相談することはほとんどありません。





多くの事例では、保護者や教師に連れられてきます。





また、電話相談でも、子供本人からの不登校に関する相談もまれです。





これに対して、関東自立就労支援センターが試験的に行った電子メール相談では、不登校に悩む子供自身からのメールが数多く届きました。





電子メールでは、匿名で相談できるシステムを構築できます。





この場合、電子メールでは、個人名や住所などを相手に知らせなくてもよいのです。





そのため、子供自身からの電子メール相談が、大量に届いたのではないかと思われます。





関東自立就労支援センターの担当者は、本名と資格を名乗りました。





ですが、相談が継続しても、子供たちは本名を名乗ることは少なかったです。





保護者相談や教師相談の場合では、相談担当者が身分、氏名を明らかにするのに呼応して、多くの場合で本名を明らかにするのとは対照的でした。




このことも、電子メールのシステムが持つ「自分を守りながら、自己開示できる」という特徴が機能したと考えられ、この特徴が子供自身に、相談やカウンセリングを受けることへの抵抗感を弱めたようでした。




電子メールがなぜ「自分を守りながら、自己開示できる」のかといえば、本来電子メールが、情報の利用者の利便性を最優先するシステムであることにもよります。





電話やFAXには、情報の受け手の都合を考えずに手元に到着する無遠慮さがあります。





ですが電子メールの場合には、情報の受け手と情報の送り手が、時間的、経済的に最適のタイミングで情報の授受ができます。





電子メールでは、メールを見たいときに利用者の判断で読めばよいのです。





そして、返信をしなければならないものでもありません。





着信拒否をすることで、見たくないメールを最初から排除することもできます。





いよいよ嫌になれば、メールアドレスを変更すれば相手との関係をいつでも切断できます。





また、メールによる相談では、思春期、青年期の女性が多い傾向も見られました。





この年齢の女性は、仲間と親密な手紙のやりとりをしたり、秘密の情報を共有したりすることが少なくありません。





そのため、電子メールという文字による相談に、文化的になじみやすかったのではないかと思われます。





一方、匿名でのメール相談では、以下のような問題や危険性が生じる恐れもあります。





情報が少ない中でのやり取りなので、誤読による誤解も生じやすいです。





また、感情転移の問題も起きやすいです。





そして、子供本人が虚偽の情報を意図的に流す場合でも、その情報の真偽を判断できません。





特に相談担当者が苦慮したのは、精神疾患など医療的な対応が必要な事例かどうかの判断でした。





この点では、対面相談と比較すれば圧倒的に難しいです。





仮に医療的な対応や専門的な対面でのカウンセリングが必要との判断ができたとしても、もう一つの問題が生じます。





いつ切断するかわからない電子メールという手段では、その後、どこかの専門の機関を紹介することが容易ではないのです。





本人に専門的な心理治療や医療の診察を受ける必要があることを、直接本人には伝えにくいのです。





保護者が相談を受けているのを知らない場合も多いため、保護者との連絡も取れません。





以上のことから、専門機関につないでいくことは至難の業になるのです。





電子メール・コンサルテーション





一方、電子メールで行った保護者や教師の相談では、的確なアドバイスがなされた場合には、相談担当者が驚くほど展開が早く進んだ場合が多かったです。





保護者でも、教師の場合でも、対象となる子供の問題をどのように理解するのか、どのように考えるかの事例理解と、その理解に基づいた対応方針が定まるまでは、頻繁にメールのやり取りがなされます。





ですが、一定の事例理解ができ、当面の大きな方針が定まるとメールのやり取りは休止します。





そして、順調に展開していく事例では、メールが休止した後で問題の解決を知らせるメールが届き、終結となる場合が多かったです。





耳で聞いたアドバイスは忘れることが多いものです。





ですが、電子メールの場合は、アドバイスが文章で手元に残ります。





迷った時や、大切にしたい言葉を思い出すために、電子メールは画面を開いて簡単に読み返すことができます。





実際、電子メールのアドバイスをプリントアウトし、お守りのように持っていたケースもありました。





メールのやり取りの中で、事例理解と基本的な方針が手元に記録として残ります。





そのために、その時点のアドバイスがメールの休止後にも影響を与え続け、保護者や教師のかかわりを勇気づけ続けたようです。





これが、電子メール相談が持つ大きな特徴であったと言えるでしょう。





また、関東自立就労支援センターの電子メール相談では、3割から4割が父親からの相談でした。





夫婦で相談しながら電子メールを送信してきたり、母親に送信したメールを父親が読んだりなど、夫婦で活用していた事例も少なくありませんでした。





そして、子供の問題では、父親がかかわりだすと子供が変化することがしばしばあります。





電子メールを用いることで、特に父親が対象者となる相談が多かったのですが、これも電子メール相談の特徴といえそうです。





個人面接の補助手段としての電子メール





以上のように、電子メールを使った相談には様々な利点があります。





匿名での電子メール相談は、不登校の子供本人からの援助を求めるアクセスを直接に受けることを可能にしました。





また、電子メールという道具が父親の相談への参加を容易にしました。





そして、地域による相談サービスの格差や情報の格差も解消します。





保護者や教師のコンサルテーションでは、対面での援助に匹敵する効果の得られたケースも少なくありませんでした。




しかし、電子メールは相談の本道にはなりえません。





対面での相談が、不登校問題の援助では本道であり、電子メールが対面相談の補助として使用されたり、対面相談と電子メール相談が併用されたりする場合が多いです。





そして、今後は電話相談と同様に、電子メール相談はさらに頻繁に利用されていくでしょう。





電子メールが対面相談に併用される場合には、次のような利点が考えられます。





まず、電子メールが人間関係の維持・強化に優れた機能を持つことが挙げられます。





実際、電子メールは、親しい人との関係の維持や結び付きを強めるために活用されることが多いです。





携帯メールで、その傾向が特に強くなりますが、関係の維持や強化のために電子メール上は感情を表す言葉が使用されやすいです。





なぜなら、電子メールの場合は、やりとりされる情報が少ないからです。





その情報の少なさを補うために、親しい人同士では、現状報告に感情表現を加える言い回しが多用されます。





たとえば、「○○という映画を見たよ。感激して涙が出ちゃった」というような表現が抵抗なくできます。





すなわち、面と向かって語りにくいことや、照れくさいことでも、電子メールでは許される表現があります。





電子メール特有の感情表現の仕方が、人間関係の結び付きを強くするのです。





また、電子メールでは、いつでもどこでも相手の都合はあまり考えずに送信可能です。




その感覚が、メールをやり取りする相手と 24時間他者とむすびついているという感覚を与えやすいです。





この特徴も、他者との関係の親密さを積み上げるように作用します。





次に、電子メールは若い世代ほど抵抗がなく、電子メールを扱える子供もたくさんいます。





対面相談との併用では、面接のアポイントにメールを使用したり、面談での感想を改めてメールで送信する場合も少なくありません。





特に、面談での感想を電子メールで送信してくる場合では、対面の場合と同様、時にはそれ以上に自分の問題を再度吟味することになるので、内省が進む場合も少なくありません。





また、不登校が本格化した段階で、顔を合わせることができなくても、電子メールは手紙や電話よりも返信に抵抗感を感じないですむ利点もあります。





これは、先述の電子メールが身を守る特徴によるものです。





したがって、電子メールは、在宅のままの子供と接触を継続するうえで、不登校問題では特に効果的に活用できる機能だと言えるでしょう。





電話は、その即時性から緊急の危機介入に向いています。また、耳元でささやく機能があるがゆえに、自殺をとどまらせることにも強い抑止力を持っています。





それと同様に、電子メールの親密な関係を積み上げることや、内省を促す作用を持つなどの特徴を生かすことができれば、対面相談と併用される中で、より効果的に不登校問題の援助に役立てることができるのではないでしょうか。





ただし、先にもふれましたが、電子メールには感情転移の生じやすさもあることを忘れてはなりません。





そのため、相談担当者は、誤読の生じない表現と十分な配慮の行き届いた返信を心がけなければなりません。





そのために、どのようなタイミングで、どのような頻度で返事を書くのかにも十分な配慮が必要になります。





いずれにしても、電子メールによる相談は、これからの時代、大きな可能性を持っています。





それゆえに、電子メールの特徴を熟知して活用していきたいものです。



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関東自立就労支援センター
理事長:
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理事:
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理事:
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住所
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TEL
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メール
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活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
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