いじめの共通要素
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いじめの共通要素

2019年09月12日(木)5:25 PM

 

 

 

 

いじめは、どの社会でもどの時代にでも観察できます。

 

 

 

 

 

この観察を可能にしているのは、たとえ用いられる言葉が違っていても、共通の要素が備わっているからです。

 

 

 

 

 

研究上でも、今日ではおおむね同じ概念に統一され、OECDなどの国際機関や論文では、共通語として「bullying」があてられています。

 

 

 

 

 

しかし、一口に「いじめ」といっても、その現れ方はさまざまです。

 

 

 

 

 

世代区分から捉えれば、「大人たちのいじめ」「子どもたちのいじめ」「大人と子どもの間で発生するいじめ」が含まれてきます。

 

 

 

 

 

大人のいじめを例にとれば、さらに「職場いじめ(パワー・ハラスメント)」「セクシャル・ハラスメント」「アカデミック・ハラスメント」「配偶者暴力(ドメスティック・バイオレンス)」「家族間暴力」などが含まれ、それぞれ固有の用語や性格をもち、「いじめ」という「類」概念の下位「種」を構成しています。

 

 

 

 

 

しかし、日常用語では、同じ現象があるときは対教師暴力、あるときは教師いじめと呼ばれるなど、「類」概念と「種」概念の区別についての意識がないまま用いられていることが多いです。

 

 

 

 

 

なお、子どもたちのいじめが大きな社会問題となり、「いじめ」といえば「子どもたちのいじめ」を指すことが一般的になりました。

 

 

 

 

 

そのため、厳密な語法として確立しているわけではありませんが、「大人のいじめ」については、「パワー・ハラスメント」「セクシャル・ハラスメント」などのように、「いじめ」という言葉を用いないことが一般的です。

 

 

 

 

 

「いじめ」のような社会現象を定義する場合、いじめに含まれるすべての種類を枚挙する方法は困難を極めます。

 

 

 

 

 

そのため、さまざまな様態のいじめに共通する性質を析出することによって現象を説明する「内包的」定義法をとることになります。

 

 

 

 

 

ところで、析出された共通の性質が、大人のいじめなど他のいじめにも共通して観察されるとすれば、これらの性質をもって類概念としての「いじめ」の定義を構成することができます。

 

 

 

 

 

各国における定義の変遷

 

 

 

 

 

今日では、さまざまな国で子どもたちのいじめ研究が行われています。

 

 

 

 

 

いじめの定義づけの流れを概観してみると、ノルウェーのD・オルべウスを嚆矢とします。

 

 

 

 

 

彼のいじめ防止プログラムと、その基となった実態調査は、経済先進国のその後のいじめ研究と対策に大きな影響を与えたため、多くの国で彼の定義が踏襲されています。

 

 

 

 

 

オルべウスは、「ある生徒が、繰り返し長期にわたって、一人または複数の生徒による拒否的行動にさらされている場合、その生徒はいじめられている」と定義しています。

 

 

 

 

 

ここでいう「拒否的行動」とは、「ある生徒が他の生徒に意図的に攻撃を加えたり、加えようとしたり、怪我をさせたり、不安を与えたりすること、つまり基本的には攻撃的行動の定義に含意されているもの」として補足説明を加え、さらに「身体的または心理的に同程度の力をもった二人の生徒」の間で起きる拒否的行動は、いじめから排除されることを強調し、両者の力が不均衡であることを重要な定義要件としています。

 

 

 

 

 

最も早くからオルべウスの研究に着目したのが、イギリスのP・K・スミスです。

 

 

 

 

 

スミスとその共同研究者たちは、抽象的なオルべウスのいじめ防止プログラムの具体化を図り、いじめ対策プロジェクトを開発しました。

 

 

 

 

 

これがシェフィールド・プロジェクトです。

 

 

 

 

 

スミスらは、その後、ヨーロッパやオーストラリア、さらには中国、韓国などの国々と共同調査、比較調査を進め、シェフィールド・プロジェクトの有効性について検討していきました。

 

 

 

 

 

こうして、各国のいじめの概念は、オルべウスとスミスの影響下で構成されることとなりました。

 

 

 

 

 

一方、日本は社会問題化が早かったこともあって、概念化も先行していました。

 

 

 

 

 

しかし、海外の情報が入り始める九○年代半ばまで、いじめは特殊日本的な現象と見なされてきました。

 

 

 

 

 

日本の八○年代のいじめ研究は、鎖国状態にあったのです。

 

 

 

 

 

そのため、この時代の研究や対策が、海外に発信されることもなく、逆に海外の研究や対策を引用することもありませんでした。

 

 

 

 

 

それは、八○年代に、まだイギリスでは社会問題化しておらず、研究や対策の中心がスカンジナビア圏に集中していたことも影響していたと思われます。

 

 

 

 

 

このようにして、日本は、独立して研究や対策を進めることになり、その基礎となる概念構成も独立して行われました。

 

 

 

 

 

しかし、日本と海外は相互の影響のないまま概念構成を進めてきたにもかかわらず、基本的な要素は同じものとなっています。

 

 

 

 

 

日本の八○年代の研究が、いじめの発生原因を、「受験戦争のストレス」「島国根性」「仲間集団の閉鎖性」「横並び指向」などに見い出していたことは確かです。

 

 

 

 

 

しかし、いじめが文化・社会を超えて遍く観察されることを考慮すれば、一見、特定の文化や社会に固有に見えても、そのメカニズムは人間社会に遍く観察されるものでなければなりません。

 

 

 

 

 

当時の発生原因とされていた、上記の日本人の行動や意識の背後には、「社会的な競争」「欲求不満」「ストレス」「集団へのロイヤリティや凝集性への圧力」「関係の囲い込み」「異質性の排除」など、人間社会に普遍的に観察されるメカニズムが横たわっています。

 

 

 

 

 

原因が特殊日本的に見えるのは、それらのメカニズムが日本の社会状況と結びついて発現したからに過ぎません。

 

 

 

 

 

このように、人間社会に偏在するいじめを考え、対処するにはまず社会や文化、時代の多様性を超え、いじめを生み出す共通の要素を抽出することが必要な作業となります。

 

 

 

 

 

三つの要素

 

 

 

 

 

世界のいじめ研究と概念定義に大きな影響を与えたオルべウスやスミスの系譜に属する研究と、日本の研究者や行政による定義を通覧してみると、そこには、いじめの概念を構成する共通の要素が想定されていることがわかります。

 

 

 

 

 

ここでは、一つ一つの研究を比較し分析することは避けますが、多くの研究者が着目しているのは、「力関係のアンバランスとその乱用」「被害性の存在」「継続性ないしは反復性」の三つの要素です。

 

 

 

 

 

これらの要素は文部科学省による、いじめがあったかどうかを判断する基準でも共通して用いられています。

 

 

 

 

 

同省では、いじめを「①自分より弱いものに対して一方的に、②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じていること」としています。

 

 

 

 



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