親に対する暴力を伴うひきこもり相談事例
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親に対する暴力を伴うひきこもり相談事例

2019年07月18日(木)7:34 PM

関東自立就労支援センターに来談するまでの経過

 

 

 

 

 

家族構成   Aさん(27歳)は、個人会社を経営する父(60歳)と、専業主婦の母(57歳)との間の一人っ子で、これまで3人家族で生活してきました。

 

 

 

 

 

生活歴  幼児期やや体が弱いものの、さして問題のない子どもでした。2年保育の幼稚園では、おとなしい素直な子で、友だちが少ないことと欠席の多いことが母親の気がかりなことでした。

 

 

 

 

 

小学校の学業成績は中の下くらいで、小学5年生あたりから口数が減り、母親は「年頃かな」と思っていました。小学5、6年生のころに少しいじめにあったようです。

 

 

 

 

 

中学校は、公立に進み、またいじめにあいました。しかし、担任の先生が良い先生で成績も少し上がりました。高校へ進みましたが、本人は「家から遠い」と気に入らなかったようです。

 

 

 

 

 

挫折①  高校卒業のときは大学受験に失敗して一浪となり、予備校に入りましたが、2,3日でやめてしまいました。その後、二浪、三浪と大学のレベルを下げずに受験し、受験はすべて不合格となりました。

 

 

 

 

 

成人して三度目の受験に失敗した後、スーパーのアルバイトをしましたが、店員に「バカにされた」と怒り、すぐにやめてしまいました。

 

 

 

 

 

22歳のとき、Aさんは父親の紹介で運送会社に勤め始めました。しかし、同僚と気が合わず、ここも半年でやめました。

 

 

 

 

 

ひきこもりと暴力  その後、23歳から25歳にかけて、家にひきこもりました。26歳の秋、軽い暴力に始まってやがて母親をしばしば殴るようになり、精神科の医院を受診しました。

 

 

 

 

 

薬ももらいましたが、本人は「こんなもの効かない」と飲もうとしませんでした。

 

 

 

 

 

その翌年、また母親を殴り、それを止めようとした父親にも殴りかかって胸を骨折させました。身の危険を感じた両親は保健所に相談し、ある病院へ父親も付き添って入院させました。

 

 

 

 

 

しかし、本人があまりにたびたび退院をせがむので、一ヶ月で退院させ、外来に通わせるようにしましたが、三ヶ月余りで止めてしまいました。

 

 

 

 

 

挫折②  Aさんは27歳のとき「アルバイトをする」といって、ある会社の面接を受けようとしましたが、履歴書だけで採用を断られました。

 

 

 

 

 

そのとき、「病院には精神科に入院したというカルテがある。それがあるかぎり、おれは会社に入れない。会社はカルテのことを調べて、知っているんだ。こんな目にあうのは、俺を病院に入れたお前たちのせいだ。

 

 

 

 

 

責任をとって、親が一生面倒をみろ」と叫んで大暴れし、父親を殴って顔や手に大怪我をさせました。そのとき以来、父親は離れたアパートに住むようになりました。

 

 

 

 

 

この大暴れから2ヵ月後に、知人の紹介で母親が関東自立就労支援センターを訪れました。

 

 

 

 

 

来談後の経過

 

 

 

 

 

母親の訴え  

 

 

 

 

 

相談室に現れた母親は、それまでの経過を語り、「父親を怪我させたとき、わたしが外出から帰って、『お父さんは?』と聞くと、Aは『そんなもの知らねえよ』と興奮して答えました。

 

 

 

 

 

病院へ行ったというので、病院へとんで行きました。そのときのことは、ショックがひどくてよく覚えていないぐらいです。いったいどうしたらいいのでしょう。

 

 

 

 

 

毎日死にものぐるいで、もうこれ以上がんばれません」と訴えました。カウンセラーの見るところでは、このAという青年は自尊心が異常に強く、その一方で劣等感も強いようです。

 

 

 

 

 

そうなった原因について、母親によればAさんの父親は大した学歴はなく、努力して今日を築いてきた人ですが、母方の親戚には優秀な人が多く、一流企業の役員などもいます。

 

 

 

 

 

それなのにAさんは一人っ子で心細いうえに、自分は高校も自慢できるようなレベルでもありませんでした。「それがあの子には悔しかったのでしょう。わたしの育て方が悪かったのかもしれません」ということでした。

 

 

 

 

 

援助の方針

 

 

 

 

 

現在、父親は別居しているのでひとまず安心ですが、本人が自分の衝動をコントロールできないので、きちんとした治療に一日も早くつなげる必要があります。

 

 

 

 

 

父親が怪我をしたときが、よいチャンスだったのですが以前の入院をひどく恨んでいるので母親も病院の精神科に相談することができませんでした。

 

 

 

 

 

その点、父親を怪我させてからは暴力は減っているので入院はもう少し母子関係をよくしてからということにしたいと、カウンセラーの見解を示しました。

 

 

 

 

 

母親の変化

 

 

 

 

 

母親は「考えてみれば、高校を出てから9年、あの子もたいへんでした。兄弟もなく、父親は忙しい忙しいとろくに相手になってやれませんでした。わたしもこれからは、あの子の身になって話を聞いてやりたいと思います」とAさんについての理解を示し、少し気持ちが落ち着けるようになってきました。

 

 

 

 

 

5回目の面接後のある日、夕食の支度が少しだけ遅れたことを怒って、Aさんがいきなり母親をうしろから殴りました。そのとき、母親はキッとして「わたしがちゃんと食事の用意をしておいても、あなたは食べないことがあるじゃない。

 

 

 

 

 

それなのに、これくらいの遅れで何でわたしを殴るのよ」そういうと、息子はさすがに答えられず、黙っていました。

 

 

 

 

 

息子に殴られた日、母親は黙って医者に行き、夫のアパートに泊まって次の日に帰りました。母親は息子に殴られたことを夫に話しましたが、夫は「医者は何と言った?」と尋ねただけでした。

 

 

 

 

 

その日、Aさんは何も言いませんでしたが、母親はしだいに父親に対する息子の気持ちに気がつき始めました。

 

 

 

 

 

父親は息子の要求をある程度受け入れるなど形のうえでは援助をしてくれますが、なかなかAさんのほんとうの助けを求めている手をつかむことができていないということです。

 

 

 

 

 

父親の変化

 

 

 

 

 

7回目の面接には父母がそろって相談に来たので、「俺はいつかでかいことをやってやる。そうして俺が有名になれば、俺を馬鹿にした奴らも自分のことを見直すだろうし、俺の名誉も回復する」そう繰り返して言っているAさんの言葉のほんとうのメッセージをわかってあげてほしいとカウンセラーは父親に言いました。

 

 

 

 

 

8回目も、父親が母親と2人で訪れ、カウンセラーは入院先についても相談にのりました。9回目は、父親が1人で来ました。

 

 

 

 

 

「近頃は、たびたび息子と会うようにしています。わたしなりに、自分の会社をあの子に継がせたいと努力してきましたが、どうも一人相撲だったようです」と言いました。

 

 

 

 

 

そして、母親が体をこわして入院したとのことで、面接は中断しました。なお、あとで聞いた話だと、この面接のあと、間もなくAさんも納得して入院することができたとのことでした。

 

 

 

 

 

経過によっては、退院後、親あるいは本人との面接が再会される可能性があります。

 

 

 

 

 

危機介入について

 

 

 

 

 

子どもの暴力によって親が危険にさらされている場合には、親の別居、子どもの入院、警察の介入など緊急に対処する必要があります。

 

 

 

 

 

Aさんの場合は、衝動をコントロールすることができず、たとえば暴力など衝動を行動化してしまう状態が認められました。

 

 

 

 

 

しかし、父親はすでに別居し、母親への暴力はいくらか手心を加えている点が認められ、母親には入院をためらう様子がうかがわれたので、支援者は本人がそういう衝動を抑え、情緒を言葉にして伝えられるような母子関係の成長を意図しました。

 

 

 

 

 

そして、少しでも親子の信頼関係ができたところで本格的な入院治療をAさんが受け入れるようになることを目指しました。

 

 

 

 

 

しかし、状況によっては、各分野の専門家、主に精神科医療機関、その他、司法機関や保健所などの力を借りて早急な対応を図ることも忘れてはなりません。

 

 

 

 

 

この事例の場合は、母親が病気で入院したために母子関係の改善は中断して十分とはいえない状態ですが、「精神科への中途半端な入院という、以前の失敗を繰り返さないようにしたい」と父親は語っていますし、父親が父親らしく息子に接することをやり始めていましたから、今後の家族の関係の改善には幾分期待が持てそうです。

 

 

 

 

 

社会的ひきこもり事例について、親および本人に対する個別面談や小さな自助グループの運営などは、個人のクリニックでも行えますが、本人のところを訪問したり入院させたりすることになると、それなりのスタッフを持った機関に関わってもらうことが必要になるので、日頃からそのような機関との連携を保っていることが必要です。

 

 

 

 

 

そのため、公的機関の充実とともに、私的機関との相互交流やネットワークづくりが望まれるところです。



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団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援