不登校からひきこもりへ~26歳男性のケース~
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不登校からひきこもりへ~26歳男性のケース~

2019年07月16日(火)7:26 PM

「もう26歳ですよ。普通なら彼女ができて、人性を楽しんでいる年齢ですよ。わたしはすっかり妻と息子にだまされました。

 

 

 

 

 

”不登校”だというから信じてきたのに・・・・・。不登校の子のめんどうをよく見てくれるからと言うので、高い金を出して私立の学校に入学させたのに。

 

 

 

 

 

わずか数ヶ月ですよ。『ほとんどの生徒が、授業中にしゃべっていたり遊んでいて、授業になっていない』と言って中退してしまって。

 

 

 

 

 

何を考えているのか、忍耐、我慢が足りないんですよ。それから毎日ブラブラして、叱る気力もわたしにはなくなってしまいました。

 

 

 

 

 

妻とは口をきいても、わたしとはほとんど話さなくなりましてね。わたしが何か注意でもしようとすると、すぐ妻が止めるんですよ。

 

 

 

 

 

振り切って言おうものなら、今度は妻の機嫌まで悪くなる始末です。そうして手足を縛られているうちに、妻の好きなようにすればいいと思うようになりました。

 

 

 

 

 

今度は高卒認定試験を受けるから予備校に通いたいと言い出したんです。ここもかなりお金がかかりました。

 

 

 

 

 

でもね、高校の学費だと思って、授業料を一括で支払いました。それに久しぶりの意欲ですから、正直なところわたしにはうれしくて”安い買い物”でもあったんです。

 

 

 

 

 

ところがここも『年齢なんか関係がないのに、(クラスメイトが年齢を)聞いてくるから嫌だ』と言って、だんだん行かなくなりましてね。

 

 

 

 

 

ささいなことです。でも、高卒認定試験は合格しました。わたしは高卒認定試験が受かったので、きっと大学受験もパスすると思っていたんですが、結局はどこも受けずにそのまま家にいるんです。

 

 

 

 

 

本人は働くと口では言うのですが、2、3回アルバイトで働いただけです。でもすぐに、人間関係に疲れたと言ってはいろいろな理由をつけて親のすねをかじっているんですよ。

 

 

 

 

 

娘なら”家事手伝い”で世間体もたちますが、男ですからね。いい年した男が、病気でもないのに働きもせず、母親と昼食を食っているなんて、わたしにはとうてい考えられませんよ。

 

 

 

 

 

世渡りのできない男は、社会で通用しませんよ。子どもは親の背中を見て育つ、っていいますよね。20歳過ぎたら息子と酒でもいっしょに酌み交わして・・・・・と思っていたのに。

 

 

 

 

 

息子は単なる”怠け者”だったんですよ」家庭も顧みずに働きづめできた父親は、よく他の同世代の父親も口にする悔しさを吐き出しました。

 

 

 

 

 

そして、妻子からの孤立感を漂わせながら、”気乗りしない”面接に来ていました。

 

 

 

 

 

わたしの「だいぶお父さんが厳しいようで」との”親しみ”を伝えるつもりのジョークが引き金になって、父親はいっきに話しきりました。

 

 

 

 

 

「人間関係に疲れた、それはどういうことなんですかね」わたしは、父親がうんざりした表情で語ったその言葉を、そのまま問い返してみました。

 

 

 

 

 

「疲れるんでしょうね。だいたいが気が小さくて気後れ気味な子なんですよ。でもね、人間関係なんて、誰だってつらいものですよ。

 

 

 

 

 

わたしだってけっして人付き合いが上手なほうではありませんが、働きますよ。生活がありますからね。息子は甘えているんですよ」

 

 

 

 

 

父親のやりきれなさが胸にこたえ、わたしは思わず言いました。

 

 

 

 

 

「お父さん、悔しいんでしょうね。一人息子だしね。つい腹もたちますよね」

 

 

 

 

 

肩を落とした父親は、一息つくと、顧みるように息子の過去を思い返しました。

 

 

 

 

 

「小さいころから自信のない子でしたね。だからいつも人の目を気にして、合わせていたように思います。わたしとキャッチボールをしていても落ち着きがなく、恥ずかしいといってはすぐやめたがっていましたね。

 

 

 

 

 

そういえば、ケンカのできない子でした。腕力が弱いというよりも”争う”ことが嫌な様子でしたね。もちろんわたしも、ケンカは好きではありませんでしたが、ほしいものを手に入れるには兄弟ゲンカもしなければなりませんでした。

 

 

 

 

 

ケンカしながら生きて、たくましくなってきた気がします。子ども同士ってケンカしてもまた仲直りしていきますよね。

 

 

 

 

 

あれで、人が怖くなくなるんですよね。ケンカして人慣れしていったんですよ、きっと。それで、気の合いそうな友だちを自然に作っていったんでしょうね。

 

 

 

 

 

そう思うと、息子たちは兄弟は少ないし、遊ぶ時間は勉強にとられ、”個室遊び”では人付き合い(仲間づくり)なんて、わかりませんよね。

 

 

 

 

 

わたしたちのほうが、生活は貧しかったけど、(人間関係では)幸せだったかもしれませんね」

 

 

 

 

 

父親は、息子の「人間関係に疲れた」という悩みを素直に受けとめ始めていました。わたしは、息子の気持ちを理解しようとする父親の優しさにそっと触れてみました。

 

 

 

 

 

「お父さんも今までいろいろと努力されてきたんでしょう、人間関係に。なにごとも自分の思い通りにはいきませんものね」

 

 

 

 

 

すると父親は、照れくさそうに苦笑いをすると、こう言いました。「わたしは一本気な人間なんですよ。融通がきかないんです。

 

 

 

 

 

だから、失敗が恐くて小心なんです。サラリーマン社会では、一本気は損するんですよ。人間関係が下手だと変人にみられてしまうこともあるんです。

 

 

 

 

 

息子も中学生になってから、頑固者になり、理屈で自分をガードしていましたね。息子もわたしもこの時代に生まれるより、偏屈な職人さんでも大切にされていた時代に生まれていれば、食いぶちに恵まれていたかもしれませんね」

 

 

 

 

 

わたしも、父親のうなずきに誘われるように、「本当に、いまの子どもたちにも勉強以外の受け皿があれば、もっと働きやすくなるんでしょうね。好きで怠けている人はいませんからね」とつぶやいていました。

 

 

 

 

 

幼いころからの多様な人間関係をつむぎあうことなくして、人に対する信頼感は獲得できません。

 

 

 

 

 

不登校やニートの急増は、その本質的なテーマをわたしたちにいま鋭く突きつけています。

 

 

 

 

 

子育てにやり直しはききませんが、見直すチャンスはたくさんあります。

 

 

 

 

 

父親は、息子との新たな親子関係をつむぎ始めているようでした。

 

 

 

 



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