親の生き方と不登校
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親の生き方と不登校

2019年07月08日(月)3:03 PM

「わたし、再婚なんです。だから少し躊躇はしたんですが、男の子を一人連れた40歳過ぎの男と結婚してくれる女性なんていないと思ったんですよ。

 

 

 

 

 

ましてや妻は初婚だったんです。妻の感情的なところはわたしが補っていけばいいと思ったんです。もしかしたら、わたしは妻に遠慮しすぎていたのかもしれません。

 

 

 

 

 

Aさんは定年のことも意識しながら、中3のお嬢さんの不登校と浪人生活を重ねる息子(21歳)のことで相談におとずれていました。

 

 

 

 

 

Aさんはどこかにむなしさを漂わせながら、これまでを振り返っていました。

 

 

 

 

 

「子どもが、それも2人ともこのようになったのは、親の生き方に反省を求めているのでしょう。今までわたしは何のために生きてきたのでしょうか。

 

 

 

 

 

会社のためでしょうか。家族のためでしょうか。それとも、わたし自身の出世のためでしょうか。どうも、そうとは言い切れないのです。

 

 

 

 

 

考えてみれば、そのいずれかに心を奪われることもなく、とにかく一生懸命であったのが今までの人性であったと言ってもよいと思います。

 

 

 

 

 

ただ、”完全主義”を目指していただけで、”犠牲者”のことなんか自分が正しいだけに考えたこともありませんでした。

 

 

 

 

 

『そうだなあ』とゆっくりみていくゆとりさえ計画的、マニュアル的だったんですね。いまさらこの性格は、そう簡単には変えられないと思いますが、気がついた今からわずかでも努力してよい方向にもっていきたいと思います。

 

 

 

 

 

いや、変えなければならないとわたし自身は決めました」Aさんは唇をかみしめ、自問自答するようにうなずきました。

 

 

 

 

 

わたしは思わず、「また癖が・・・・」と言いそうになりましたが、きわどいところで言葉を飲み込むことができました。

 

 

 

 

 

Aさんは自分の言った言葉に気がついたらしく、あらためてわたしを見ました。

 

 

 

 

 

「これがいけないんですね。直さないと。わたしには余裕がないんです。あと3年、いや2年で定年です。定年になって変わったってそれはわたしの努力ではなく、たんに暇になったにすぎないんです。

 

 

 

 

 

暇だから余裕のある人間になったのでは情けないです。わたしも真剣ですから、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

わたしはAさんの気迫に息がつまりそうになりました。

 

 

 

 

 

「気持ちはわかりますが、そこまで言い切られたらわたしだってゆとりがなくなってしまいますよ。言葉にしないでくださいよ。当然、心の中ではそのつもりですよ」

 

 

 

 

 

そんな感情が言葉としてわきおこるようでした。Aさんは相手と向き合っているように見えて、自分の不安のみを打ち消すことにその場の関係を費やしているような、一方通行のコミュニケーションでした。

 

 

 

 

 

Aさんはわたしの怪訝な表情に気がついたのか、再びあらたまるとこう言いました。

 

 

 

 

 

「強迫的なんですね。自分で言うのもなんですが真面目なんですね。真面目すぎて人間関係もぎくしゃくしてしまうのです。

 

 

 

 

 

上司と部下ならこれでもいいかもしれませんが、家庭までこれじゃあ息苦しいですよね。妻のことは言えませんね。

 

 

 

 

 

わたしは妻の純真さに惹かれたんです。やはりわたしと同じで一生懸命なんです。それだけに妻は、間違ったことや約束がふいになったり妻なりの正しさが思い通りに進まないといらだつのです。

 

 

 

 

 

その性格を感じながらもわたしも同じ人間ですから、頭で受け入れ補おうと思っても、いつの間にか体は疲れていたんですね。

 

 

 

 

 

その真面目さがわがままに思えたころから、子どもたちの教育は母親まかせになっていったと思います。わたしは仕事を理由にして、妻や家族のごたごたから逃げていたんです。

 

 

 

 

 

そのわがままな両親の犠牲者が、子どもたちだと思います。だから、子どもたちも人間関係の間合いがとれないのです。

 

 

 

 

 

親といっしょでわがままな子たちです。甘えていいところと、我慢するところのポイントが理解できていないのです」

 

 

 

 

 

わたしはAさんの分析に感嘆しつつも、わかっているだけにつらいだろうなと思わないわけにはいきませんでした。

 

 

 

 

 

「娘も受験期に入ったためか、将来のことについていろいろと話してくれるようになりました。でも深まらないのです。

 

 

 

 

 

あれをしたい、これをしたい、なんでも”クリエイティブな仕事をしたいとわたしに言うんです。

 

 

 

 

 

わたしも娘に希望を与えたいと思って、今のあの娘が読んでも仕方のないような『○○になるための徹底ガイド』とかいう職業の本を、言われた分だけ本屋さんから買ってきます。

 

 

 

 

 

娘も以前に比べたら元気になったと思いますよ。でも、あきっぽいのです。それに自信がないのか、何度もしつこく聞いてくるのです。

 

 

 

 

 

『お父さん、この仕事、わたしに向いていると思う?』わたしは本人が好きなことが一番だと思うので、『おまえが好きな仕事なら、お父さんは応援するよ』と言ってあげるんです。

 

 

 

 

 

すると娘は、『違うの、お父さんはどう思っているのかを聞いているの』とそれこそ詰め寄って聞いてくるんです。

 

 

 

 

 

わたしは失望させてはいけないと思うので、『おまえにあっているよ、いいと思うよ』と声を大きくして言い切ります。

 

 

 

 

 

ここで落ちついてくれればいいのですが、次はこうです。『どうしてそんなに大きな声を出して、無理して言うの』

 

 

 

 

 

『そんなことはないよ。おまえは優しい子だから、その仕事は向いていると思うよ』『どこがどんなふうに優しいの』

 

 

 

 

 

『だから、お母さんの手伝いもしているじゃないか』『あれが優しいの、ねえ、ほかには?』そして、いつも最後はこうなんです。

 

 

 

 

 

『あの仕事は楽なの?わたしにできるの?』『楽じゃないよ、でも一生懸命やれば・・・・・』『やっぱり、わたしには向いていないのね』結局、深まらないんです。

 

 

 

 

 

こんなことの繰り返しなんです。自信がないんですね。とにかく、完全でないと動き出そうとしないんです。

 

 

 

 

 

息子もおかしなことを言う子で、大学受験のときにわたしに、『○○は○○大学に絶対合格する』という誓約書を書けと命令するんです。

 

 

 

 

 

お守りのつもりかなと思って書いたら今でも何かあるとそれを持ってきて『お父さんは合格すると約束したのに、僕は合格できなかった』と言いがかりをつけてくるんですよ。

 

 

 

 

 

この子も深まらないのです。わがままなんです」Aさんは困惑した表情で語りつくし、一息つくとわたしに遠慮するように言いました。

 

 

 

 

 

「わたしも妻も、人間関係が下手なんです。社会性がないんです。子どもなんです。自分の都合だけで一生懸命になっていたんですね。

 

 

 

 

 

わたしの気に入るように人が深まってくれないと、否定されているように思えてしまうんです。だから、いつも寂しいんです。

 

 

 

 

 

妻もわたしも子どもたちも、きっとこの寂しさに疲れていたんでしょうね。それが不安や自信のなさになって完璧を求めたのでしょうか。

 

 

 

 

 

わたし、素人なりにそう思えてきました」わたしはいつの間にか”間”を置いて話すAさんにうなずきつぶやきました。

 

 

 

 

 

「大丈夫ですよ。いまの(弱さを見せた)Aさんで奥さんに遠慮せずに話してみたら、きっと違った深まりが生まれると思いますよ」

 

 

 

 

 

そのとき見せたAさんの童顔が、わたしにはなんとも尊いものに思えました。

 

 

 



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