3年間ひきこもっていた20歳の男性
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3年間ひきこもっていた20歳の男性

2019年05月30日(木)1:32 PM

20歳を迎えたA君は、家にひきこもってから約3年になります。そう考えると17歳からすでにひきこもっていることになります。

 

 

 

 

 

彼は高校中退を余儀なくされ、今は外出することもほとんどなく、出るときは決まって人目が気にならない夜の時間帯だけです。

 

 

 

 

 

こうなると昼夜逆転、食事もお腹が減ったときに適当に食べるという不規則なものです。

 

 

 

 

 

部屋ではゲームとパソコン三昧で、部屋の電気はいつも真っ暗、ついているのは無機質なテレビ画面の明かりだけです。

 

 

 

 

 

A君の親からすれば、当初はいつかは自分で気づき、立ち直ってくれるだろうとここ3年間は手を加えずに見守ってきました。

 

 

 

 

 

しかし、3年経った現状からまったく回復する気配もなく、むしろ日を増しては悪くなる一方であり、この状況に焦った彼の両親からの相談がありました。

 

 

 

 

 

しかし、3年たって相談に来るというのでは遅すぎます。ひきこもった状態がわかっていて、なぜもっと危機感を持たず、様子を見る方向に至ったのでしょうか?

 

 

 

 

 

ひきこもりの子どもは何らかの手を打たない限り、今の状況を脱しようとしても、自分だけの力ではかなり難しいものです。

 

 

 

 

 

3年ともなるとかなり根は深く、また社会から離れている時間も長いので、いざ社会復帰しようとしてもそう簡単にはいきません。

 

 

 

 

 

このままにしておいては10年、20年とひきこもりが続いてもなんら不思議ではありません。

 

 

 

 

 

何度も言いますが、放っておいてよくなることはあまりありません。

 

 

 

 

 

放っておけば放っておくほど、状況が悪化すると思っていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

A君の生い立ちをよく聞き、そこでやり方を判断します。10人いれば家庭環境も10通りありますから、ひきこもりの子どもだからといって、同じ戦法を使ってもうまくいくものではありません。

 

 

 

 

 

一般的に、ひきこもりの子どもは立ち直るまでにひきこもった時間と同じ年月がかかるといわれます。

 

 

 

 

 

しかしわたしは、もっと時間がかかるケースをいくつも見てきました。立ち直りにかかる時間は個々によって異なります。

 

 

 

 

 

ただ、どのケースでも、子どもの心を開き、説得と納得のうえでひきこもりの状況から立ち直らせるというやり方は同じです。

 

 

 

 

 

A君の支援が始まりました。わたしは部屋の前まで案内され、ここであえてドアは開けず、ドア越しに会話をするようにしました。

 

 

 

 

 

わたしはA君へ「こんばんは」と挨拶をしました。反応は何もありませんでした。

 

 

 

 

 

期待はしていなかったので予想通りであり、続けて、「関東自立就労支援センターというところから来ました」とセンターの説明をしました。

 

 

 

 

 

ここでわたしは引き上げる旨を伝えて後にしました。ものの5分もいなかったと思います。

 

 

 

 

 

親からすればもっと長く、せっかく来たのだからと思うに違いありません。A君の両親もそうでした。

 

 

 

 

 

しかし、親のために来ているわけではないのです。A君本人のために来ているということを分かってほしいと思いました。

 

 

 

 

 

ひきこもっている子どもが最初から他人とすんなり会い、長時間会話ができるのならこのような状態にはなっていません。

 

 

 

 

 

人と会いたくないからひきこもっているのであって、助けを待っている子どももいますが、最初の挨拶で反応がないことでどういう状況かがはっきりしました。

 

 

 

 

 

本当はもっと長くいてやり取りをしたいのですが、それをしてしまうと逆に心を閉ざしてしまうことが圧倒的に多いのです。

 

 

 

 

 

わたしは子どもの心が読めます。だから、安心して子どもたちが心を開いてくれるのだと自負しています。

 

 

 

 

 

「他人」が来たということだけで、A君の心拍数は上がっており、最後に「一週間後にまた来る」と伝えてありますので、この言葉が強烈に残ることは確かです。

 

 

 

 

 

この一週間がポイントで、この間に考えさせ、A君がどんな行動をしてくるかで先が読めるのです。

 

 

 

 

 

わたしが帰った後、A君は案の定両親に食らいついてきました。「おまえらが頼んだのか!二度と来ないようにしろ!」予想通りでした。

 

 

 

 

 

ここからは親との打ち合わせどおりに進み、A君の要望をうまく回避させたのです。

 

 

 

 

 

そして一週間が経過しようとする頃、彼は妙にソワソワし始め、それが親にも分かる雰囲気でした。

 

 

 

 

 

一週間が経過し、また5分ほどの会話です。内容は、ひきこもりについて一切触れない、現状を脱しようとも語りかけない、今はなんてことない世間話です。

 

 

 

 

 

今回は、2日連続で来ることを伝え、2日間とも5分から10分の会話でした。

 

 

 

 

 

 

会話といっても、A君はほとんど黙ってわたしの話を聞いているだけでした。

 

 

 

 

 

親への「2度と連れて来るな!」という発言はありませんでした。次の週も同様に繰り返しました。

 

 

 

 

 

この支援活動には根気が必要です。A君から親へは何も言わなくなり、わたしは確信を抱いて、1ヶ月が経過する頃に「ドアを開けるよ」と許可を願いましたが返事はありませんでした。

 

 

 

 

 

「じゃあ、嫌ならドアを1回、いいなら2回叩いて」という方法をとり、次の瞬間「コンコン」と2回鳴らしてくれました。

 

 

 

 

 

わたしは思わず「ありがとう」と言いました。しかし、このときはあえて部屋の中には入りませんでした。

 

 

 

 

 

入ってもいいことがわかっただけで十分だったからです。

 

 

 

 

 

しかし問題はここからで、どうやって彼を支援し、この状況から脱してあげるかです。

 

 

 

 

 

次のとき、わたしは親が不在のときに再び訪問をしました。

 

 

 

 

 

これは両親には作戦を打ち明け、了承済みの行動です。

 

 

 

 

 

案の定、A君の態度はいつもと違い、部屋に入れてくれた彼はわたしとの会話を楽しみにしていたかのようにいろいろなことを話し始めました。

 

 

 

 

 

ここで、「彼は何らかの形で親へ不満を抱いている。これは親への仕返しではないか」と感じたのです。

 

 

 

 

 

今日はチャンスとみて、少々突っ込んだ話を切り出しました。

 

 

 

 

 

「ところでA君、ご両親はすごく心配しているようだけど、何かA君に引っかかることでもあるの?」と、すると彼は「何を言っているんですか?あの親が僕のことなんて心配なんかしているわけがないでしょう」

 

 

 

 

 

わたしは「どうして?」と聞き返すと、「僕なんてどうせ見捨ててるんですよ、親のことを考えるとムカついてしょうがない。小さい頃に僕を叩いてばかり、何かすると暴力を振るい、こんな性格になったのはあいつらのせいなんです」

 

 

 

 

 

とさらに親への不満を延々と吐き続けました。わたしは聞き逃さないように一言一言を真剣に聞き入れ、極力、今の状況は彼の立場だけを考えて味方になってあげ、共鳴しました。

 

 

 

 

 

こんなに自分の思いをすべて言ったのは生まれて初めてのことで、A君はスッキリした表情を見せながら「ありがとうございます。気持ちが楽になりました」と穏やかな表情で、まるで今まで何をしていたのだろうというぐらい見違えていました。

 

 

 

 

 

しかし、3年のブランクはあまりにも残酷です。

 

 

 

 

 

筋力の低下、思考力の低下、生活適応能力の欠如が著しく見られ、親への感情を吐き出したからといってもすぐに社会復帰できるわけではなく、もう人が怖くて怖くてたまらず、日中に外出困難な状況にまで追い込まれていたのです。

 

 

 

 

 

こうなると対人恐怖症にまできてしまっています。しばらく、唯一の第三者であるわたしとの接点を中心に他人に慣れさせる方向で、週に一度の割合で家庭訪問を繰り返しました。

 

 

 

 

 

次は、関東自立就労支援センターのスタッフを同行させ、行く度に代わる代わるスタッフに会わせていき、人に対する抵抗力をつけさせました。

 

 

 

 

 

そして、深夜からの外出、ドライブ、レストランでの食事を繰り返していきました。

 

 

 

 

 

ここまでくると完全なひきこもりからは脱し、後は生活訓練と将来への自立を目指して、教育をできるまでになりました。

 

 

 

 

 

一番の気がかりは親へのトラウマと誤解です。両親とすれば、子どもが憎くて暴力を振るったのではないことは分かります。

 

 

 

 

 

しかし、子どもはそうは捉えていないことが問題です。

 

 

 

 

 

A君の場合、親への仕返しとして困らせてやろうと考えた結論が、ひきこもりという行為でした。

 

 

 

 

 

その仕返しが、いつの間にか完全なるひきこもりになってしまって、わたしが関わらなければ、この子どもの人生はずっとこのままであったでしょう。

 

 

 

 

 

そして子どもの殺し文句は、「俺がこうなったのはおまえらのせいだ」です。

 

 

 

 

 

確かにこの言葉はある意味では的を射ています。昔から親への仕返しというのはありましたが、近年はこのような形もあるのだと痛感させられました。

 

 

 

 

 

A君は現在、生活訓練を受けており、本人が成長していくにつれて、親のやってきたことに対する誤解も解けてきています。

 



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