アスペルガー症候群の不登校・ひきこもりの事例
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アスペルガー症候群の不登校・ひきこもりの事例

2019年05月25日(土)10:51 PM

ここでは不登校やひきこもりの人の中によく見られるアスペルガー症候群の事例を紹介します。

 

 

 

 

 

A君は2人兄弟の次男として生まれました。両親は特に発達の遅れを感じることはありませんでした。

 

 

 

 

 

しかし、A君が親に甘えてきたことはあまり記憶にありません。3歳頃から踏み切りに興味を示すようになり、遮断機の上がり下がりを真似しながらいつもでも見ている事がしばしばありました。

 

 

 

 

 

その一方、気に入らないことがあるとすぐに癇癪を起こしました。

 

 

 

 

 

小学校に入学してからは、たいていのオモチャはすぐに飽きてしまうのに、模型作りだけには興味を示しました。

 

 

 

 

 

長時間それに集中するのですが、出来上がってもそれを人に見せたり、喜んだりすることはありませんでした。

 

 

 

 

 

友達は少なく、いつも決まった子と遊んでいました。風呂に入らないと言い出すと、絶対に入ろうとしないなど頑固なところがあり、また偏食でした。

 

 

 

 

 

成績はよくなかったものの、知能指数は悪くないと言われました。中学では、授業に集中していないといってよく注意されました。

 

 

 

 

 

高校へは推薦で入学しました。高1の冬より、突然、家で暴れるようになりました。

 

 

 

 

 

両親が理由を尋ねても、「親にひどいことをされた」と言うのみで、何がひどかったのか具体的に答えることはありませんでした。

 

 

 

 

 

両親は家庭内暴力だと思い、とりあえずA君のしたいようにさせました。ところが、暴力はエスカレートしていくばかりで、思い余った両親は高校の養護教諭に相談に行きました。

 

 

 

 

 

そこでは境界性人格障害についての説明がなされ、自立を促すようアドバイスを受けました。

 

 

 

 

 

その後、A君はいじめの対象になって登校しなくなり、結局中退しました。

 

 

 

 

 

すぐに仕事に就いたものの、しばらくすると行かなくなりました。自宅での乱暴は相変わらずであり、言葉では要求がないため両親は何が不満なのか見当もつきませんでした。

 

 

 

 

 

両親は、自分たちが転居する機会に、自立させようとA君を自宅に残すことにしました。

 

 

 

 

 

その後、A君は家の中にひきこもって生活し、必要なとき以外は外出しないようになりました。

 

 

 

 

 

A君から両親に連絡をとってくることはありませんでした。両親はこのままでいいものかと心配になり、精神保健福祉センターに相談しました。

 

 

 

 

 

そこでは、A君を医療機関に受診させることを勧められ、A君を放っておくことは何の解決にもならないことを説明されました。

 

 

 

 

 

一週間後、医療機関を受診した両親と医師が今後のことについて話し合いました。

 

 

 

 

 

医師からは高機能広汎性発達障害、中でもアスペルガー症候群ではないかと言われました。

 

 

 

 

 

広汎性発達障害とは、人生の早い時期に現れる対人関係の障害を中核とする発達障害であり、(1)相互的な社会関係の質的な障害、(2)コミュニケーションにおける質的な障害、(3)狭小で反復性の常同的な行動・関心・活動、といった3つの特徴を有しています。

 

 

 

 

 

このうち精神的な遅滞のないものが高機能広汎性発達障害であり、その中で始語の遅れがなく幼児期の言語の遅れが軽微なものをアスペルガー症候群と呼びます。

 

 

 

 

 

この診断が妥当であるならば、A君は会話そのものに支障をきたしていなくても、他者とのコミュニケーションをとることには元来障害があったと考えられます。

 

 

 

 

 

しかし、両親は最近までそういったことを疑うこともなく、たとえ言動がおかしくても「変わった子」くらいの認識しかありませんでした。

 

 

 

 

 

障害という視点がなかった以上、これは当然かもしれません。それゆえ、両親はA君に対して幼少期から不適切な対応をし、A君の発する言動を十分に受容してこなかったことは想像に難くありません。

 

 

 

 

医師がアスパルガー症候群に関して、「青年期以前から一貫した治療教育を実施してきた場合には、総じて社会適応は特に悪くない。

 

 

 

 

 

思春期に入った段階で、他者からみた自分という視点ができるようになり、混乱することは少なくないが、支持的な心理的援助や同質のグループなどにとらえられている場合、大きな社会適応上の問題にはなりにくい」といっているような意味で、A君には治療教育的な家族、グループが形成されていなかったと考えられます。

 

 

 

 

 

たとえ家族同士であってもコミュニケーションがかみ合うことはなく、A君にはコミュニケートできる家族の成立がそもそもなかったといえます。

 

 

 

 

 

もっと早期にA君の障害が指摘されていたら、両親は障害を前提にしてA君と適切に関わることができ、そこから発せられるコミュニケーションにより家族のまとまりが構成されていったでしょう。

 

 

 

 

 

しかし、すべての責任を両親のみに帰すことはできません。というのも、両親はこれまで幼稚園や学校、医療機関、保健所等からアスペルガー症候群について情報を得たことはなく、両親と社会との間でこの障害に関するコミュニケーションが成立していなかったことが一番の問題だと考えられるからです。

 

 

 

 

 

さらに、例えばある人が小児神経科という専門家にかかっても「しつけの問題」とされてしまったアスペルガー症候群の例もあるように、種々の特徴的な行動で障害がアピールされているにもかかわらず、それらが家族の問題に置き換えられてしまうことも多々あります。

 

 

 

 

 

このA君も同様でした。家庭内で暴力が起これば、「家庭内暴力であり、親の愛情が足りない」という短絡的な発想は未だ人口に膾炙しており、両親もそう考えました。

 

 

 

 

 

アスペルガー症候群の人が被害的になり突然攻撃的になることはままあることですが、両親が学校に相談に行っても、こういった特徴は取り上げられませんでした。

 

 

 

 

 

ましてや、境界性人格障害と言われてしまいます。その結果、両親は自分たちの育て方が悪かったとますます自責感を強めていきました。

 

 

 

 

 

このように、アスペルガー症候群に関する社会的な無関心と無理解のため、両親が社会的にコミュニケートしていく道は断たれてしまい、両親もA君も孤立していくことになりました。

 

 

 

 

 

A君はひきこもりの生活を送り、両親はそれに手出しすることができなくなってしまったのです。

 

 

 

 

 

両親が期待したA君にとっての自立とは何でしょうか。まずは、アスペルガー症候群という障害を確認し適切な対応を周囲がとっていくことで、家族やそれ以外の他者とのコミュニケーションが築かれ、そのコミュニケーションによってA君にとっての家族や社会が構成されていくことでしょう。

 

 

 

 

 

しかし、A君の場合、障害に関するコミュニケーションはどこにも成立していなかったため、その存在自体が疑われることもありませんでした。

 

 

 

 

 

精神保健福祉相談において、A君のような高機能広汎性発達障害を疑わせるケースに遭遇することは稀ではありません。

 

 

 

 

 

医療機関を受診し診断されているものはほとんどなく、人格障害や家庭内暴力、行為障害といった最近巷に氾濫してきた言葉でケースを理解しているものが多いのです。

 

 

 

 

 

まずは、障害を前提として早期から子供に関わることが出来るよう、地域精神保健活動における情報や知識の普及が必要です。

 

 

 

 

 

それによって、障害に関する家族のコミュニケーションが活発化し、外部との交流が形成され、子供のコミュニケーションも刺激を受けていくことが期待できます。

 

 

 



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