親の溺愛とひきこもり
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親の溺愛とひきこもり

2019年05月11日(土)1:27 PM

溺愛が子供の自立心の芽を摘む

 

 

 

 

 

「失敗は成功のもと」とよくいいますが、子供の成長の過程でも失敗経験は重要な意味を持ってきます。

 

 

 

 

 

大小の差はあれ、挫折や苦労を幾度となく繰り返して正誤の判断をつける能力や根気強さ、人生に対する自分なりの価値観を養っていくことができるからです。

 

 

 

 

 

ところが近年、子供から失敗体験を奪ってしまう親が増えてきているようです。

 

 

 

 

 

子供を過保護に育てすぎてしまうのです。たとえば、怪我をしたら危険だからといって外で自由に遊ばせず、一つひとつ子供の行動を監視する、家の手伝いをさせることよりも、勉強させて成績を上げることばかりを重視する、「ゲームがほしい」とねだられれば、すぐに買い与える・・・・・。

 

 

 

 

 

このように、子供の要求を可能な限り受け入れ、子供が挫折感を味わわなくてもすむように先回りして手を差し伸べることは、一見優しさや愛情のように思えますが、実は子供が成長するための芽を引っこ抜いてしまっているようなものなのです。

 

 

 

 

 

ここで紹介するA子さん(23歳)の両親もその顕著な例です。関東自立就労支援センターのホームページを見てA子さんの父親が訪ねてきたとき、目の下に隈をつくり、がっくりと肩を落としているのがたいへん印象的でした。

 

 

 

 

 

話を聞くと、一人娘のA子さんが入社したばかりの会社をたった3ヶ月で辞め、家の中に引きこもってしまい、外に一歩も出なくなったといいます。

 

 

 

 

 

それだけならまだしも、機嫌が悪くなると手当たり次第に物を投げつけてきて手に負えないと父親はこぼしました。

 

 

 

 

 

さらにA子さんの生い立ちや育った環境を聞くと案の定、一人っ子だったA子さんを、それこそ目に入れても痛くないほどにかわいがり、厳しく叱ったことは数えるほどしかなかったといいます。

 

 

 

 

 

しかも、A子さんが引きこもりを始めると両親はどう対応すればよいのかわからなくなり、まるで腫れ物に触るように彼女と接していたのです。

 

 

 

 

 

家庭内暴力や非行、不登校などは多くの場合、言葉にできない鬱積した感情を両親の注意を引く行動で表現しているものです。

 

 

 

 

 

親に自分の悪いところもすべて受けとめてほしいというSOSの発信なのです。

 

 

 

 

 

それなのに、子供がさらに悪い方向へ進むことを恐れ、真剣に向かい合おうともしないで子供の言いなりになっていると、「自分は親に見捨てられている」と、子供はいっそう自暴自棄になってしまいます。

 

 

 

 

 

わたしは父親に、「素直だった頃のA子さんではなく、今のありのままのA子さんを受けとめること。

 

 

 

 

 

A子さんのわがままは、突き放すくらいの勇気を持つこと」とアドバイスしました。

 

 

 

 

 

そして「早朝散歩」を家族3人で取り組むことを勧めました。

 

 

 

 

 

家の中に閉じこもってしまう状況を改善するためには、やはり一日のうちに一歩でも外に出ることが欠かせません。

 

 

 

 

 

引きこもる人の大半は、他人とのかかわりを極度に嫌い、同時に恐れていますが、幸い早朝であれば外を歩いている人はほとんどいません。

 

 

 

 

 

しかも、朝の外気は自然のエネルギーをもっとも感じやすく、滞りがちな心身の活動を活性化させてくれます。

 

 

 

 

 

また、何よりも大切なことは、朝早く起き、散歩に出かけるという「難題」に家族みんなで取り組むこと、それを実行できたとき、家族の絆は深まり、子供の精神状態は安定します。

 

 

 

 

 

父親がA子さんを早朝散歩に連れ出すまで、半年もかかりました。その間、両親だけで早朝散歩を始め、またA子さんを真剣な気持ちで誘うように心がけてもらいました。

 

 

 

 

 

そんな両親の姿を見て、「自分のためにそこまでしてくれている」とA子さんの頑なだった心は和らいでいったのでしょう。

 

 

 

 

 

ある日、両親が散歩に出かけようと靴を履いていると「わたしも行く」と起き出してきたそうです。

 

 

 

 

 

3ヶ月が過ぎたころ、A子さんはようやく父親といっしょに関東自立就労支援センターの相談室を訪ねてきてくれました。

 

 

 

 

 

話を聞くと、会社を辞めた直接の原因は、上司に「電話の受け答えのしかたが悪い」と叱られたことだったといいます。

 

 

 

 

 

入社して間もないときは、誰でも上司や先輩の指導を受けて徐々に仕事を覚えていくものです。

 

 

 

 

 

慣れないことをするのですから、新入社員がミスをすることなど上司は当たり前のことと考えていたはずです。

 

 

 

 

 

それなのにA子さんは、叱られると自分の能力のなさを批判されているように感じ、上司の目が自分に向くことにおびえるようになってしまいました。

 

 

 

 

 

そして、入社3ヵ月後が過ぎた頃には、常に誰かに監視されているような強迫観念が激しくなり、会社へ行こうとすると足がすくむようになってしまったのです。

 

 

 

 

 

A子さんのように他人の目が異常なまでに気になり、精神の平静を失ってしまう症状を「対人恐怖症」といいます。

 

 

 

 

 

いかにも内気な人がかかりやすいような症状にも思えますが、実際には、A子さんのように子供の頃の失敗体験が乏しく、他人からの評価を気にしすぎてしまう人に多発します。

 

 

 

 

 

この「対人恐怖症」がひどくなると、外出はおろか電話に出ることも、家族と顔を合わせることもわずらわしくなり、自室に引きこもるようになってしまうのです。

 

 

 

 

 

「上司から注意されるたびに、『自分は会社勤めには向いていないんだ』という自己嫌悪が強くなり、いたたまれなくなって会社を辞めてしまいました。

 

 

 

 

 

でも、家にいると将来に対する不安が日に日に強くなって、こんなことを続けていたら本当に駄目な人間になってしまうという焦りが込み上げてくるんです。

 

 

 

 

 

それなのに外に出ると、今度は知らない人からも『おまえは駄目な人間だ』って言われている気がして、怖くて怖くて・・・・」

 

 

 

 

 

関東自立就労支援センターの相談室での面接を始めて1年が過ぎたころ、A子さんは固く閉ざしていた心を開いてくれました。

 

 

 

 

 

上司に注意されたとき、「すみません」と頭を下げ、自分の否を認める勇気さえあれば、A子さんは「対人恐怖症」にまで陥ることはなかったかもしれません。

 

 

 

 

 

端から見ているとなんでもないような失敗を注意されただけで、いじめられたとか、不当に扱われたなどと短絡的にとらえてしまう若者が近年増えてきているように感じます。

 

 

 

 

 

だから、ささいなトラブルさえ挫折感を心に植えつける種になり、社会生活を営めなくなってしまうのです。

 

 

 

 

 

今ではA子さんはすっかり「対人恐怖症」を克服し、「大好きな子供を相手に働きたい」と、保母の資格を取得するための勉強を開始しています。

 

 

 



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