ひきこもり・不登校・ニートに関連する障害~発達障害と対人恐怖~
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ひきこもり・不登校・ニートに関連する障害~発達障害と対人恐怖~

2019年05月11日(土)12:51 PM

ひきこもりやニート・不登校の人たちの中には発達障害や対人恐怖の人が多く存在します。

 

 

 

 

 

対人恐怖のこまかな定義はここでは省略しますが、一般に対人恐怖は単純に人が怖いということではありません。

 

 

 

 

 

多くの場合、同居する家族など身近な人への恐怖はありません。また、同時に自分に無関係な人への恐怖を持つことも多くはありません。

 

 

 

 

 

隣近所、あるいは学校や会社などで、身近ではなく、しかし関係がないわけでもない、そこそこ関係のある人たちへの恐れを持つ状態といえるでしょう。

 

 

 

 

 

ここではこのようなものとして対人恐怖を捉えて、発達障害、とくに広汎性発達障害あるいはアスペルガー症候群を抱える人たちの他者に対する不安、あるいは恐怖について考えてみたいと思います。

 

 

 

 

事例

 

 

 

 

 

A君(22歳)は共働きの両親、4歳上の姉の4人家族の中、農村地域で育ちました。

 

 

 

 

 

身体運動発達にとくに問題はなく、乳幼児健診で発達上の問題を指摘されることもありませんでした。

 

 

 

 

 

乳児期には夜泣きが強く、抱いていないと泣き出すために、両親が一晩中抱いたり自家用車に乗せて走ったりすることもありましたが、日中はテレビを一人で見て過ごしました。

 

 

 

 

 

人見知りはなく、後追いもありませんでした。言語発達は早く、2歳過ぎには大人とふつうに会話ができたといいます。

 

 

 

 

 

周囲に同世代の子どもが少ないことと母親の意向から、2歳過ぎに保育所に入園しましたが、他の子どもとはあまり遊ばず、一人で数字やロゴマーク、国旗などのお絵かきをして過ごすことが多かったようです。

 

 

 

 

 

子どもの集団には馴染みませんでしたが、保育士から見れば手のかからないおとなしい子どもで、3歳時には漢字に関心を持ち始め、保育士や他の子どもの名前を漢字で書いていました。

 

 

 

 

 

4、5歳時には一人で絵本のみならず童話を読むこともでき、読書をして過ごすか、自分の世界に入って独り言を言いながら過ごすことが多かったのですが、運動会や学芸会には参加できていました。

 

 

 

 

 

少し変わった子どもだと両親も感じていましたが、とくに相談機関にかかることもなく育ちました。

 

 

 

 

 

小学校入学後はアニメのキャラクターを描くのが上手で周囲から一目置かれました。

 

 

 

 

 

しかし、一番にこだわり、自分の所属するチームが負けると低学年時代は泣き喚き、高学年になっても怒ってその場を離れて走り回り、さらに中学校入学後もそうした行動が見られたため、中学3年時に遠方の精神科を受診し、薬物療法を受けました(詳細不明)。

 

 

 

 

 

一方、成績は非常によく、地域の最難関高校に入学しましたが、周囲とは馴染まず、独り言が目立ち、「周りが自分を疎外している」「変な目で見ている」などと訴え始めました。

 

 

 

 

 

さらに政治・社会問題をわが事として受けとめ、一度考え始めると止められず眠れないことが続くため、高校2年生の時に別の精神科を受診し、精神神経症の診断で、支持的精神療法と薬物療法を受け始めました。

 

 

 

 

 

高校はほぼ皆勤で通い、高校卒業後は難関の大学に進学し、下宿生活を送り始めました。

 

 

 

 

 

大学入学後も月に1度、精神科への通院は続いていました。

 

 

 

 

 

しかし、授業には出席するものの成績はふるわず、アニメ同好会に所属してアニメを描く日々を送りました。

 

 

 

 

 

4年で卒業することになりましたが、面接を受けられないと言って就職活動ができず、自宅で生活することになりました。

 

 

 

 

 

大学卒業後も精神科への通院は続いていましたが、就職できないA君に状況から、アスペルガー症候群を疑った母親の希望もあってわたしの友人のクリニックへ紹介され、生育歴が明らかになりました。

 

 

 

 

 

ロールシャッハテストでは反応数が40あり、「強い情緒的刺激に曝された場合、社会的規範を無視するような反応に結びつきやすい。

 

 

 

 

 

その反応には、表面的には他者配慮的態度が見られるが、結局は自分の中にとどめられずに表出してしまう。

 

 

 

 

 

他者との情緒的交流を希求しているが、どこか表面的で、ともすれば予測できないような発言をしてしまうために、周囲から遠巻きにされていることに気づいている」という結果でした。

 

 

 

 

 

すでに本人もアスペルガー症候群に関する書籍を読み、自分自身と重ねて理解していたため、アスペルガー症候群であると医師より伝えられました。

 

 

 

 

 

その後、A君はいくつかの病院を掛け持ちして通院し、発達障害者の自立支援事業、就労支援センター、自助グループに参加し、一人暮らしを始めました。

 

 

 

 

 

職業能力評価を受けた後、就労支援事業を通して、その能力の高さを買われて、公的団体の事務作業に登録されることになりました。

 

 

 

 

 

週4日の比較的簡単な事務作業であり、ジョブコーチはつきませんでした。

 

 

 

 

 

担当の上司はなにかにつけて面倒を見てくれ、職場で孤立しないように周りの職員にも配慮してくれましたが、A君は「気をつかってくれているのはわかるのですが、どのように応えてよいのか、わからなくなって混乱してしまう」と言いました。

 

 

 

 

 

周りに反応できなくなると、トイレにこもり「何か描いていると落ち着いてくるので」とアニメのキャラクターを描いていました。

 

 

 

 

 

上司は「君ならできる」と何度も励ましてくれましたが、次第にトイレにこもる時間が長くなり、「仕事ができていないのはわかっています。でも、周りの人が自分のことをどう思っているのかが気になって仕方がない。周りから注意されてもどう応えていいのかわからない」と言い、次第に出勤できなくなり、半年あまりで職場を去ることになりました。

 

 

 

 

 

それから半年あまりのひきこもり生活ではアニメを描き、病院では自分の過去の体験、成育史を語ることが続きました。

 

 

 

 

 

そして、再び自助グループに参加し始め、「自分の考えていることをしゃべってもちゃんと聞いてもらえ、相手が何を感じたり、考えたりしているのかを教えてもらえるので、人の中にいる怖さが少しましになった」と述べるようになりました。

 

 

 

 

 

その後、A君は再び就労支援事業を通して検品作業に従事するようになりましたが、他の作業員が自分をどのように見ているのか、作業効率の悪い自分をバカにしたり迷惑がったりしていないか、嫌われていないかなどを非常に気にしています。

 

 

 

 

 

しかし、ジョブコーチがついて、その都度A君の心配、不安、恐怖をその原因となる職場での契機から説明し、対応法をA君と検討することでいくぶんか和らいでいるようです。

 

 

 

 

 

A君の対人関係の持ち方は、幼く自己中心的な世界にいる時期から、自己中心的な振る舞いを残しながらも他者の存在に気がつき集団行動を意識する時期、他者のまなざしや感情に気づき自分がどのように見られているのかが気になる時期へと成長にともなって変化しています。

 

 

 

 

 

おそらくこれから先には、他者あるいは集団の規範に従って行動することが安全であると感じられる時期を経て、再び自分の関心事と集団の規範の折り合いをつけていく時期へと変化していくのでしょう。

 

 

 

 

 

その折々に、A君は他者とのかかわりに困難を抱え、それが対人不安につながっているようでした。

 

 

 

 

 

A君にとっての「他者の出現」をやや強引ではありますが、単純化して記述します。

 

 

 

 

 

まず乳児期は、抱いていないと泣き出す一方、日中には一人でテレビを見て過ごし、人よりも物への関心が強く、自己中心的な世界にいる時期であり、他者は自分に快あるいは不快をもたらす存在であったといえます。

 

 

 

 

 

すなわち、他者の存在には関心が乏しく、他者は物的存在に近い時期といえるでしょう。

 

 

 

 

 

次に幼稚園時代には一人遊びが中心でありましたが、保育士の存在下で運動会や学芸会に参加して、集団の中で役割を果たすことはできました。

 

 

 

 

 

しかし、小学校時代には「一番でないといけない」というこだわりを持ち、それが妨げられたり、成就しなかったりすると感情が抑えられませんでした。

 

 

 

 

 

身近な両親や保育士は別として、他者一般を集団の成員の中に見い出しても、それは相互的な活動をともにする友人・仲間としてではなく、自分の関心事を達成するための人員という意味あいが強かったのでしょう。

 

 

 

 

 

高校時代には、他者に映る自分の姿、それを見る周囲の人間の眼差しに気づき始めますが、他者の真意を測りかねています。

 

 

 

 

 

すなわち、自分と同じように他者が世界に存在し、認知や感情を持ち、他者の感情や認知が自分にも向けられていることに気づきますが、それがどのようなものかはわからない状態でした。

 

 

 

 

 

広汎性発達障害を持つ人の多くは過去の陰性体験を想起して、他者の真意を陰性なものとして捉えてしまう傾向があります。

 

 

 

 

 

自らの特性から他者との接近を持ちにくいものですが、「周りの人が自分を疎外している」と逆転して捉えたり、いぶかしげに他者に向ける自分の眼差しから他者が自分を「変な目で見ている」などと被害的に捉えたりしやすいようです。

 

 

 

 

 

つまり、そこには投影同一視といわれる原始的防衛機制が働いています。

 

 

 

 

 

これは定型発達者においても、幼児期や学童期にはよく見られ、青年期にも状況に応じて現れ、これを通して他者の心性を理解すること、さらに自他の認知や感情の分化が成長するといえます。

 

 

 

 

 

つまり、広汎性発達障害を持つ人たちの成長過程における他者の現れ方は、定型発達者とほぼ同様なのですが、定型発達者に期待される時期よりも、かなり遅れています。

 

 

 

 

 

加えて、彼らの特性として、他者の感情や認知を直観的に察知することが困難なために、彼らのそれまでの体験、あるいはたとえば小説など文章化されたものなどを参照して推測するか、彼らの置かれた状況にあるいくつかの現象から論理的に導いて理解しようとします。

 

 

 

 

 

つまり、「目は口ほどに物を言う」ことがわかりにくい彼らは、その状況と似通った過去の体験や読んだことのある文章の中の同様の事態を参照して理解しようとします。

 

 

 

 

このために、どこかとってつけたようなぎこちない印象を周囲の定型発達者は持つことになります(注:表情を読みとることがそこそこできる人にとっても、不安の高い状況では周囲の人たちの顔色を繰り返し参照しようとして、不審に思われることがあります)。

 

 

 

 

しかも、即時の対応を要請される場合や感情が不安定な場合には、この参照機能はうまく働かず「わからない」と言うことが増え、態勢の立て直しのためにいったんは自閉的な調和的世界に退行することになります。

 

 

 

 

 

A君がトイレの中でアニメを描き続けたのはそうした事態であると考えられます。

 

 



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