虐待と親子関係
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虐待と親子関係

2019年05月07日(火)3:09 PM

「人から愛されず、人に信じてもらえないことが、どんなに寂しく孤独なことか・・・・。わたしはそのことを嫌というほど母親から思い知らされました。

 

 

 

 

 

親から信頼されないで育った子が、どうして他人を信用できますか」小学校の教師をしているA子さん(24歳)は、校内職員研修会でわたしの話を聞いて、相談に訪れました。

 

 

 

 

 

「わたしは”お母さん”とか”家族”という言葉が苦手なんです。楽しそうに買い物をしている親子を見ると、顔がこわばってしまうんです」

 

 

 

 

 

「人を全面的に信じることが怖いんです。裏切られ、傷つけられないかと思うと、つい心をガードしてしまうんです」

 

 

 

 

 

そんなふうにA子さんは「こんなわたしが教師をしているなんて変ですか?」とわたしに問いかけました。

 

 

 

 

 

「子どもをかわいがりたくて先生になったのに、すぐ感情的になって手をあげてしまうんです。

 

 

 

 

 

子どもや他の先生は陰でわたしの悪口を言っていると思います」彼女は続けました。

 

 

 

 

 

「でも、こんなわたしになったのは、わたしだけの責任じゃないと思うんです」

 

 

 

 

 

「こんなことは誰にも話したことがありません。だって馬鹿にされるだけでしょ」と言って、こう打ち明けました。

 

 

 

 

 

「母親って、我が子を過保護にしやすいって言いますよね。でも、わたしはその母親から虐待されて育ってきたんです」

 

 

 

 

 

わたしはA子さんの話に体が吸い寄せられるように感じました。体を半身にし、右手でほほを包んだまま目線を外すと、彼女は緊張感が少し緩んだのか、明るい声になりました。

 

 

 

 

 

”理想派”の母親と”現実派”の父親は、A子さんが物心ついたころから、けんかばかりしていたといいます。

 

 

 

 

 

「父は母に『鈍感でケチな男』と罵られても相手にせず、あきらめ顔で黙ってしまうんです。

 

 

 

 

 

言い返せば、母は鬱憤を吐き出せたのかもしれませんが、父の態度はかえって母を刺激し、子育てのために教師を辞めさせられた不満も重なって、わたしへの虐待が起きたんです」

 

 

 

 

 

母親は、A子さんの頭や顔を殴ったり、突然口をきかなくなったりしました。

 

 

 

 

 

A子さんが「何も悪いことをしていないのに」と戸惑っていると、母親はいきなり泣き出してA子さんを抱きしめたこともあります。

 

 

 

 

 

A子さんは母親の気まぐれに「いつもビクビクしていた」といいます。

 

 

 

 

 

「いい子」になろうとしたA子さんは体にあざができても父親には助けを求めませんでした。

 

 

 

 

 

友だちが母親にわがままを言っている姿を見て「自分は言い方が下手なのか」と、言葉遣いの練習もしたといいます。

 

 

 

 

 

「甘えたくても、どう甘えたらいいのかわからないんです。期待を裏切られるのも怖いのです。

 

 

 

 

 

今でも目の前にいる母親を見ながら、本当の母親を探しているんですね」と話すA子さんです。

 

 

 

 

 

それでいて「母の日」になるとプレゼントをしてしまう自分自身に、割り切れない思いを抱いています。

 

 

 

 

 

大卒・就職拒否

 

 

 

 

 

「僕は人嫌いではありませんが、人と付き合っていくことに自信が持てないんです。

 

 

 

 

 

誤解されないように、傷つけないようにと考え込んでしまい、その方法が分からなくなって体がすくんでしまうんです。

 

 

 

 

 

僕って変ですか?こんな人あまりいないでしょう。だから焦り、苛立ってしまうんです。

 

 

 

 

 

そうすると頭の中が真っ白になるほどパニックになってしまうんです。

 

 

 

 

 

友だちの輪の中にいたいと思っても、人づき合いの間合いがつかめず、必要以上に明るくするか、逃げるか、極端になってしまうんです。

 

 

 

 

 

そんな自分に疲れてしまい、勉強という”安全地帯”に逃げ込みました。自己防衛だったんです。

 

 

 

 

 

勉強は人間関係が不要で、一人でいても変だと思われないですよね。でも、大学を卒業したら、勉強(仕事)よりもやっぱり人づき合いでした。

 

 

 

 

 

だから入社一週間で辞めてしまうような僕は社会に順応できず”厄介者”にされてしまうんでしょうね」

 

 

 

 

 

旅立ちの春を迎えると「もう勉強という逃げ道がない」大卒者が就職の不安の悩みを抱え、親子そろって関東自立就労支援センターを訪ねてきます。

 

 

 

 

 

S君(24歳)は豊かな自然の農村地帯に生まれ、「わがままな母と養子で口数の少ない父、山と畑仕事しか知らない祖父母」に囲まれて育ちました。

 

 

 

 

 

家族の一人ひとりは優しい人でしたが、互いに話をすると感情的になり、大人の”不機嫌”という暴力にS君はいつも緊張していました。

 

 

 

 

 

過剰に人の目を気にするようになり、「人と対立することが怖くなると、人づき合いも苦手になってしまいました」。

 

 

 

 

 

いつのころからか”いい子”を演じてきました。

 

 

 

 

 

中学3年、高校3年とわずかに登校を渋ったこともありましたが、大学に入るとそのまま”気楽な独り身の生活”ができました。

 

 

 

 

 

「僕は自分の優しさや友だちになりたいという気持ちを上手に伝えられなくて悩んできました。

 

 

 

 

 

相手が信頼してくれるかが不安で、ストレートに感情が出せないんです。親しく近づく方法のモデルがなかったんです。

 

 

 

 

 

それで努力したことが、ちょっかいを出すことでした。でも『調子にのるな』と言われてしまい、一人浮いて奇妙に思われるだけでした。

 

 

 

 

 

誤解が独り歩きし、孤独になるとまったくしゃべれなくなり、勉強でそのコンプレックスを解消してきたんです。

 

 

 

 

 

高校、大学と心理学の本も読みつくし、下宿と大学の往復で”実験”してみましたが、人間関係はマニュアルどおりにはいきませんでした。

 

 

 

 

 

それでも採用試験と面接は学習能力の高さとマニュアルの本で受かりました。

 

 

 

 

 

でも仕事中は気が休まるのに、昼休みになるとトイレで過ごしている事が職場の人に知られてしまい”変な奴”という噂を耳にし、結局辞めることになりました」

 

 

 

 

 

偏差値教育のエリートが人間関係の”落ちこぼれ”になりました。家族も「いい子」に甘えてしまい、彼の悩みを見過ごしていました。

 

 

 

 

 

「知」を生かす前に「情」で挫折した若者の慟哭に胸が痛くなります。

 

 

 



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団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
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住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援