目を向けてほしいと願っている子どもたち
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目を向けてほしいと願っている子どもたち

2019年04月30日(火)2:51 PM

就職拒否、不登校、あるいは引きこもり、いじめ、万引き、シンナー、薬物依存、強迫性障害などの「問題行動」を起こすことで自分の存在を証明しようと苦悩する子どもたちと出会い続けて15年以上の歳月が流れました。

 

 

 

 

 

これまで「カウンセリングルーム」「相談室」と名のつくところは、大人以上に子どもたちにとって敷居の高いところであったように思います。

 

 

 

 

 

子どもたちの多くは、そんなところに連れて行かれたら、「心を操作されるのではないか」という偏見を抱いていました。

 

 

 

 

 

カウンセラーは、「親の手先」と見られ、子どもたち自身の来談は容易に実現しないことが少なくありませんでした。

 

 

 

 

 

ですから、来談する親や家族の方は、「お恥ずかしい話ですが・・・・」と枕詞をつけて、「本人が来られない(来ない)ので、代わりに来ました」というケースがほとんどでした。

 

 

 

 

 

ところが、最近は少し事情が変わってきています。子どもたちが一人で相談室を訪れるケースがだんだんと増えているのです。

 

 

 

 

 

風邪をひいたら近くの病院へ保険証を持って受診するように、親から面接料をもらって相談室のドアをたたく高校生や大学生が増えています。

 

 

 

 

 

わたしは長い間、「子どもが一人でも相談に来ることができる気楽な空間を作りたい」と願っていました。

 

 

 

 

 

従来はカウンセリングというと、どこか陰の雰囲気が漂い、カウンセラーは心を深めていくことで「陰気臭い人間」と見られていました。

 

 

 

 

 

そんな偏見をいつか解きたいと思っていたのです。ですから、本来なら一人で訪れる子どもたちを歓迎すべきなのでしょうが、わたしは彼らとの面接を重ねるたびに、必ずしも喜ばしい状況とは思えないという気持ちが強くなっています。

 

 

 

 

 

先日も、17歳の高校生のA子さんがひとりで電話予約をして、関東自立就労支援センターの相談室に来所してくれました。

 

 

 

 

 

彼女は進学校への受験に失敗し、「勉強だけすればいい生活」から、次に何を目指せばいいのか悩んでいるようでした。

 

 

 

 

 

A子さんは、問いかけるわたしに切り返しました。

 

 

 

 

 

「わたし、話すことはないんです。ずっとまとめようと思っていましたが、まとまらないんです。わたし、先生の話を聞いていますから・・・・。何か話してくれませんか?」

 

 

 

 

 

「えっ、何を話せばいいのかな?」

 

 

 

 

 

「今、考えていることとか、悩んでいることとか、奥さんといつも何を話しているのか・・・・」

 

 

 

 

 

「僕のこと、聞いてどうするのかな?」

 

 

 

 

 

「いいんです。わたしに向かって話してくれたら、それだけでいいんです」

 

 

 

 

 

わたしは彼女としっかりしたやり取りをするために、あえて沈黙しました。A子さんは10秒も経たないうちに遠慮気味に言いました。

 

 

 

 

 

「わたしと話したくないんですか。何か言ってください。わたしになんか、話してもしかたがないと思っているんですか」

 

 

 

 

 

「そんなことはないけど・・・・。ただ君は僕を話し相手として相談室に来たのかな、って思ったりして」

 

 

 

 

 

「相談することがないと、来てはいけないんですか?」

 

 

 

 

 

その強い口調に、彼女の不快感がわずかばかりあらわれていました。

 

 

 

 

 

「ただ話すだけなら、お金を払ってまでここに来ることもないだろうと思っているんだけど・・・。友だちだっているだろうし・・・・」

 

 

 

 

 

わたしはストレートに切り返してみました。

 

 

 

 

 

「そんな言い方しないでください。わたし、頭が悪いんです。勉強できなくなったら何をしたらいいのかわからないんです。

 

 

 

 

 

勉強以外の普通の話をするにはどうしたらいいのかわからないんです」彼女の不快感が、心の奥の気持ちを素直に表現するエネルギーを引き出したのでしょうか。

 

 

 

 

 

志望校に合格できなかったA子さんは新しい「次なる指示」を求めているようでした。

 

 

 

 

 

勉強のことだけ考えていればいい、という軌道から外れ、社会に出る日、成人になる日を意識したとき、「もっとトータルな人間になろう」「友だちと『たわいのない会話』がでるようにならなければいけない」とA子さんは思ったようです。

 

 

 

 

 

友だちと「たわいのない会話」をする、勉強ができようができまいが子どもにとっては当たり前のことができずに彼女は悩んでいるのです。

 

 

 

 

 

A子さんは、日ごろからごくごく当たり前に声をかけられ、「かまってほしかった」と願っていたそうです。

 

 

 

 

 

そうした営みの中で、「友だちとたわいのない会話ができる自分」が育っていくと彼女ながらに気づき始めていたのかもしれません。

 

 

 

 

 

人間は本来「人と関わりをもちたい」とか「友だちがほしい」といった願望を切にもっているものです。

 

 

 

 

 

ところが、そうした人間関係をうまく築くことができない子どもたちが、受け身でいても声をかけてくれる、自分の願望をかなえてくれると信じて、わざわざ相談室に電話をしてくるのです。

 

 

 

 

 

現在、A子さんと同じような子どもたちが増えています。みなさんはそうした子どもの心が見えるでしょうか。

 

 

 

 

 

子どもたちからのサインに気づいているでしょうか。

 

 

 

 

 

こうしたサインを見過ごした末に、子どもたちの不登校、引きこもり、家庭内暴力などの問題行動を目の当たりにすると、周囲の大人たちはまるで口裏を合わせたかのように、「なぜ、ここまでなる前に、ひと言相談してくれなかったのか」と嘆き、苦しみを背負うわが子を見る親は「子どもの心になぜ気づかなかったのか」と自らを責めます。

 

 

 

 

 

子どもたちだって、「こうなる前に」気持ちを伝えたかったし、わかってほしいと思っているのです。

 

 

 

 

 

親からかまってもらえない、気づいてもらえない、その結果、ひとりで悩みを抱えてしまう子どもが増えているように感じます。

 

 

 

 

 

改めてわたしたち親は、その責任の重さを自覚することが必要なのではないでしょうか。

 

 



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団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援