思春期の子育ての相談~突然親としゃべらなくなった中学1年生の男子~
事例 突然親としゃべらなくなった中学1年の男子生徒
中学1年生の長男のことで悩んでいます。小学校まではなんでもよく話をしてくれる子どもでしたが、中学に入ってからは食事のときでも何もしゃべらないので、「何か機嫌が悪いのでは?」という不安がわたしにいつも残っています。
「早く寝なさい!」と言っても「うるさいな!」という言葉が返ってくるだけで、今ではいちばん最後まで起きています。
そして、大きな音で音楽をかけたり、深夜テレビを見たり、ゲームをしたりしているようで、気になって仕方がありません。服は脱ぎっぱなし、ニキビができているのに顔は洗わない、風呂にも毎日入らないので変な臭いはするし、小学校まではできていたことがなぜできないのか、腹が立って仕方がありません。
わたしが直接言うとけんかになってしまうので、最近では夫を通してしか話さなくなっています。
最初のお子さんが思春期に入って、小学校のときのような親子の親密さが途切れて戸惑っているお母さんからの相談です。
面接でいろいろお話を聞かせていただいて、長男はサッカー部でがんばっているようですし、学校にも普通に元気に通っていて、「宮崎駿さんの大ファン」で、健康そのものだと思います。
そして、わたしとしては特に何も問題を感じませんでした。
実はこのご家庭と似たような状況が、わが家でもありました。長男が中学に入ったころから、息子の変化に妻は大いに戸惑ったようです。
母親は子どもに対する思いが深いだけに、体のことやいろいろなことが父親よりもよけいに気になるのだろうと思います。
妻は小学生と同じように考えて子どもと接していたのが問題だったのかなあと、今では対応の仕方も心得てきたようです。
思春期の子どもたちの最大の特徴は「不安」です。不安というのは対象のはっきりしない、漠然とした恐怖です。
思春期に入ると「自分はどんな大人になれるのだろうか、なるのだろうか」、「男として、あるいは女としてやっていけるのだろうか」という人生の根幹に関わる2つの疑問が突きつけれます。
この2つの疑問を抱えたまま長い間生きなければならない、現代の思春期の子どもたちは「不安」におののいていると言っても過言ではありません。
この不安には性的な体の変化や体の内部から突き上げてくる性的エネルギーも深く関係しています。
「小学校のときとはうって変わって、しゃべらなくなった」というのは、男の子にとっては普通の変化ですから特に心配することはありません。
それは、性的な体の変化とも関係していると思います。わたしは子どもたちといつも風呂にいっしょに入っていましたが、6年生のころだったか、長男がひとりで入ると言い出し、しばらく次男と二人で風呂に入っていた時期があります。
陰毛がはえそろったころに、長男はまたいっしょに入るようになりましたが、この時期の心理的不安は大きいと思います。
初潮を迎える前後の女子の不安もたいへんなものだろうと思います。初潮を契機に、不登校になることも珍しくありません。
事例 朝、腹痛を訴えて学校を休みはじめたQ君(中学2年生)。父親は「力ずくでも行かせる」と言いますが・・・・
現在、中学2年生になる男子の相談です。今年の1月の終わりごろより腹痛を訴えて、登校を渋りだしました。
病院でいろいろ検査をしてもらいましたが、どこも悪いところはないと言われました。しかし、腹痛はひどくなるばかりで、3月にはとうとう1日も学校に行けませんでした。
春休みの間は、腹痛の訴えもなく元気に過ごしていたので、夫は「ただのさぼりだ」と言います。
わたしもQが嘘を言っているとは思いたくないのですが、ほんとうに頭痛や腹痛があったのだろうか、と疑ってしまうこともあります。
夫は今後も学校を休むようなことがあったら叱ってでも、力ずくでも学校に行かせると言います。どうすればいいのでしょうか。
Q君の訴えは、いま不登校の子どもたちの訴えの中で、もっとも多い典型的なものではないでしょうか。
Q君は病院でいろいろと検査をして、どこも悪くなかったそうですので、彼の腹痛は心理的なものからきているのだろうと思います。
しかし、原因が心理的な場合でも、子どもたちが訴える腹痛や頭痛、発熱、倦怠感などの心身症状は、実際に本人が感じているもので、けっして嘘をついているものではありません。
本人は確かに痛みを感じているのです。Q君のお父さんは「怠けだ」とおっしゃっていますが、ほとんどの父親はそのように考えています。
このような場合、わたしは父親が子育てを母親任せにしていて子どもの実際の姿を知らないためだと思います。
母親も最初は「怠けではないだろうか」、「嘘ではないだろうか」と疑い悩み、子どもを学校にせきたてた経験を何回かしているものです。
しかし、登校しようとしても、玄関で顔面蒼白になり、金縛りにあったように動けなくなる姿や柱にしがみついて泣きじゃくる子どもの姿を間近で見て、「これは怠けではない、行こうとしても行けないのだ」と理解できたのです。
父親が母親のように実際に子どもに関わっているならば、「怠けだ」とか「ずる休みだ」という評論家的なことは言えないと思います。
母親は子どもの不登校を自分の子育ての責任のように考えて、父親に内緒にしている場合もよくあります。しかし、子どもの不登校は母親だけの責任ではありません。
父親にも少なくとも同じだけの責任があります。にもかかわらず、多くの父親は子育ては母親の責任だと思っています。
だから、「怠けだ」とか「ずる休みだ」というような無責任なことを言うのです。そして、実際には自分は関わらないで、「叱ってでも、力ずくでも学校へ行かせろ!」と母親を責めます。
わたしは、Q君のお父さんのように、「叱ってでも、力ずくでも学校へ行かせる」と父親が言った場合、「会社を何日か休んで、ぜひ実行してもらうように」と母親に勧めることにしています。
母親が、「あなたのやり方でやってください」と父親を前面に出し、責任を持たせることは非常に大切なことです。
父親が実際に関わった場合、「自分の考えがいかに甘かったか」にすぐ気づきます。そして、母親に協力的になるはずです。
なぜ「叱ってでも、力ずくでも学校へ行かせる」というような強引な手法を父親に実行させるのかについて少し触れておきます。
なぜ、そのようなことを許すのかというと、もしそれを止めた場合、「あのとき、俺の言うように叱ってでも、力ずくでも学校へ行かせておけば、こんなに長びかなかったのに!」という思いが父親にいつまでも残り、子どもを受け入れることができないばかりでなく、いつまでも母親任せの無責任な態度に終始するからです。
今まで母親任せで、無責任なことばかりしていた父親が「こうすればいい」とか「何かする」と言った場合には、間髪を入れずに「どうぞやってください」と言うのが効果抜群なのです。
ただし、強引な「登校刺激」は短期間に限ります。だらだらと「学校への誘いかけ」を続けますと、その後の親子関係がこじれてしまい、収拾がつかなくなることがよくありますので注意しましょう。
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