ひきこもりのキャリアカウンセリング
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ひきこもりのキャリアカウンセリング

2018年08月18日(土)9:50 PM

キャリアカウンセリングはひきこもりの人たちにどのように機能し、どのような役割を果たし、彼らをサポートすることができるかについて具体的に述べてみたいと思います。

 

 

 

 

 

ひきこもりの彼らは。心の底に深い孤独感と漠然とした自分の将来への不安を抱き、自信を喪失している状態にあります。

 

 

 

 

 

そのために彼らは、今後の「生き方、働き方」に対する明確な目標も希望ももてず、ひきこもる中で就学や就業できない状態が続いています。

 

 

 

 

 

こうした、ひきこもりの状態が長ければ長いほど、客観的に自分を捉えること、現実に照らし合わせて自分を理解することが困難になっています。

 

 

 

 

 

キャリアカウンセリングは、単に彼らの就業を支援するだけではなく、何よりもまずひきこもりの人たちの「自己理解」支援を行うことを目的とし、そのうえで彼らの今後へのライフキャリア形成とその具体的行動計画などをサポートするカウンセリングとして位置づけられています。

 

 

 

 

 

一  将来の展望が描けない

 

 

 

 

 

「キャリア」という言葉が日本で頻繁に使われるようになってから、約二○年が経過しました。

 

 

 

 

 

経済不況とともに、かつての日本の労働慣行であった終身雇用制度、年功序列制度が崩壊、同時に情報機器の発達に伴う労働内容・種類の大幅な変容にともない、個人の継続勤務年数、学歴などよりも、その個人の実力、能力、成果が厳しく問われる社会に変容しました。

 

 

 

 

 

「あなたは何ができるのか、セールスポイントは何か、何をもって役立つことができるのか」など、個人に問われるのはこうした能力、実力、専門性となりました。

 

 

 

 

 

このような「キャリア」が問われる社会へと急激に変容し、厳しい現実の雇用情勢のなかで、先の見えない将来への不安を抱く若者が増加しているのは当然のことかもしれません。

 

 

 

 

 

ひきこもりの人たちだけでなく、親たちの世代にも先の見えない漠然とした不安を抱え悩む人が増えているようです。

 

 

 

 

 

こうして、ひきこもりの人たちだけでなく、若者たちは「自分の希望する仕事が何かわからない、希望する仕事に就けない」など、自らの将来を展望できない漠然とした不安感を有しており、先行きの見通しがつかない暗い将来に対して自信を失っています。

 

 

 

 

 

特にひきこもりの若者にとって、こうした厳しい社会への参加のきっかけをつかむことは決して容易ではありません。

 

 

 

 

 

こうした現在の社会労働環境、厳しい現実は彼らの前に厚い壁のように存在し、彼らを圧迫し、社会参加を阻む大きな外部要因となっています。

 

 

 

 

 

そのため、彼らは働きたくても働けないという自信喪失感とともに一種の「あきらめ」に近いような心理状態にあり、ひきこもって仕事をしていない自分に対して、年齢が高くなればなるほど漠然とした焦りや不安を感じています。

 

 

 

 

 

彼らと話していると、好んで仕事をしないことを選択しているのでは決してないことがわかります。

 

 

 

 

 

「本当は仕事をしたい」、「仕事をする意思はあるけどいざとなると自信がもてず、現実の前に立ちすくんでしまう」、「就職活動を一応はしたが、結局うまくいかずあきらめてしまった」、「一度は働いたけど、うまく職場に適応できなくてすぐに辞めてひきこもってしまった」などさまざまです。

 

 

 

 

 

こうした彼らは、将来に対する見通しを立てることができず、また、状況を自分の力でうまく転換できない自信のなさ、その打開方法が具体的にわからないなどさまざまな問題を抱え、悶々と苦悩し深く内向しているのが実態です。

 

 

 

 

 

二  キャリアカウンセリングにおける具体的支援

 

 

 

 

 

かつて、「キャリア」(Career)とは職業、仕事、職歴、職務内容、業績などを意味しましたが、キャリアの概念はしだいに拡大されて現在では「生き方、働き方を通した生涯にわたる個人の自己表現しかたである」と考えられるようになり、単なるキャリアから人生・生活を広く含む「ライフキャリア」へとその概念は広がり変化しています。

 

 

 

 

 

また、「キャリアは単に青年期に形成され決定されるのではなく、生涯にわたって形成され変化、発達するものである」とも考えられるようになり、生涯発達心理学の発展とともに、キャリア形成は長い人生を見通しながら我々の生涯発達課題として捉えられるようになってきました。

 

 

 

 

 

百年以上の長い歴史を有するキャリアカウンセリング(初期にはボケイショナルカウンセリングと称されていた)は、次のように定義されています(National  Career  Development  Association  1991)。

 

 

 

 

 

「個人がキャリアに関してもつ問題や葛藤の解決とともに、ライフキャリア上の役割と責任の明確化、キャリア計画、決定、その他のキャリア開発行動に関する問題解決を個人またはグループカウンセリングによって支援することである」。

 

 

 

 

 

キャリアカウンセリングは、このように人生における職業、仕事の部分に主に焦点を当てますが、同時にその個人の生き方、働き方など統合的な視点から個人をサポートするカウンセリングとして位置づけられています。

 

 

 

 

 

また、進路指導学会ではキャリアカウンセラーを次のように定義しています。

 

 

 

 

 

「キャリアの方向づけや、進路の選択、決定を援助し、キャリア発達を促進することを専門領域とするカウンセラーである」「中学校や高等学校の生徒、大学生の進路選択や決定の援助、また職業人の生涯にわたるキャリア計画、転退職に伴う職業適応問題の解決を支援し、さらに最近では職業以外の役割行動、例えば家庭人の役割やボランティアに見られる市民としての役割をも統合し、真に有意義な人生を送れるようなライフキャリア全体に渡る援助を行う活動の専門家である」としています。

 

 

 

 

 

ひきこもりに対するキャリアカウンセリングの役割は、単に彼らの就業を支援することだけに留まらず、自分のありよう、生き方(自分はどうしたいのか、どうありたいのか、何に関心があり何が好きなのかなど)をはじめとする「自己理解」支援をベースにし、ライフキャリアの根底に存在する本質的な課題解決を支援することです。

 

 

 

 

 

そのうえで、必要な具体的行動(インターンシップ活動、対人関係訓練やコミュニケーション訓練、就職活動の具体的な仕方とそのステップ、職業訓練、履歴書の書き方、面接の受け方、社会マナー訓練など)を支援することに力を注いでいます。

 

 

 

 

 

ひきこもりへのキャリアカウンセリングにおいては、他者との関係をもつこと、挨拶をはじめとする他者とのコミュニケーションの持ち方、自分自身への信頼感、自尊感情の向上支援等、就業支援以前の課題が多いのが特徴です。

 

 

 

 

 

キャリア支援と並行して、ひきこもり期間が長い場合には、何よりもまずソーシャルスキルトレーニングが不可欠であり、社会・職場への適応訓練を具体的にサポートすることの必要性を特に痛感しています。

 

 

 

 

 

三  キャリアカウンセリングの機能と活用

 

 

 

 

 

キャリアカウンセリングでは、ただ単にひきこもりの人と仕事をマッチングさせることにより、彼らの仕事を見つけるためだけに用いられるカウンセリングではありません。

 

 

 

 

 

キャリアに関する悩みや問題を抱える人は、同時にさまざまな精神的、情緒的な問題を抱え、常に不安を抱き、悩み、葛藤しています。

 

 

 

 

 

ひきこもりの人たちは、「これまで家ではただ責められることが多く、信頼して相談にのってもらえる人がいなかった」とよく言います。

 

 

 

 

 

彼らの心理的不安のほとんどは、自分自身が見えず、自分の具体的将来像が描けないことに悶々として葛藤していることです。

 

 

 

 

 

したがって、ひきこもりの人へのキャリアカウンセリングにおいては、何よりもまず「精神的なケア、心理的なサポート」をキャリア相談のなかで大切にしていきます。

 

 

 

 

 

なぜなら、人は情緒的な問題解決によってもたらされる安定感、安心感を持ちえて初めて、自らの現実と将来を冷静、客観的、現実に受けとめることができ、建設的に今後のライフキャリアの方向性に目を向けることが可能になるからです。

 

 

 

 

 

したがって、キャリアカウンセリングは単なる仕事の斡旋や進学に関する情報提供のための補助手段ではありません。

 

 

 

 

 

ひきこもりの人たちのキャリア問題は、非常に情緒的な問題であり、そこでキャリアカウンセリングとメンタルなカウンセリングを明確に区別することはできず、統合したアプローチが常に求められます。

 

 

 

 

 

誰にとっても今後の生き方の方向性、仕事、進路の選択と決定はそう簡単に決められません。

 

 

 

 

 

キャリアの根底に存在するのは、その個人の「生き方・人生」「人生における価値」(自分の人生にとって何が重要なのか、何に重きをおくのか)の選択そのものといえます。

 

 

 

 

 

さまざまな多くの選択肢の中から個人が何を選び取るのか、長い人生の過程は「選択の連続」から成り立っており、人はこうした選択の岐路に立たされるたびに迷いや葛藤、そして不安を伴うものです。

 

 

 

 

 

多様な選択肢の前に立ち、自分は何を選択したらよいか、ひきこもりの人でなくてもなかなか意思決定ができずに苦しむことはごく自然なことです。

 

 

 

 

 

ひきこもりの彼らにとって選択肢は多様にあり(仕事だけでも約三万種類は存在する)、その中から「何を選択したらよいのかわからない」「自分に何がむいているのかわからない」とカウンセリングのなかで彼らが必ず訴えるように、常にその選択と意思決定に迷っている状態に長く留まっています。

 

 

 

 

 

しかし、こうした情報の多さによる混乱だけではなく、その本質的問題は彼らの自己理解不足、自己不明確なために、選択基準をどのように設定したらよいのか、選択の意思決定ができないことが課題として考えられます。

 

 

 

 

 

このように、価値観が多様化してライフスタイル、ワークスタイルも多様に変化する現在、かつてよりも生き方、働き方の選択肢が大幅に増えたことは、一面歓迎すべきことでありますが、一方では選択肢が複数存在することは、若者が選択・意思決定の過程に直面して、新たな不安と葛藤がこれまで以上に発生していることも事実です。

 

 

 

 

 

ですから、キャリアカウンセリングはこのような将来に対する不安と葛藤解決、意思決定のサポートを行うカウンセリングとして機能し活用されます。

 

 

 

 

 

特に、ひきこもりへのサポートもこうした「今後のありよう」、「生き方・働き方に対する不安、葛藤解決」、「意思決定のサポート」がカウンセリング上の大切な課題となっています。

 

 

 

 

 

ひきこもりの人たちへのキャリアカウンセリングの目的と機能は下記のとおりです。

 

 

 

 

 

① ライフキャリアに関する正しい自己理解を促す。

 

 

 

 

 

② ライフキャリア計画など今後のキャリア開発の支援を行う。

 

 

 

 

 

③ 職業選択、今後の方向性の選択、意思決定の支援を行う。

 

 

 

 

 

④ キャリア目標(とりあえずの目標でもよい)達成のための方策、具体的行動計画の支援を行う。

 

 

 

 

 

⑤ キャリアに関するさまざまな情報(進学、職業情報など)の提供と支援を行う。

 

 

 

 

 

⑥ 社会、職場へのより良い適応、個人の発達の支援を行う。

 

 

 

 

 

⑦ 生きること、働くことへの動機づけと自尊感情の維持と向上の支援を行う。

 

 

 

 

 

⑧ キャリア不安、葛藤などの情緒的問題解決の支援を行う。

 

 

 

 

 

四  キャリアカウンセリングにおける自己理解支援

 

 

 

 

 

カウンセリングの中で、ひきこもりの人たちは「自分はどうしたいのか、どのような生き方をしたいのか、どのような働き方がしたいのか、自分にはどのような適性や能力があるのか」など、自分のことが自分で全然わからないと訴えます。

 

 

 

 

 

彼らに共通しているのは、これまで「働くとは何か、仕事とは何か」などについて考える機会をほとんどもたなかったことです。

 

 

 

 

 

また、ひきこもり期間が長くなるほど、自分の世界にだけ長く閉じこもり、他者との交流に著しく欠けている生活を続けてきた場合などには、自分を客観的、現実に照らし合わせて見る視点がもてないことが多いです。

 

 

 

 

 

そこで、ひきこもりのキャリアカウンセリングのスタートは何よりもまず、「自己理解」の支援から入ります。

 

 

 

 

 

すなわち、正しい自己理解なくしては、今後のキャリア計画、意思決定はできず、将来の目標(まずはとりあえずの目標でよい)の設定もできないからです。

 

 

 

 

 

ひきこもりの人たちがよく共通して言うことには、次のことがあります。

 

 

 

 

 

「働きたいけど、やりたいことがわからない、見つけられない、何をしたらいいのかわからない」、「本当にやりたいことが見つかるまではいい加減に妥協したくない」、「就職活動って何をしたらいいのかわからない」、「面接で自己アピールをしろと言われても、何をアピールしたらいいのかわからない、自分はこんな人間ですと語るものがない」、「自分の強みが何かわからない」、「志望動機は何かと聞かれても言えない」などです。

 

 

 

 

 

逆に、「やりたいことはこれしかない」など、非常に狭い範囲に限定し固執し過ぎるために、そこから動きがとれない場合も多いです。

 

 

 

 

 

具体的な自己理解支援としては、次のような項目があげられます。

 

 

 

 

 

① 自分は何に(どのような仕事、分野に)興味関心があるのか、それはなぜか・・・・「興味・関心」

 

 

 

 

 

② 自分は何が(どのような仕事が)好きなのか、それはなぜか・・・・・・「好み・嗜好」

 

 

 

 

 

③ 自分は何ができるのか、何が得意なのか、どのようなスキル、知識、経験があるのか・・・「能力・強み」また、どのようなことが苦手なのか、弱いのか、できないのか、嫌いなのか・・・・「弱み・苦手・嫌い」

 

 

 

 

 

④ 自分はどのようなことに向いているか、どのような分野の仕事が合っていると思うか・・・・・「適性」絶対やりたくない仕事、自分にはできない仕事は何か。

 

 

 

 

 

⑤ 自分はどのような自分になりたいのか、どのような自分でありたいのか・・・・・(欲求、希望、夢、ありたい自分のイメージ)、それはなぜか・・・・・「ありたい自己像」

 

 

 

 

 

⑥ 自分が生きるなか、働くなかで大切にしたい価値(価値観)は何か・・・・・「価値観・人生価値」

 

 

 

 

 

⑦ 自分の役割、責任は何か。家庭、学校、地域、社会から見た場合の自分の役割と責任・・・・・「役割・責任」

 

 

 

 

 

⑧ 自分がなすべきこと、行動は何か。今後の自分へ向けて具体的に行うこと、実践すること、少しでもやってみようと思うことは何か・・・・・「具体的行動と実践」

 

 

 

 

 

以上のような自分自身に関するさまざまなテーマについて、カウンセラーとこれまで(過去)を振り返り、現在を見つめなおし、今後(将来)をイメージしながら少しずつ話し合うことから始め、必要に応じてテスト(適性診断、価値分析、強み分析など)を用いてアセスメントを行い、自己理解を促していきます。

 

 

 

 

 

カウンセラーは相手に質問をわかりやすく上手に投げかけながら、決して答えを性急に求めず、話を引き出し相手に話をさせます。

 

 

 

 

 

じっくり耳を傾け、ゆったり聞きながら、ひきこもりの人に自分自身について考えさせ、整理させ、まとめさせ、「心の中の言語化」プロセスを通して、少しずつ自らを洞察させ、自己への気づきを促していきます。

 

 

 

 

 

カウンセラーは傾聴しながら、要点を繰り返し支持的、共感的な応答をしながらひきこもりの人たちの心を開き、彼らの自己理解を支援することに力を注ぎます。

 

 

 

 

 

また、具体的、実際的な情報提供や助言や指導を積極的に行います。例えば、「納得ゆく仕事が見つかるまで動かないのではなく、とりあえずでもいいから何かやってみよう。そこからきっかけが生まれるかもしれない」など、彼らの背中を押し、勇気づけてやることも必要です。

 



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