ひきこもり支援者にとってのゴール
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ひきこもり支援者にとってのゴール

2018年05月28日(月)11:23 PM

「ある動き出し」

 

 

もう3年越しで両親との相談を続けてきたDさんの事例を見てみましょう。はじめ家庭内暴力があって、一家全員が一時避難をするなど、この間いろいろなことがありました。

 

 

 

 

 

その後、ひきこもり本人の荒れた行動はいくらか落ち着いてきたものの、ときおり部屋で大声をあげるなど、まだまだ心配なエピソードがあります。しかし、半年前の面接に参加したのを最後に、ぷっつりと連絡が途絶えてしまいました。

 

 

 

 

 

しばらく時間が経過したある日、こちらから電話してみました。「プルルルルル・・・・・・・」何度呼び出し音が鳴っても誰も出ません。午後7時過ぎにかけても同じです。思いきって午後10時過ぎに再度かけてみました。

 

 

 

 

 

「プルルルルル・・・・・・」、呼び出し音が非常に遅く感じました。延々と続く呼び出し音を聞きながら、だんだんと不安が高まり、祈るような思いが高まってきます。

 

 

 

 

 

<なぜ、この時間に誰も出ないんだろう?あの後何かあったんだろうか?以前荒れていたこともあったし、まさか・・・・・・>「はい、もしもし」あっよかった、生きていたと母親の声を聞いて、なぜか思わず感謝する気持ちになっていました。そこで親から伝えられたことは、以下の通りの内容でした。

 

 

 

 

 

〇 半年前の面接のすぐ後、本人が自分の部屋から出てきて三年ぶりにふつうの親子の会話ができるようになったこと。

 

 

 

 

 

〇 本人は、私からの手紙への返事を出していないことを気にしていたこと。

 

 

 

 

 

〇 先月から、本人は以前住んでいてそのままになっている田舎の家に移り住み、一人暮らしを始めたこと。

 

 

 

 

 

〇 おかげで家族は何年かぶりに家の中を自由に歩ける解放感を味わっていること。

 

 

 

 

 

〇 私あてに連絡しようと思っていたが、いろいろあってできなくて申し訳なかったこと。

 

 

 

 

 

電話でこの話を聞いた私は、まず第一に無事を確認できたことでホッとひと安心しました。本人と会えないままのひきこもりの援助では、こうした不安、心細さといつも隣り合わせです。

 

 

 

 

 

次に、すでに本人が動き出しをはじめていることがわかり大喜びの気分でした。しかし、受話器を置いた後、どこか釈然としない思いが残りました。

 

 

 

 

 

何年もいっしょに苦労してきたはずなのに、こんな大きな変化が起きた時に何も言ってくれない、こんな時こそ、すぐさま、逐一報告してくれたってよかったろうにと、そんなことを感じていました。

 

 

 

 

 

そして、もう三年も親子でまともに口をきけない状態が続いていたのが、すでに半年も前にふつうにしゃべることができるようになっていた、その間こっちはあれこれ気を揉んでいたのに、と多少腹立たしい思いにすらなってきました。

 

 

 

 

 

「動き出しのいろいろ」

 

 

 

 

 

でも、思い返してみるとこういったことは初めてではなかった気がします。Sさんの親は、なんとか早く治したいと、一六歳の本人を強引に精神科に入院させてしまいました。

 

 

 

 

 

結局四か月後に診断のつかないまま退院となりましたが、すぐに服薬を拒み、あっという間に昼夜逆転の生活に逆戻りになってしまいました。

 

 

 

 

 

ようやく生活を落ち着け、本人が一度だけ相談来所し、母子一緒の家族面接をした後、次回の予約がキャンセルとなり、それ以降、連絡がなくなりました。心配になってメールを送ってみると、返事がありました。

 

 

 

 

 

それには、本人は高校に入り直し、明るく元気でやっていることが書いてありました。それはDさんとの電話で味わった思いと相通ずるところがあります。

 

 

 

 

 

ひきこもりの本人グループに参加しながら「こんなのじゃだめだ」「もっと突っ込んだ話をしたい」と言っていたAさんは、三回参加した後、ぷっつりと音沙汰がなくなり、数ヶ月後に本人はアルバイトを始めていたということがわかりました。

 

 

 

 

 

どれも、動き出しを始めたあるときから急に援助のつながりが薄まっていきます。支援者の立場としては、いくらかでも役に立てたのかもしれない嬉しさやら、突然の別れを迎えての寂しさやらいろいろな思いが巡ります。

 

 

 

 

 

でも、これでいいのかもしれません。支援者にとってのひきこもりのゴールとは、おかげさまで治りましたと感謝されるのではなく、いかに上手にお払い箱になるかがポイントのようです。

 

 



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