ため息の歴史
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ため息の歴史

2018年05月27日(日)12:50 PM

現在29歳の男性ですが、専門学校を卒業後、いったん就職したもののその会社が倒産し、その後いくつか仕事を替わった後、ひきこもってもう8年になります。

 

 

 

 

 

その間に父親を亡くすなど大きな出来事もありましたが、今は母親に変わって買い物、家事なども手伝ってくれるようになりました。

 

 

 

 

 

母親の目から見ると今では何でもできそうに見えるのですが、「あと一歩が出なくて」と歯がゆい思いでいます。

 

 

 

 

 

母親だけの相談を続けて2年が経過したある日の相談の中でのことでした。

 

 

 

 

 

母親はこんなことを語りました。

 

 

 

 

 

「家のリビングで、本人と2人きりだったんですけど、私(母親)から息子に『もうすぐあんたも30歳になるし、お母さん、あんたのことが心配なんだ・・・・・・・』と言ったんです。

 

 

 

 

 

そしたら息子はやおら腕組みを始めて、でも私はかまわず、『けど、あんたは今のままがいいんだよねえ』と続けたんです。

 

 

 

 

 

それが、そうしたらですね、ちょっと間があってからあの子が『フーッ』と、深くため息をついたんです。

 

 

 

 

 

こっちがびっくりするようなため息でね。息子のため息なんて、普段聞いたことがなかったんで、どうなるのかと思って、一瞬心配になったんですけどね。

 

 

 

 

 

でも、その後いったん自分の部屋に行って、またリビングに戻ってきても、別にイライラしているとか特に何もなかったんですけど」

 

 

 

 

 

そこで私は母親に対してこう尋ねました。

 

 

 

 

 

「ため息には歴史があります。息子さんのそのため息には、どんな歴史が込められていたのでしょうね?」

 

 

 

 

 

母親はハッと顔を上げて私を見て、しだいに視線を下げ、じっと動きが止まって何も語らずもの思いに耽るように、そしてただ「フーッ」と、深く長いため息をつきました。

 

 

 

 

 

この「今のままがいい」というメッセージは、2年前に母親からの相談を開始して間もなくの時期に、すでにテーマに取り上げ、一応の工夫を終えていたものです。

 

 

 

 

 

以来、一度も本人と出会うことなく母親だけとの相談を続ける中で、これまで母親が実際の生活場面で本人に向けて言えたのは「今のままがいいの・・・・・・・かな?」という探りを入れるメッセージまででした。

 

 

 

 

 

でも今回、母親はその先のメッセージを伝えることができました。

 

 

 

 

 

他の誰にも肩代わりのできないこの仕事をやり遂げるのに、この母親は2年かかりました。

 

 

 

 

これは、2年目のその日に起きた一つの変化でした。

 

 

 

 

 

そしてその母親は、今日その出来事を報告しながら、相談室の椅子に座っています。

 

 

 

 

 

そして、これまでの2年を、さらにその向こうに広がる親子の歴史を深く長いため息でなぞり、互いの歴史に重ね合わせるもう一つの仕事に取り組んでいます。

 

 

 

 

 

私はこのことを、「家族の個々のメンバーが個々に背負っている歴史を、今一度背負い直そうとする挑戦」と言い表しています。

 

 

 

 

 

そして、親子が互いのペースをつくっていくことができるようになります。

 

 

 

 

 

これはこれから起きるもう一つの変化です。変化はいつも「いい変化」です。

 

 

 

 

 

悪い変化というものはありません。悪循環も、堂々巡りも、変化していないから起こるものです。

 

 

 

 

 

今までになかったようなことを起こすと、変化が起きます。

 

 

 

 

 

変化は、こうして次の「いい変化」へと自ら道を開いていくのです。



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