思春期やせ症から不登校へ~高校一年生女子の事例~
ホーム > 思春期やせ症から不登校へ~高校一年生女子の事例~

思春期やせ症から不登校へ~高校一年生女子の事例~

2018年05月02日(水)3:55 PM

思春期やせ症から過食症に転じた高校一年生女子

 

 

 

 

 

最近、思春期やせ症や過食症などの子供たちが増えています。思春期やせ症は男子でもないわけではありませんが、それはまれで、女性特有のものと言えます。

 

 

 

 

 

まじめで頑張り屋のA子さんは、小学校の時から優等生で成績も良く、スポーツも得意で友達もたくさんいて、中学までは何でもできる子として何の問題もなく学校生活を送ってきました。

 

 

 

 

 

そして、都内でも有数の進学校へ進学しました。

 

 

 

 

 

しかし、高校に入学してから思うように成績が伸びず、かつて経験したことがない劣等感を感じるようになっていました。

 

 

 

 

 

元来「やせ願望」のあったA子さんは、そのころからダイエットをひそかに決意し、現在の56キロを40キロまでに減量しようと努力し始めました。

 

 

 

 

 

努力型のA子さんは、体重計に乗るのを楽しみに極端なダイエットをつづけました。

 

 

 

 

 

冬休み前には目標の40キロに達しましたが、ダイエットが一種の快感となり、それを止めようとはしませんでした。

 

 

 

 

 

食事もほとんどとっていないのに、きわめて活動的で体重は34キロまでに落ちてしまい、月経も止まってしまいました。

 

 

 

 

 

しかし、本人はあまり気にしていませんでした。

 

 

 

 

 

そうこうしているうちに、食べ物のことが頭から離れなくなり、発作的にお菓子を大量に買い込み、学校のトイレで一気に食べたり、夜中に起きだして冷蔵庫の食べ物を残らず食べてしまったりという行動が始まり、体調不良から学校を遅刻したり、休んだりする日が急に増えてきました。

 

 

 

 

 

心配したA子さんのお母さんは、保健室の養護教諭に相談し、病院へ通院することになりました。

 

 

 

 

 

思春期やせ症とは

 

 

 

 

 

思春期やせ症で体重が極端に減少した状態がある程度続いた時、A子さんのように過食に転じる場合があります。

 

 

 

 

 

それは、脳の摂食中枢が機能障害に陥ったためです。

 

 

 

 

 

精神的ストレスを体の症状として出す心身症状は、人間が自分の命を守るためのSOSです。

 

 

 

 

 

人間は、生命を守るための危機管理システムをたくさんもっています。

 

 

 

 

 

特に食べること(摂食)は直接命にかかわりますので、「栄養不足にならないように」特別に緻密な防御システムをもっています。

 

 

 

 

 

その防御システムが「食べ物が欲しい」というサインを出し続けているにもかかわらず、食事らしい食事をとらないという状態が長期に続くのが思春期やせ症です。

 

 

 

 

 

その結果、脳にある摂食中枢が機能障害を起こし、防御システムが暴走してしまうのです。

 

 

 

 

 

思春期やせ症の子供たちが過食症に転じるのは、その防御システムの暴走のためです。

 

 

 

 

 

このように、思春期やせ症はもともとは心理的問題から発症しますが、二次的に身体的障害が生じます。

 

 

 

 

 

極度の体重減少の場合は入院治療も

 

 

 

 

 

「やせ」がある程度進行しますと、少しものを食べてもお腹が張ってしまい、受けつけないという状態になり、悪循環が生じる場合があります。

 

 

 

 

 

そのようになりますと、直接生命がおびやかされますので入院治療が必要になります。

 

 

 

 

 

中学生の場合、激しい運動クラブに所属している女子生徒が疲れすぎて食事が進まず悪循環を起こし、とくに精神的な問題がないにもかかわらず過度の「やせ」で入院治療が必要になるというケースが時々あります。

 

 

 

 

 

一方、思春期やせ症から過食に転じたケースの場合、過食に転じてもほとんどの子供が食べた後、嘔吐して太らないように努めています。

 

 

 

 

 

嘔吐を繰り返しますと、多量の胃液の喪失により血液中の電解質バランスが崩れます。

 

 

 

 

 

 

極度の体重の減少と電解質バランスの崩れは、生命の危険を伴いますので入院治療の必要性が高まります。

 

 

 

 

 

長期にわたって月経が止まると不妊症になる可能性も

 

 

 

 

 

思春期やせ症で体重が極度に減少すると月経が止まるのは、月経がで体重でコントロールされているためです。

 

 

 

 

 

先に人間の心と体との密接な関係について述べましたが、体重という一見なんでもないものが、脳から分泌される性腺刺激ホルモンをコントロールしているのです。

 

 

 

 

 

月経が長期に止まった場合、その後体重が増えても月経が再来しない場合があります。

 

 

 

 

 

そのことは、赤ちゃんを産めなくなることを意味しています。

 

 

 

 

 

不妊症にならないためにも、無月経の状態を長期間放置しておくべきではありません。

 

 

 

 

 

他人からの賞賛が生きがいに

 

 

 

 

 

やせ願望は、ほとんどの女子生徒に共通したもののようで、ダイエットの経験もかなりの女子生徒がもっていると思われます。

 

 

 

 

 

にもかかわらず、生命の危機に至るほど、あるいは脳の摂食中枢が障害され過食に至るほどダイエットを続ける子供たちには、本人の性格や家族関係に何らかの問題がある場合がほとんどです。

 

 

 

 

 

そのため、最初は身体的治療を優先しますがそれだけでは解決せず、精神科的、心理的アプローチを必要としています。

 

 

 

 

 

思春期やせ症・過食症の子供たちの特徴は、自分のしたいことよりも親や先生などの期待にこたえることにより、他人から称賛されることを喜びとして幼少期から育ってきたことです。

 

 

 

 

 

ところが高校に入り、中学までのように飛び抜けて勉強もスポーツもよくできるという状況が失われたとき、A子さんのように心の支えを失うのです。

 

 

 

 

 

そして、ダイエットに生きがいをすり替えるのです。

 

 

 

 

 

矛盾した期待に引き裂かれて

 

 

 

 

 

思春期やせ症・過食症の子供を抱えた親の悩みは深刻です。

 

 

 

 

 

特に、母親は母親自身の女性としての生き方を問われるという面があって大変だと思います。

 

 

 

 

 

しかし、この機会に子どもと正面から向き合い、子供を理解し直し、これまでの親の姿勢を考えていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

そのことは、親の生き方自身にもいい影響をもたらすはずです。

 

 

 

 

 

ところで、思春期やせ症の子供たちの抱える心の問題とはどのようなものでしょうか。

 

 

 

 

 

思春期における不適応は、すべて思春期の心の発達課題「自我同一性(アイデンティティー)の確立」をめぐる問題であると考えて間違いありません。

 

 

 

 

 

思春期になりますと”自分はどんな大人になれるのだろうか”という人生の根幹にかかわる疑問が現実のものとして突きつけられます。

 

 

 

 

 

そして、本人の満足のいくような形でその回答が得られると「自我同一性」が確立されたといいます。

 

 

 

 

 

逆に、”自分が描くような大人にはなれそうもない”と感じた時、不適応が起こります。

 

 

 

 

 

現代では、女の子の場合でも「いい高校・いい大学を目指せ!」と親は育てる傾向があります。

 

 

 

 

 

しかし、現実の社会は相変わらず男性社会であり、結婚すると手のひらを返したように親は「女は家を守り、子供を育てることが幸せよ!」と言います。

 

 

 

 

 

そのような状況の中で、女性がどのような生き方を選ぶかは昔に比べて難しくなっているように思います。

 

 

 

 

 

思春期やせ症の子供たちは、まさにその困難に正面からぶつかっているのです。

 

 

 

 

 

自分の容姿や体型を受け入れるという課題

 

 

 

 

 

思春期の課題である「アイデンティティーの確立」には二つの側面があります。

 

 

 

 

 

すなわち、「社会的側面」と「性的側面」です。

 

 

 

 

 

A子さんが思春期やせ症になる直接の原因は「思うような成績が取れなくなった」という社会的側面での挫折ですが、同時に「女性としてやっていけるのだろうか」という性的な面での疑惑も関係していると思います。

 

 

 

 

 

思春期になれば否応なしに、自分の容姿が気になり、周囲が自分をどのように見ているかに非常に敏感になります。

 

 

 

 

 

それは、「女性として、あるいは男性として、やっていけるのだろうか」という性的な面でのアイデンティティーの確立過程での悩みです。

 

 

 

 

 

現代では、ほっそりとした人を美人という風潮が強いので、思春期に入り、女子生徒がダイエットをする気持ちはよくわかります。

 

 

 

 

 

しかし、自分の顔や姿は変えたくても変えられない部分が多いのです。

 

 

 

 

 

例えば、細い目の子が黒々とした大きな瞳にあこがれてもそれを実現することは不可能です。

 

 

 

 

 

このように、人はみな思春期に自分の容姿に悩みながらそれを受け入れていくのです。

 

 

 

 

 

それは、思春期の心の発達課題の一つなのです。

 

 

 

 

 

人にはそれぞれ「適正体重」のようなものが決まっていて、すごく痩せていても月経が定期的にある人もいれば、かなりの体重がないとすぐ月経が止まってしまう人もいます。

 

 

 

 

 

思春期には、この「適正体重」により決められる自分の体型を受け入れなければなりません。

 

 

 

 

 

思春期やせ症の子供たちの場合、この”自分の容姿や体型を受け入れる”という思春期の課題での”つまずき”と考えることができます。

 

 

 

 

 

「女性的であることを渇望するがゆえの女性性の拒否」というアンビバレンツ

 

 

 

 

 

「思春期やせ症は女性性の拒否である」とよく言われます。

 

 

 

 

 

確かに、女性的体型を嫌うかのようにやせ細り、女性の象徴である月経が止まっても「あたかも望むところだ」という態度を示します。

 

 

 

 

 

しかし、思春期やせ症の女子生徒を単純に「女性性の拒否である」と見るのでは、彼女たちをほんとうには理解できません。

 

 

 

 

 

思春期の心理の理解のキーワードである「両価性(アンビバレンツ)」については以前別のブログで説明しました。

 

 

 

 

 

思春期やせ症の女性は、”女性的であることを渇望するがゆえの、女性性の拒否”という典型的アンビバレンツな感情に悩んでいるのです。

 



メニュー

過去の記事

団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援