不登校とひきこもりのいくつかのパターン
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不登校とひきこもりのいくつかのパターン

2017年12月28日(木)9:18 AM

私はこれまで数えきれないくらい不登校とひきこもりの子供たちと関わってきました。不登校の始まった年齢、不登校の期間、不登校になった理由、様子、その時の対応や立ち直りの状況などさまざまですが、一般的にいくつかのパターンに分けることができるように思います。

 

 

 

 

 

「友人関係によるもの」、「学校、学力などにかかわるもの」、「親や家族など家庭に関するもの」、「教師に関するもの」、「個人的なことに関するもの」、いずれにしても不登校、ひきこもりになる多くの子供たちは、人間関係に悩んで自信がなくなってしまうということから起こります。

 

 

 

 

 

子供たちの人間関係は、家族もあるし、学校の先生、友人との関係もあります。その中で最も多いのは、「友人関係」による理由から不登校、ひきこもりになるケースです。

 

 

 

 

 

原因が分からないというケースでも、案外、友人関係による場合が多いです。

 

 

 

 

 

現在は自分の主張はできますが、相手のことまで考えて歩み寄ったり譲り合ったりすることができない子供たちが増えているように感じます。

 

 

 

 

 

小さいころから家族間の人間関係が核家族化によって希薄になったり、少子化等が原因で、人とかかわる練習をしていないことによります。

 

 

 

 

 

これをその機会を子供たちに与えられなくなった我々大人社会の責任ともいえます。現在、18歳の少年は、中学1年から 3年までの3年間、不登校、ひきこもりをつづけました。

 

 

 

 

 

彼が不登校になった理由は、友人に言葉づかいが「おかしい」とバカにされたことによります。

 

 

 

 

 

それ以来、一言もしゃべらなくなってしまいました。親も心配して、話し方教室や速読教室などさまざまな場所、方法で話し方の練習をさせましたが、本人は一歩家を出ると一言もしゃべらなくなります。

 

 

 

 

 

家の中では楽しそうにしているのですが、外では一切しゃべりません。そんな少年も、関東自立就労支援センターに来るようになって 2年たちましたが、あまり口を開くことはありません。

 

 

 

 

 

ではどうして彼はしゃべれなくなってしまったのでしょうか。あえて本人は、しゃべらないようにしているわけではありません。

 

 

 

 

 

重圧というか、プレッシャーというか、かつてのショックが根深くあり、緊張感からしゃべれなくなってしまうのです。

 

 

 

 

 

「しゃべれないのでは、センターに来ても楽しくないだろう」私たちはそう思ってしまいますが、親に聞くと、「センターではこういうことがあった、ああいうことがあった」と全部話をして、それが楽しかったと言っています。

 

 

 

 

 

この人は信頼できるとか、この人は面白いとか全部話を家でしています。

 

 

 

 

 

関東自立就労支援センターにはいろんな子供たちがいます。言葉を話さない、口をつぐんでものを言わない緘黙症の子供がいたり、体の不自由な子供がいたり、非常にナイーブな子供がいたりします。

 

 

 

 

 

この少年のように極端なケースでなくてもしゃべらない、しゃべれない子供はたくさんいます。みんなお互いの状況がよくわかっています。

 

 

 

 

 

痛みがわかっています。気遣う気持ちがあります。そういう子供たちの中でゆっくりと時間をかけて、無言ではあっても心の翼を広げていったのだと思います。

 

 

 

 

 

しかし、この子に対して私達は特別な対応をしたのかというと、特別な対応はしていません。みんなと同じように接していました。

 

 

 

 

 

あいさつをはじめとしてできるだけ何度も、そしていつでも話をする場を設けるように心がけました。父親も私たちとともに積極的に彼と話をする機会を作りました。

 

 

 

 

 

一生懸命やっている気持ちは彼には非常によく通じて、私たちをとても信頼してくれていました。そういう気持ちをストレートには聞けないまでも、彼はセンターで過ごしている時間が楽しいと父親、母親を通じて話してくれました。

 

 

 

 

 

そして、あまり口を利かない彼にも友達がいました。言葉はかけ合いません。でも、話をすると下を向いてうなずきました。精いっぱい表情に出そうとしました。

 

 

 

 

 

友人たちは「わかったよ」という意味で膝をポンとたたいたり、肩に手をかけて歩いたりしました。小さな身振り、手振りが言葉を超えた友情を育みました。

 

 

 

 

 

大学入学も決まり、以前より少ししゃべれるようになった彼は、希望に燃えています。

 

 

 

 

 

生まれつきのハンディ

 

 

 

 

 

友人関係が理由で、不登校、ひきこもりとなったケースを紹介します。

 

 

 

 

 

現在、大学一年生の彼は片方の視力が極端に弱く、字を判読することが困難でした。メガネやコンタクトレンズを使用したらよいではないかといわれるかもしれませんが、あまりにも左右の視力の差が大きすぎて使用が不可能だといいます。

 

 

 

 

 

一見して違和感を感じるような目です。手で探りながら歩く様子は、友人のからかいの対象になりました。医学的にもさまざまな方法を駆使して治療にあたりましたがうまくいきませんでした。

 

 

 

 

 

ついに、中学一年の時、六年間に及ぶ不登校、ひきこもりの生活に入ったのでした。本人は一人っ子で、性格はとてもまじめです。

 

 

 

 

 

両親もとても協力的で、息子の治療のためなら労をいとわないです。

 

 

 

 

 

「生まれつきの肉体的なハンディ、負い目を負わせて本当に申し訳ない。その負い目を何とかカバーしてやりたい」

 

 

 

 

 

通信制の高校に入学はしたものの、不登校、ひきこもりの状態が続いていました。ほかに何もすることがありません。

 

 

 

 

 

そんな彼の唯一ともいえる心のよりどころ、支えとなっているのは音楽でした。毎日ただただ音楽を聴いてました。音楽は心地いいですが、人は音楽だけでは精神の平穏は得られません。

 

 

 

 

 

「こんなことをしていていいのだろうか」

 

 

 

 

 

「こんな自分でいいんだろうか」

 

 

 

 

 

音楽に逃げ込む自分を責めるようになり、ついには電気をコードを首に巻いたりして自殺未遂を繰り返すようになりました。

 

 

 

 

 

そのたびに、母親が私のもとに相談に来て、私もその子と深くかかわり合うようになりました。何度かの訪問の結果、信頼関係が生まれる本音を言い合える仲になっていました。

 

 

 

 

 

「ところで、なんで死のうとするの?あなたは性格も明るいし、将来性もある。死のうとする理由が僕にはわからないよ」私の質問に彼は揺らぐことなく答えました。

 

 

 

 

 

「ずっと僕は、生きていく方向とは反対のマイナス方向に向かって歩いていっている。マイナス方向に歩いて行くと、どこかに崖があり、そこから飛び降りるしかなくなってしまう。その先に進もうとすれば、飛び降りるしかないんだ」

 

 

 

 

 

少年には音楽が心の慰めになりますが、半面、非常に淋しそうでした。

 

 

 

 

 

「音楽のテープは、時間がくれば最後まで行く。いったん、テープをストップさせて巻き戻しのボタンを押すと、全部巻き戻すことができる。

 

 

 

 

 

巻き戻しをして再度聞くことができるのに、自分の人生はどうして巻き戻しをして再生することができないのか。僕の人生だって巻き戻せるはずなんだ。

 

 

 

 

 

僕は自分をいったん停止する。つまり自殺をして一度人生を止めてしまうことで、また新たな人生が生まれるんだと思っていた。ところが実際には自分は再生できない。

 

 

 

 

 

なんで自分は再生できないのか。再生できないっておかしいじゃないか。音楽のテープのように再生できない、何度も同じところをちゃんと回れる人生でなければ、今までやってきた自分の失敗だらけの、自分でも納得のいかない人生、情けない自分をずっとこのまま背負って歩いて行かなくてはならない。

 

 

 

 

 

そういう運命なら、もう電源を切るしかない。もう生命のコンセントを抜いてしまいたい。コンセントさえ抜いてしまえば楽になれる」

 

 

 

 

 

好きな音楽を聴く、その好きな音楽の中で様々な矛盾を感じながら苦悩する彼の姿・・・・・。ずっと彼とかかわってきましたが、いつもいつも彼とはそんな話になってしまいます。

 

 

 

 

 

そんな時、私は彼に向って決まってこう言うのです。「マイナスの方向を向いてきたら、そこでくるっと一回りしようよ。ぐるっと一回転すればどうだろう。

 

 

 

 

 

今、あなたが立っているところはマイナスかもしれないが、方向を反対に進んでいけばプラスになる。プラスの上にまたプラスをつけ加える。そういう人生を考えようよ」

 

 

 

 

 

私と彼は二人きりで、机の端まで持ってきた指を反対方向に回転させながら、何度も何度もそんな話をしました。

 

 

 

 

 

「回転することがどんなことか、それはあなたも一緒に考えてほしい」

 

 

 

 

 

「そうか、そこで僕は回転すれば、以前と同じように歩いて行けるのか」

 

 

 

 

 

コンセントを抜くか、回転するか、このことは彼にとってとても重要な問題でした。私たちは彼とは徹底して話し合うというスタンスをとりました。

 

 

 

 

 

彼は絶望の淵にいるから人間不信になってきます。自分自身に価値がないというのであれば生きる望みもありません。

 

 

 

 

 

徹底的に話し合い、みんなで彼を信じ、どんな時でも支えになっていくということを伝え続けました。

 

 

 

 

 

やがて彼はコンセントを抜くことよりも、「回転する」ほうを選んでくれました。少しずつ努力を重ね、頑張って二年前に関東自立就労支援センターを離れ、現在は大学生です。

 

 

 

 

 

私は今も、彼のはにかんだ笑顔を思い出します。

 

 

 

 



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