引きこもり・不登校と昼夜逆転の生活~なぜ、夜型の生活になるのか~
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引きこもり・不登校と昼夜逆転の生活~なぜ、夜型の生活になるのか~

2017年12月09日(土)12:22 PM

 

子供が学校を休むようになると、朝起きて夜寝る、という通常の生活パターンではなくなり、昼遅くから夕方にかけて、具体的には 午後3時か4時頃に起き出して、夜中ずっと自分の部屋でゲームをしたり音楽を聴いたり、あるいは漫画を描き、明け方近く午前4時か 5時ころになってやっと眠りに入るというようなパターンに変わってきます。

 

 

 

 

 

このような状態が、昼夜逆転と呼ばれている現象です。これは子供が引きこもりに入る前後から比較的共通して生じます。

 

 

 

 

 

苦しさの緩和剤としての昼夜逆転

 

 

 

 

 

関東自立就労支援センターで相談を受けていると、「夜だらだらといつまでも起きているから朝早く起きることができない、だから子供は学校に行けない」という理解をされている親御さんに多く出会います。

 

 

 

 

 

ある中学生の引きこもった娘さんのお母さんは、子供が夜早く寝れば朝早く起きることができる、だから学校に行くことができると考えました。

 

 

 

 

 

ですから、お母さんは毎晩子供に「早く寝るように」と繰り返し言い、その娘さんも一応ベッドには入るのですが、結局何時間も眠れないままで苦しくて仕方なく、やっぱり眠るのは明け方近くで朝起きられないということでした。

 

 

 

 

 

またお父さんは、「昼間寝てるから夜眠くならないのは当たり前、だから明け方に眠らないで昼間ずっと起きていれば夜眠ることができるに違いない、そのようにすればこんなことは簡単に治せるはずだ」と語られました。

 

 

 

 

 

たしかに彼女は、どうしても朝早く出かけなければならない時には、お父さんの言われるように明け方寝ないで出かけるようにもするのですが、それは1日限りで長続きしません。

 

 

 

 

 

多くの親御さんが、昼夜逆転が不登校や引きこもりの原因になっていると理解しているように思います。しかし実際はどうなのでしょうか。

 

 

 

 

 

私は多くの昼夜が逆転した子供たちと出会う中で、これは、引きこもりや不登校の原因ではなく、むしろ当人の日中の苦しさを緩和させるための工夫なのではないかと考えるようになっています。

 

 

 

 

 

気を使わずに安心できる「夜」という時間

 

 

 

 

 

私たちは幼いころから、朝起きて太陽の出ている間活動し、夜になったら眠るというリズムの中で育ってきています。

 

 

 

 

 

そうした決まりに従えば、いったん朝起きてしまったら子供たちは学校に行かなくてはなりません。でも、ひきこもっている子供は、現実の生活の中で何かしらうまくいかないことがあり、動けないでいます。

 

 

 

 

 

人と会ったり話したりということをできる限り避けたい気持ちになっています。ですから、学校に行かなくて済ませるためには『朝起きるわけにはいかない』のです。

 

 

 

 

 

また、たとえ学校に行かず、家のなかにこもっていたとしても、昼の間、外には人の声があふれています。近所のおばさんたちの話し声、自動車やバイクの音、電話のベルや玄関のベルも鳴ります。

 

 

 

 

 

それらは活動している人たちの音です。また、コンビニや本屋に行こうとしても、近所の誰かしらと出会ってしまうかもしれません。

 

 

 

 

 

学校にいるはずの時間帯に、子供が街をうろうろするのは「変」で目立ちます。昼間起きていても、やるべきことをしていないという気持ちは相当なストレスです。

 

 

 

 

 

活動している人たちの音も、社会から一時的にではあれ撤退している自分をみじめにします。

 

 

 

 

 

昼間起きていると、自分で自分が情けない、でもどうにもできない現実と直面しなければなりません。ですから、心が落ち着かないのです。

 

 

 

 

 

しかし夜は違います。外は静かです。通りを歩く人の足音もまばらです。コンビニや本屋に出かけても、知り合いに出会う確率は昼間よりもずっと少ないですし、また、出会っても「変」ではありません。

 

 

 

 

 

活動していなくてよい時間帯です。そのことによって精神的負担はかなり和らぎます。静寂が心を和ませてくれるといってもよいでしょう。

 

 

 

 

 

自分の家で家族が寝静まると、子供は次第に気持ちが落ち着き、窮屈ながらも少し気持ちが楽になってきます。夜だったら何とか起きていられるのです。

 

 

 

 

 

そして新聞が配達される明け方近くに、通常の場合とは反対に眠りにつくのです。

 

 

 

 

このように、子供は昼夜を逆転させることによって、自分の精神衛生を何とか保たせようとしていると私は考えています。

 

 

 

 

 

加えて言うならば、学校に行きたくないがゆえに昼夜を逆転させているといってもよいでしょう。ですから、昼夜逆転は引きこもりの原因ではなく、引きこもりを続けるために心が行う工夫であると私は理解しています。

 

 

 

 

 

もちろん子どもが、これまでに述べてきたようなことではなく、単に夜と昼のリズムが逆転して困ってるような場合には、例えば自律訓練法やリラクゼーションといった治療法、あるいは睡眠薬などを使って元に戻すことも方法としてはあります。

 

 

 

 

 

しかし先のような昼夜逆転の場合には、睡眠薬はあまり効果はありません。というのも、本人が心から望んで夜眠りたいと思っていなければ、薬は効くものではないからです。

 

 

 

 

 

昼間の居心地を良くする

 

 

 

 

 

先の彼女の場合も、学校に行かない方便として昼夜逆転が起きているように私には感じられました。ですから、私はそのからくりをご両親に解説し、朝起きて昼間心なごむような空間をつくることができれば、昼夜逆転を治してゆくことはできるかもしれないと次のような提案をしました。

 

 

 

 

 

学校に行かなくても文句を言わない、起こすための声かけをした方がよいか、するとしたら何時頃するかは本人と相談して決める、もし決められなければ、起きる時間に一回だけは声をかけるようにすることを本人に伝える、食事はとにかく作り、一度だけは「ご飯ができたよ」と声かけをする、部屋だけでなく居間のソファーにただだらりと寝そべり、テレビやビデオを見てばかりいてもそれをとがめないなどです。

 

 

 

 

 

ひきこもっている子供は、一見外目にはだらだらしているように見えます。しかし実際には心の中は穏やかではありません。

 

 

 

 

 

この外側から見える部分と内側の苦悩のズレは、かなり大きいように思います。

 

 

 

 

 

しかし実のところ、四六時中生活を共にし、だらりとソファーに寝そべっているわが子の姿を見なければならないお母さんにとって、黙って見守ることはなかなか難しく、ついつい言わない方がよい一言が出てしまいます。

 

 

 

 

ですから口を出さないで済むように、お母さんの方が買い物に行くとか図書館に行くとか外出してしまい、本人をなるべく見ないように工夫をするとよいのではといったことを助言しました。

 

 

 

 

 

彼女の場合、ご両親は私と相談しながら本人のペースを守ろうとしました。しかし少し早く起きられるようになると、どうしても親御さんの方に言葉には出さずとも表情や態度に、「そろそろ行ってみたら」といった雰囲気が漂ってしまったり、あるいは実際に「午後からでも学校に行ってみないか」など先走ってしまったために、かえって彼女が起きられなくなることが何回もありました。

 

 

 

 

 

この繰り返しの中でご両親は、結局は遠回りのようでも外出を勧めようとしない方が良いようだと腹をくくっていきました。

 

 

 

 

 

その結果、日中いくぶんか自由になった彼女は、学校に行けるようになる前にまず安心して朝起きて夜眠れるようになっていきました。

 

 

 

 

 

昼夜逆転をしないでもすむ状態になったといえます。これは、引きこもりの子供が引きこもりをやめて、現実の世界に復帰していくための大きなステップになるように私は考えています。

 

 

 

 

 

生活のリズムを取り戻すために

 

 

 

 

 

このように生活のペースが回復すると、夕方コンビニに出かけたり図書館に出かけたりと少しずつ外出ができるようになります。

 

 

 

 

 

心がおだやかで、ある時には楽しいこともあるという体験が人の精神的なエネルギーを回復させます。そうなると自然に元気が出てきます。

 

 

 

 

 

その結果、人との関係の輪のなかに再び戻っていけるようになっていく道がかすかにではありますが、見えてくるように思います。

 

 

 

 

 

また、精神的に上向きになってきて、朝起きることができるようになってからでも、何かの拍子にまた昼夜逆転が起こってしまうこともよくあります。

 

 

 

 

 

精神的に健康になってくると、やはり朝の空気はおいしく太陽の光は新鮮に感じられる・・・・・・。朝起きるのは気持ちがよいのです。

 

 

 

 

 

ですので一度でも朝起きられないと、本人自身「せっかくここまで来たのに」とがっかりし、あの暗闇の世界に再び吸い込まれてしまうのではないかと恐ろしくなり、不安や焦りの気持ちに駆り立てられます。

 

 

 

 

 

こんな時には親御さんが叱っては逆効果で、本人をいらだたせるだけです。どうしたら夜リラックスして眠りに入れるかを一緒に考えたり工夫する方がよいのです。

 

 

 

 

 

子供の生活のリズムを取り戻すためには、焦らずに当人のペースに合わせつつ、回り道のようでも夜起きているときに得られる精神的な安らぎを昼間でも得られるように工夫し、切り替えていくように手助けすることです。

 

 

 

 

 

それが子供に寄り添った対応になり、ひいては引きこもりにストップをかけることにつながってゆくのではないかと私は考えています。

 

 



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