いじめが原因でひきこもりへ~家庭訪問の現場から~
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いじめが原因でひきこもりへ~家庭訪問の現場から~

2017年12月05日(火)3:34 PM

家庭訪問であるお宅を訪ねました。玄関で母親に迎えられ、私は2階にある部屋のドアをゆっくりと開けました。本棚、机、ベッド・・・・男の子にしてはきちんと片づいた部屋でした。

 

 

 

 

 

少年の本棚には、たくさんの漫画本、壁には自分で描いたアニメの絵が飾られていました。

 

 

 

 

 

「座ってもいいかな」許可を取り、少年の横に座ります。少年の場合、母親から「中学時代よりかなり太っている」ということを聞いていたので、甘いものは避けてウーロン茶を持って行きました。

 

 

 

 

 

それを一緒に飲みながら話をしました。一緒にものを食べたり、飲んだりすることは、子供の心の緊張を解いて楽にする作用があります。

 

 

 

 

 

「個性的ないい部屋だね」部屋の様子を話題にして、少年の世界に入っていきます。

 

 

 

 

 

話題を考え、相手の反応を見ながら即興で子供の心を開いていきます。好きなものの話題に入っていきます。

 

 

 

 

 

話す口調も、少し元気そうな子供にはざっくばらんに話しかけます。また、非常に落ち込んでマイナスのエネルギーを抱え込んでいる子供には、ゆっくり静かに話すことを心がけます。

 

 

 

 

 

話すときには、子供の顔を見て、目の動き、表情から自分が受け入れられているのか、拒否されているのかを確認します。

 

 

 

 

 

受け入れたいんだけど、この人は今出会ったばかりなのでちょっと信用できないなど様々な状況があるので、その微妙な心理を判断しなくてはいけません。

 

 

 

 

 

たくさんの子供たちとかかわってきた経験から、私なりに会得した自分流のやり方です。

 

 

 

 

 

少年は私の突然の訪問に驚きながらも、「こんばんは」と笑顔で私を迎えいれてくれました。少年の優しい笑顔の奥にどんな葛藤が潜んでいるのでしょうか。

 

 

 

 

 

痛みが伝わってきました。苦しくて、もがいているのに顔では笑っています。自分ではどうする事もできない、だれかが手をさしのべてあげなければこの子は立ち上がれない・・・・・。

 

 

 

 

 

少年は救いを求めています。そして、スムーズに私を受け入れてくれました。一刻も早く、この状況から抜け出すために手を貸してほしいという切実な思いが無言の中にも伝わってきました。

 

 

 

 

 

不登校やひきこもりの渦中にいる子供は、救いを求めてもがいています。死に直面するほどの切羽詰まった精神状態にいる子供たちは、「自分の向きを変えてほしい」と訴えています。

 

 

 

 

 

向きが変わると、全く違った視野が広がるのではないかと期待しているのです。

 

 

 

 

 

不登校やひきこもりは、当事者や家族の世界に外部の人間が介入することで、新しい局面を切り開くことができます。

 

 

 

 

 

これまで同じような生活のリズムで暮らしている家族が、子供の生活を変えるだけのエネルギーを出すのはとても難しいことです。

 

 

 

 

 

外からでないと、加えられないエネルギーというものがあります。

 

 

 

 

 

私は、少年の傍らで寝そべっている一匹の猫を見て、少し安堵感を覚えました。不登校やひきこもりの子供にとって、ペットというのは非常に大きな意味を持ちます。

 

 

 

 

 

大切な友人であり、理解者であり、仲間なのです。少年にとってもまた、猫は唯一の友達でした。1日中話しかけて、撫でて抱きしめます。

 

 

 

 

 

猫は少年にとって大きな心の支えになっています。共働きの両親は日中、留守にしています。

 

 

 

 

 

祖母は孫のことが心配だけれど、ひきこもりの子供を育てた経験がありません。ですから、何とかしたいと思いながらも、どう接したらいいのかわからず苦悩していました。

 

 

 

 

 

昼間は、孫と二人だけの生活です。祖母には大きなプレッシャーがかかっていました。愛情はもちろんあるのですが、祖母と孫の間に横たわる緊張関係・・・・・・。

 

 

 

 

 

猫がいたおかげで、少年は精神的な安らぎを猫に求めることができました。猫は、自分の苦しみを何でも打ち明けられる大切な相談相手でした。

 

 

 

 

 

猫が少年をひきこもりの現実から救っていました。

 

 

 

 

 

サラリーマンの父親、パートをしている母親、そして祖母との 4人暮らしです。家族はまじめで、家庭としては申し分ないように感じました。

 

 

 

 

 

一人息子に対する愛情は深く、少年は一家の希望として育てられていました。初めの訪問は、短時間で切り上げます。

 

 

 

 

 

「もうすこし話をしたいな」というくらいのところで切り上げるのが鉄則です。「また来るからね」、「来てもいいかな」等、次につなげる言葉を残して・・・・・・。

 

 

 

 

 

帰りの車の中で私は、少年の母親が相談に見えた日のことを思い出していました。切羽詰まった表情で、か細い声で母親はこう訴えたのでした。

 

 

 

 

 

「16歳になる息子を助けてください。中学を卒業した今でも、いじめを受けた後遺症でひきこもりの生活から抜け出せずに苦しんでいるのです」

 

 

 

 

 

少年の場合、「いじめ」がひきこもりの原因だとわかっています。原因がはっきりしている場合には、救いがあります。

 

 

 

 

 

どう対処すべきかの見通しがある程度つくからです。

 

 

 

 

 

いじめによって傷ついた心を癒し、少年にとって、いじめのない環境を整えてあげること・・・・・・・。

 

 

 

 

 

少年の部屋を何度か訪問して話を続けるうちに、私は一つの確信をいだきました。そろそろこの子を外に連れ出す機会を作らなくてはいけないなと。

 

 

 

 

 

そのころ、少年は外の世界に全く出ていけない状況にありました。近所の人たちは皆、「あの子は学校に行っていない」ことを知っていました。

 

 

 

 

 

少年自身、だれもが自分のことをそんなふうに後ろ指をさす気がして、その視線がつらいと言いました。

 

 

 

 

 

近所とか世間とか、つまらないしがらみや人の視線を外したところでじっくり話をし、街を歩き、外の空気を吸わせてあげることが重要だと感じました。

 

 

 

 

 

「私の家に泊まりに来ないか」外に出るためのリハビリというか訓練の意味で、私はこれまで何人もの子供たちを自宅に泊めています。

 

 

 

 

 

少年は私を信頼してくれていました。「行ってみたい」少年の勇気に、家族は理解を示してくれました。家族との信頼関係も上手にできていたので、私の家とはいえ、一泊の「小旅行」に出かけるための手荷物など準備はスムーズに整いました。

 

 

 

 

 

でも、親としては、初めての息子の旅立ちにさぞ不安がいっぱいだったでしょう。すべて私に任せていただくとのことでいよいよ出発の夜を迎えました。

 

 

 

 

 

夜に出発というのも奇異に思うかもしれませんが、少年が周囲を気にすることなく落ち着いた気持ちになれる時間帯をあえて選んでいます。

 

 

 

 

 

私は車で少年を迎えに行きました。パジャマをリュックにつめ、猫におやすみを言って、少年は部屋から出てきました。外に出るのは、3年ぶりのことでした。

 

 

 

 

 

「行ってきます!」。修学旅行にでも行くように、少年は家族の見送りに笑顔で手を振りました。車の中では音楽やアニメなどいろんな話をしました。

 

 

 

 

 

流行の音楽を流します。CDを編集するのはもちろん私です。SMAPも宇多田ヒカルもGLAYもV6も・・・・・・。常に子供たちとは、共通の話題で話すことができるように心がけています。

 

 

 

 

 

私の方から、子供たちに近づいていくことが大事だと思っています。車は夜の新宿を走り、1時間ほどで私の家に到着しました。家では妻が食事を作って持っています。

 

 

 

 

 

私の家の客ではあるけれど、家族の一員として過ごしてほしい、そう思って、泊まりに来た子供には必ず一緒に手伝いをしてもらうようにお願いしています。

 

 

 

 

 

「手伝って」と言われると、子供たちはうれしいのです。少年も、喜んで食器を運びました。今の子供たちは、家庭の中で仕事の分担を与えられていないことが多いようです。

 

 

 

 

 

そうすると、家族の中で、自分の存在意義を確認することが難しくなります。手伝いというのは、自分が必要とされている実感を子供に与える最高の機会なのです。う

 

 

 

 

「まるでわが家の息子だね」一緒に鍋を囲みながら、私はしみじみと言いました。妻は微笑みました。子供たちとの食事は、温かく、皆でつつける鍋のようなものにしています。

 

 

 

 

 

食事が終わると、話をしながら一緒に後片付けをします。家族団欒のように、居間でテレビを見たり、ゲームをしたりします。子供のタイプによって、その夜の内容を考えます。

 

 

 

 

 

私のどの子にも必ず実践していることがあります。それは、一緒に散歩に行くことです。たいていの子供たちは、近所の目が気になり、また強迫観念もあって、全く外に出られません。

 

 

 

 

 

気軽にコンビニにだって行くことができないのです。そんな子供たちが、誰も自分のことを知らない場所では本当にうれしそうに歩きます。

 

 

 

 

 

一緒に話をしながらあちこち歩き回り、コンビニに寄ったりします。子供にとっては、ものすごい冒険であり、大きな喜びです。

 

 

 

 

 

大人からすればささいなことが、彼らにとってはそれがとても大きな自信につながります。一人の部屋で、自分のパジャマに着換えてリラックスして寝てもらいます。

 

 

 

 

 

いつもは昼夜逆転の生活を続けている子供が、他人の家に来た緊張と初めての体験によってなぜかぐっすりと眠ります。

 

 

 

 

 

「おはようございます」翌朝起きてきた少年は、とてもすっきりとしたいい顔をしていました。たった一晩の冒険が、子供の顔つきまで変えてしまうのだから不思議です。

 

 

 

 

 

少年は吹っ切れた笑顔をしていました。今まで自分が願っていたけれどできなかったことができた喜び、感謝の気持ちが言葉には出さないけれど素直に表現されていました。

 

 

 

 

 

子供が切羽詰まった苦しい状況にあるとき、家族という狭い範囲だけではなくて、勇気をもって様々なところに助けを求める努力が必要です。

 

 

 

 

 

他人の力を借りて、その時の子供にあった対応をしていけば、事態は案外早く解決の方向に向かうことができるように思います。

 

 

 

 

 

現在18歳、高校に通い始めた少女は、毎日生き生きとした生活を送っています。

 

 

 

 

 

ナイーブで傷つきやすい少年は、いつの間にか生命力に満ちた美しい輝きを放つようになりました。

 

 



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