引きこもりと虐待の関連性
ホーム > 引きこもりと虐待の関連性

引きこもりと虐待の関連性

2017年12月02日(土)11:49 AM

世間には、引きこもりになる人は虐待されてきたからなどと考えている人がいるようですが、結論から先にれば、これはあくまでも私の意見ですが、引きこもりと虐待との関連性はほとんどないと考えています。

 

 

 

 

 

引きこもりの家庭は、どちらかといえば引きこもりの人の幼少期において家庭円満なことが多いようです。

 

 

 

 

 

そして、父親は企業のサラリーマンであまり家庭を顧みない仕事人間ですが、母親がその分 忠実に家庭を守っていることが多く見られます。

 

 

 

 

 

さらに、引きこもりの人で幼少期に虐待を経験している人はいませんでした。ただ引きこもりの人が、家庭内暴力にいたってしまったときには、子供のころに強く注意されたり、叱責されたことを逆恨みしてそのことをあげつらって両親を攻撃することはよく見られます。

 

 

 

 

 

しかし、本当の意味で引きこもりの人の児童虐待と呼べるものには、私は出会ったことがありません。

 

 

 

 

 

虐待された子供は、引きこもりの人よりももっと早期に様々な症状が出現します。

 

 

 

 

 

それは、精神面で運動機能、情緒発達、言語発達に遅れをきたしたり、身体面で成長が阻害されたり、行動面で衝動的行為や自傷行為などのあらゆる症状が児童期から必ず出現するのです。

 

 

 

 

 

心的外傷後ストレス障害との関連

 

 

 

 

 

何が心的外傷になるのかでその後は変わってくると考えられますが、先ほど述べたように幼少期の虐待は引きこもりとの関連性は低く、同様に虐待による心的外傷後ストレス(PTSD)も引きこもりとの関連性は低いのです。

 

 

 

 

 

引きこもりとの関連性が最も強いと私が考えるPTSDは、「いじめ」によるものです。ここで、A君のケースを紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

A君は、現在20歳の大学生ですが、大学には数日登校しただけで約2年間自宅に引きこもっています。

 

 

 

 

 

自宅からほとんど外出することもなく、会話も唯一彼が信頼を寄せている祖父とするだけでほかの家族とは対話はありません。

 

 

 

 

 

特に両親に対して敵意ともいえる感情を抱いていて、母親の作った食事には全く手をつけようとはしません。

 

 

 

 

 

ときには、母親に対して暴力をふるうこともあります。

 

 

 

 

 

関東自立就労支援センターには最初に両親が相談に訪れ、両親はどうすべきか悩んでいました。

 

 

 

 

 

その後、A君は祖父から説得され、彼自身もこの状態からは抜け出したいということで、ようやくセンターの相談室にやってきました。

 

 

 

 

 

私との面接が週に一回開始されました。そこで明らかになったことは、A君が自分の人生についてとても否定的な感情をいだき、虚無感にさいなまれていて自殺願望が非常に強いことでした。

 

 

 

 

 

 

さらに、その起源と言えるべきものがA君の高校時代のいじめにあることがわかってきました。

 

 

 

 

 

脅迫、暴力、仲間外れなどの陰湿ないじめが高校時代にずっと続き、自分はあんなにも苦しんでいたのに両親は全く助けてくれなかったし気づきもしなかったと恨みを語るようになりました。

 

 

 

 

 

大学に入学して自分は変わろうとしたけれど、高校時代のいじめて人間不信に陥っていて、どうしてもほかの人の前でうまくふるまうことができず、ぎこちなくなってしまう。

 

 

 

 

 

そうこうしているうちに、周りのみんなは友人グループを作ってしまった。自分がそこに入っていけるとは思えない、また仲間外れにされて傷つくのは耐えられないと面接で語りました。

 

 

 

 

 

約1年、面接が続いていますが、A君が彼の内面を話し出すと同時に彼の悲哀感も折出して、自殺未遂を 2回起こしました。

 

 

 

 

 

現在も自殺願望は消えておらず、対人恐怖も全く解消されていませんが、少しずつ両親とも会話ができるようになっており、外出も夜中に近くのコンビニなら出かけることができるようになっています。

 

 

 

 

 

このように、A君はいじめによるPTSDがあって、それが引きこもりの発端となっています。

 

 

 

 

 

いじめを経験した引きこもりの人に共通するのは、虚無感、絶望感が強く、自殺願望があることです。

 

 

 

 

 

だから、引きこもりの人でいじめを受けたことがある人にはとくに注意深く見守る必要があると私は考えています。

 

 

 

 

 

引きこもりは日本特有のものか

 

 

 

 

 

引きこもりが日本独特のものかといえば決してそうではありません。私が引きこもりとして定義した病態は欧米にその報告があり、彼らは引きこもりという診断ではなくて、社会恐怖、回避性人格障害、自己愛性人格障害、境界性性人格障害、などの診断名がつけられています。

 

 

 

 

 

日本において引きこもりという状態が市民権を得ている事態は、やはりその数の多さに由来すると思われます。上記の診断名は極めて珍しいというわけではありませんがそれほど多い病名ではなく、例えば、うつ病に比べれば圧倒的に少ない病名です。

 

 

 

 

 

さらに、上記の病気において引きこもりというのは一つの状態像にすぎないのです。

 

 

 

 

 

したがって、引きこもりという症状をひとくくりにする必要はないのです。日本においてはこの引きこもりという症状が諸外国に比べて圧倒的に多く、しかも重大な病理現象となっているのです。

 

 

 

 

 

では、どうして日本には引きこもりが多いのでしょうか。その理由を私なりに考えてみました。

 

 

 

 

 

まず、引きこもりの人を引きこもったまま支える経済的な基盤が日本に存在すること、引きこもったままの状態を是認するだけの社会の暗黙の了解事項が成立していること、それはとりもなおさず、社会全体がモラトリアム化していることがあげられます。

 

 

 

 

 

さらに、IT産業の発展に伴うバーチャルなコミュニケーションがより若者の価値観の主流を占めるようになって、人と人との直接的な触れ合いが脱価値化して、若者の対人交流のスキルが低下したことなどが考えられます。

 

 

 

 

 

しかし、もっとも私が引きこもりの増加に寄与していると考えているのは、母子一体化の弊害です。

 

 

 

 

 

仕事人間の父親のもとで母親の関心は子供に集中し、子供は受験戦争を勝ち抜くために母子一体となって頑張り続け、それが成功した時には母子の結びつきをさらに強め、母子一体化の幻想に陥ってしまうのです。

 

 

 

 

 

これが、引きこもりの人の精神的自立を悪意なき無意識な拘束によって妨げてしまうのです。

 

 

 

 

 

したがって、引きこもりの人が引きこもりという未曽有の状態になった時には、母親は以前の母子一体化幻想により母子の一体化となった頑張りによってそこから抜け出そうとして悪循環にはまっていくのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

そして、この母子一体化幻想こそが日本独特のものであるために、引きこもりの増加をこれほどまでにもたらしたと私は考えています。

 

 

 

 

 

引きこもりは増えているのか

 

 

 

 

 

引きこもりの報告が日本において見られるようになったのは、1995年ごろからです。

 

 

 

 

 

近年は一種の社会現象となっていることにより、確実に引きこもりが増加していることがわかります。

 

 

 

 

 

厚生労働省から発表された 2016年度の引きこもりについての保健所などへの相談件数が2万件を超えたとされていますが、実際の引きこもりの数はずっと多いと私は考えています。

 

 

 

 

 

なぜなら引きこもりの人は、自分が困っているにもかかわらず、医療機関を受診したがらないからです。

 

 

 

 

 

外の世界とふれあうことを極端に恐れているために、医療機関は彼らにとっては得体の知れない世界にうつってしまうようです。

 

 

 

 

 

したがって、表面化していない引きこもりは、はるかに多いのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

社会的背景によって引きこもりがクローズアップされているという現実もあります。

 

 

 

 

 

以前ならば、引きこもりなどという現象には至らなかったのではないかと思われる子供たちが引きこもりとなり、社会的不利益をこうむっていると考えられます。

 

 

 

 

 

引きこもりは現代に確実に増加し、その根をしだいに拡大させています。

 

 

 

 

 

現代に生きる私たちは、引きこもりに苦しむ人をできる限り早期に脱却させ、未然に予防することが急務とは考えられないでしょうか。

 

 



メニュー

過去の記事

団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-424-7855
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援