A君に伝え続けたこと
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A君に伝え続けたこと

2017年03月11日(土)10:58 PM

どんな子どもも個性を持っています。わたしが関わった子どもに根っからの悪人は一人もいませんでした。

 

 

 

 

 

みんな何らかの理由や育った環境により、世の中でいう悪い子を演じているだけです。

 

 

 

 

 

ですから、その根を取り除いてあげることによって、素直で生き生きした元の姿に戻ります。

 

 

 

 

 

十人十色といいますが、勉強のできる子、スポーツが得意な子、どちらも苦手な子、芸術、音楽などに秀でている子どもなどさまざまです。

 

 

 

 

 

それを伸ばすもつぶすもすべてやる気の問題で、目標が定まっていれば自然と芽が出てくるものです。

 

 

 

 

 

勉強を一生懸命やれば成績が上がります。運動をこなせば身体の能力が上がります。

 

 

 

 

 

感覚や感性を磨けば技術が向上します。ですが、わたしの指導はそんなことは付け足しでよいのです。

 

 

 

 

 

 

なぜなら個々が希望や目標を抱いた時にこれらのどれをとるのかは、個々が選択して決めることだからです。

 

 

 

 

 

それに何をやりたいかが決まれば、専門的なことを教えてくれるところはいくらでもあります。

 

 

 

 

 

わたしの教育は、心の教育です。申し訳ないこと、悪いことをしたら素直に「ごめんなさい」、足を踏んでしまったら「すみません」、感激や何かを与えてもらったことに「ありがとう」と心から言える子どもを育てることです。

 

 

 

 

 

足を踏んだ、踏まないで殺人が起きてしまう世の中ですが、本当に相手の心が理解でき、「ありがとう」の感謝が言える子ども、「ごめんなさい」と心から反省できる子どもはこんな事件は起こさないはずです。

 

 

 

 

 

だから、わたしは「ありがとう」「ごめんなさい」が心から言える、この二点だけは昔も今も変わらず子どもたちに教えてきています。

 

 

 

 

 

「ありがとう」と「ごめんなさい」は表裏一体で、感謝できる子どもは反省もできるものです。

 

 

 

 

 

どちらかが言えない子どもは、どちらも分かっていないと思っていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

わたしは経験上、この二つの言葉が言えない子どもは嘘をつくという共通点を持っていることを知っています。

 

 

 

 

 

A君はまさにそんな子どもです。嘘をつくのが本当にうまい子どもです。みんな騙されてしまいます。

 

 

 

 

 

よく嘘も方便と言いますが、自分の間違いを隠すために嘘をつくなとわたしは教えています。

 

 

 

 

 

嘘は泥棒のはじまりとよく言いますが、実際に本当だと思います。そんなA君は遅刻をするととっさに「時間を間違えた」や「電車が止まりました」と嘘をつきます。

 

 

 

 

 

なぜ素直に「寝坊しました。すみません」と一言いえないのでしょうか?

 

 

 

 

 

この嘘がさらに嘘を呼び、わたしは「何時だと思った?何線が止まった?」と聞くとまったくあり得ない嘘を平気でつきます。

 

 

 

 

 

もうここまでくると「嘘です」とは言えない状況になってしまいます。ですが、結局、嘘は自分を苦しめるだけなのです。

 

 

 

 

 

わたしはA君がこのような嘘をつくたびに、自分で苦しくないのか?と思ってしまいます。

 

 

 

 

 

でもそこで「嘘だろ」と正さないのがわたしの指導法です。ここで正して、形だけ「すみません」と反省の言葉を言うのは真の反省ではなく、その場しのぎであり、また「すみません」という言葉自体も嘘になってしまいます。

 

 

 

 

 

誰でもすぐにわかるような嘘ばかりつくA君は、みな「彼は嘘つき」と知っていて、知らないのは彼だけです。

 

 

 

 

 

こんなことをしていたら、童話の狼少年そのものです。

 

 

 

 

 

その場で「嘘だろう」と言ってあげたいのですが、そうしたところで彼の嘘が直るわけではありません。

 

 

 

 

 

他人からの注意ではなく、自ら自覚しない限りはけっして直らないのです。

 

 

 

 

 

もうA君には嘘をつくことへの罪悪感もなくなっています。このまま続くと、嘘がさらに巧妙になり、自分でも何が本当で何が嘘なのか分からなくなってしまうでしょう。

 

 

 

 

 

A君はちょっと追い込まれると、とっさに嘘をつきます。後から「ごめんなさい」と言っても嘘は嘘であり、だったらはじめから素直に言うべきです。

 

 

 

 

 

後の反省はその場しのぎで真の反省ではないのでまた嘘を繰り返すのです。

 

 

 

 

 

とっさに現実から逃れるために横にずれる、心で受けとめるだけの能力がない、心の幅が小さいのです。

 

 

 

 

 

わたしは嘘を止めさせる方法ではなく、彼に大きな心と感謝感激を人一倍に感じさせる手段をとりました。

 

 

 

 

 

A君には船で海のど真ん中に連れて行き、「ワー」と驚く感情から入り、桜島の近辺の大きな山、東京・新宿の超高層ビルの天辺から都心を一望させ、さらには有名な一流ホテルでコーヒーを飲みながらそこの雰囲気を感じさせ、時にはゴルフ場のだだっ広い自然の中に放り込みました。

 

 

 

 

 

世の中にある「でかさ」を現実に体験させ、心に幅と余裕を持たせるようにしました。

 

 

 

 

 

この行動に初めA君は「どこに行くんですか?僕をどうするつもりなのですか?」とビクビクしていましたが、次第に「次はどこへ連れて行ってくれるんですか?」と心に変化が見えてきたのです。

 

 

 

 

 

 

ある時は、ホームレスの集団の中に入らせ、世の中の闇を体験させました。

 

 

 

 

 

そんなA君は「僕は恵まれています。こうやって住む場所があり、なんら心配しないでご飯を食べられることはありがたいことなんですね。今まで分かりませんでした」と彼から感謝の気持ちが言葉になって返ってきました。

 

 

 

 

 

わたしはここでも嘘をついてきたことに対しては注意はしていません。

 

 

 

 

 

「A君、ありがとうという言葉を知っているね。いろんなありがとうがあるけど、今のような素直な気持ちでありがとうと言えることがすごい人なんだよ。

 

 

 

 

 

ありがとうと言ったら損だと思う人が多いけど、本当はありがとうと言える人が強いんだ。

 

 

 

 

 

だから今の気持ちを大事にして、声を出して言ってごらん」

 

 

 

 

 

彼には「ありがとう」という言葉が強いということは理解できないと思いましたが、わたしは狙いがあって指導したのです。

 

 

 

 

 

A君は恥ずかしそうに「今までありがとう」と小さな声でつぶやきました。わたしは「いや、腹から声を出して」と言いました。

 

 

 

 

 

彼は「ありがとう!」と声を震わせて言いました。感情をそう感じた素直なうちに言葉として発することに意味があるのです。

 

 

 

 

 

いい意味で、感情をそのまま表現することが大事なのです。

 

 

 

 

 

さらにA君には感謝や感激を自覚させる指導を続けました。その指導を続けるうちにある出来事が起きました。

 

 

 

 

 

A君といっしょに寮生活をしている他の子がわたしに、「僕の買ったお菓子がなくなったのですが」と言ってきました。

 

 

 

 

 

わたしは「まさか!」とすぐにA君のことが頭をよぎりました。すぐに彼を呼び出し、聞いたところ彼は「すみません。僕が食べてしまいました」と素直に認めたのです。

 

 

 

 

 

わたしはびっくりしました。自分ではないと、ごまかすのかと思ったら素直に告白したのです。

 

 

 

 

 

こうなると「どうしたのだ」と理由を聞きます。彼は「寮の食べ物が近くにあったから、寮の菓子だと思って」と言いました。

 

 

 

 

 

次に「彼に弁償します。謝らせてください」と言ってきました。今までの指導がA君に通じた瞬間でした。

 

 

 

 

 

こうなるとわたしは「よく素直に言ってくれた。ありがとう」と言い、「今の感情を大切にしなさい。あとはわたしから彼に言っておくから」と言い、この件を丸くおさめたのです。

 

 

 

 

 

わたしの「ありがとう」という言葉にもA君は心を打たれていましたが、一人の指導者として彼の成長がなによりもうれしかったのです。

 

 

 

 

 

「ありがとう」と「ごめんなさい」が心から言える子どもはどれくらいいるでしょうか。

 

 

 

 

 

個々が持っている才能を伸ばすことも当然大事ですが、その前に人間として当たり前のことを素直にできる人間を育てることも大事なのではないでしょうか。

 

 

 



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