引きこもりの理想と現実
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引きこもりの理想と現実

引きこもりの人が自分自身を見つめなおして、とりあえずの目標を達成することができたとしても、もちろん一気に引きこもりが解決するわけではありません。

 

 

 

 

多くの引きこもりの人が自分自身のあるべき姿として、つまり、理想的な姿として思い描いているのは、一般的には「憧れの存在」「手が届かない存在」であるスポーツ選手、タレント、ミュージシャン、作家などです。

 

 

 

 

引きこもっているときには、「自分は今は何もしていないけれども、この経験を生かして作家になります」とか、「ミュージシャンのオーディションに応募する予定で曲を作るつもりです」とか、「引きこもりから抜け出したら、大リーグのコンペティションに参加します」などと語る引きこもりの人がたくさん関東自立就労支援センターにもいます。

 

 

 

 

つまり、私から見れば、かなり現実離れした夢想家のように思えるのですが、彼らにとってそれは現実のことであり、それほどの困難を要しないと感じていることなのです。

 

 

 

 

引きこもりから脱出して少しずつ対人関係ができるようになると、彼らの夢想も徐々にその形態を変えていき、少しずつ現実的なものへと変遷していきます。

 

 

 

 

しかし、周囲にその夢想は現実的ではないといわれても、彼らにとってはまさに真実なのであって、それを否定されてもとうてい納得できません。

 

 

 

 

現実的ではないという部分にいち早く気づけば気づくほど引きこもりからの脱出は、原理的に早くなると思われます。

 

 

 

 

そして、そのことは自らの体験を第三者に語ることでしか獲得できないのです。

 

 

 

 

ここでは、関東自立就労支援センターで面接官に自らの内的体験を語ることによって、引きこもりから脱出しようとしているZ君を紹介します。

 

 

 

 

Z君は24歳の男性で、引きこもってから約三年経過しています。

 

 

 

 

関東自立就労支援センターにはまず両親が来られ、それから三ヵ月後にA君が来所し、スタッフによるカウンセリングを受けるようになって約一年経っています。

 

 

 

 

Z君は、二人兄弟の長男として出生し、銀行員である勤勉な父親と教育熱心な母親のもとで育ちました。

 

 

 

 

幼少期から近所では評判の秀才として知られ、地元の有名進学中学に優秀な成績で入学しました。

 

 

 

 

そして、中学・高校と順調に通過して東京の有名私大に入学しました。

 

 

 

 

しかし、大学入学後からは学校へ行く意欲を失い、下宿先で読書を終日するようになりました。

 

 

 

 

二年生まではときおり大学に顔を出しては少ないながらも友人と会話することもあったものの、三年生になるとまったく大学に行かなくなりました。

 

 

 

 

下宿に閉じこもって食事もとらなくなったため、母親が東京に様子を見に来てZ君の変わり果てた姿に驚き、地元に連れ帰りました。

 

 

 

 

親元に帰ってきたもののZ君の生活に変化はなく、誰とも口をきかず、自室に閉じこもって寝ているか本を読んでいるかの生活を続けました。

 

 

 

 

そんな様子を日々見ていた両親が心配して、関東自立就労支援センターに来所しました。

 

 

 

 

Z君は支援センターに行く気などまるでないと両親にきっぱりと伝えていましたが、両親が定期的に来所を続けているのを見て、一度来所してみるということになり、両親来所の三ヵ月後に初めて来所しました。

 

 

 

 

Z君は面談室ではほとんど言葉を発しませんでしたが、カウンセリングを受けることには同意しました。

 

 

 

 

スタッフとのカウンセリングでは、当初は、「自分は誰よりも読書しているから、自分には小説が書ける」「将来は物書きになって、ごはんを食べていく」「まずは芥川賞を取ることが目標だ」などと話していました。

 

 

 

 

カウンセリング担当のスタッフは、とにかくZ君の話を聞くことに徹していました。

 

 

 

 

Z君はスタッフに「自分は小説を書く」と話していて、実際に原稿用紙400枚ほどの小説を書き上げました。

 

 

 

 

しかし、Z君はその原稿をスタッフに見せることもなく、また、投稿することもないままでした。

 

 

 

 

そして、カウンセリングをはじめて半年ほど経った後に、Z君はスタッフに、「小説は今のところ、自分の趣味だ、これからは小説を書くためにいろんな経験をする」と話しました。

 

 

 

 

しかし、その後もZ君はアルバイトをすると言って、電話はするけれども面接には行くことができない状態にあります。

 

 

 

 

ただ夢想をすることはあまりなくなり、しだいに両親とも話ができるようになっています。

 

 

 

 

スタッフとの面接は定期的に継続しており、これからも焦らずに社会復帰を目指すことで合意を得ています。

 

 

 

 

Z君にとっては、有名作家になることが彼の現実でした。スタッフとの対話のなかでスタッフを自分の鏡のようにして自分を見つめなおし、しだいに夢想から解き放たれて現実に向き合うようになってきました。

 

 

 

 

すべての引きこもりのケースが、このように比較的うまくいくとはかぎらないのは当然です。

 

 

 

 

しかし、夢想家であることが引きこもりの人にとって有益な結果をもたらすことはまずないと考えられます。

 

 

 

 

目標として憧れの人をおくことは、けっして無駄ではないのかもしれません。

 

 

 

 

しかし、まずはとりあえずの目標から始めるべきですし、結局はそれが引きこもりからの脱出の近道であると思います。

 

 

 

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団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
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TEL
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メール
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活動内容
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 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援