家庭内暴力の対応の仕方
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家庭内暴力の対応の仕方

関東自立就労支援センターには、家庭内暴力に関する相談が多く寄せられます。

 

 

 

 

まず、大前提としてわたしが述べたいことは、暴力は否定されるべきものであるということです。

 

 

 

 

ときおり、思春期の専門家さえ、子供の暴力は「甘んじて受けるべきだ」「今こそ親の愛情を示すべきときだ」などという言葉を述べることがありますが、このような意見はまったく否定されるべきものであり、暴力を受け続けることは暴力の連鎖を生むだけなのです。

 

 

 

 

ここでは、家庭内暴力を伴うひきこもりのA君のケースを紹介します。A君は、25歳の男性です。

 

 

 

 

3人兄弟の長男で、弟と妹がいます。幼少期は手のかからない勉強ができるいい子であったといいます。

 

 

 

 

専門学校を卒業後、自動車部品メーカーに就職しました。就職して約2年後、仕事上の失敗を上司に叱責されたことをきっかけに出社できなくなりました。

 

 

 

 

その後、約5年間自宅にひきこもっています。ひきこもって1年後に家族、本人ともこのままではいけないと思い、家から近くの精神病院に通院するようになりました。

 

 

 

 

安定剤を服薬しながら通院していましたが、主治医と話ができないという理由により、2ヶ月ほどで通院を中断してしまいました。

 

 

 

 

再び完全にひきこもるようになり、22歳になって自分の状態に焦りを感じ、自ら関東自立就労支援センターに来所しました。

 

 

 

 

A君は、心理士がカウンセリングを担当し、両親はわたしが面接をすることにしました。

 

 

 

 

母親は面倒見のいい人で明るい性格で、父親は仕事人間で人づき合いがどちらかといえば苦手な照れ屋な人です。

 

 

 

 

カウンセリングでは毎回緊張して様子があり、人と話すのが非常に苦手であることを訴えていました。

 

 

 

 

両親に対する憎しみをしばしば語り、「父親が自分の子供の頃に体罰をした、そのことがどうしても許せない」

 

 

 

 

「母親があんなふうで、自分のことをぜんぜん理解していないから、こんな人間になってしまった」

 

 

 

 

「両親のせいでこうなったのに、何もしてくれない」などと訴えていました。

 

 

 

 

両親とはまったく話さず、母親の作った食事を放り投げたり、食器棚や扉を蹴って破壊したりしていました。

 

 

 

 

また、夜中にお風呂に入って大声をあげたり、洗面器具をたたいたりするようなこともありました。

 

 

 

 

 

カウンセリングには、定期的に通ってきました。カウンセラーとも毎回緊張のあまり汗をだらだら流しながら話そうとしていましたが、会話がはずむことはなく、A君は満たされない思いが強い印象でした。

 

 

 

 

カウンセリングを継続して約半年が経過したときに、初めて母親に突然殴りかかるという暴力が出現しました。

 

 

 

 

母親はただぼうぜんとして、そのときは黙っていました。その夜に父親がそのことを聞いて、A君と夜中遅くまで言い争いになりました。

 

 

 

 

その日はそれでおさまったものの、翌日、A君は包丁を両親に突きつけ、「おまえらなんか殺してやる!」と叫び、そこらにあるものを蹴り倒し始めました。

 

 

 

 

わたしのところに連絡が入り、わたしは警察を呼ぶように両親にうながしました。

 

 

 

 

警察が到着しましたが、そのときはもうA君は暴れておらず、両親も外に避難していたので、警察はしばらく様子を見た後に帰り、両親はその日はビジネスホテルに宿泊しました。

 

 

 

 

その翌日、両親が自宅に帰るとA君は落ち着いていて、その後しばらくは平穏な日々が続きました。

 

 

 

 

カウンセリングは毎週続いていましたが、面接中あいかわらずまったく話せず、カウンセリングに来ても意味がないと捨て台詞を残して、カウンセリングは約1年で終了したかたちになりました。

 

 

 

 

両親はその後も定期的に関東自立就労支援センターに来所されて、わたしの面接を受けています。

 

 

 

 

A君が24歳のとき、再び母親に殴りかかり、それを制止しようとした父親も殴るという事件が起こりました。

 

 

 

 

このときは母親が顔面にけがをしたため、夜中に救急病院を受診しました。

 

 

 

 

そして、わたしとの話し合いで両親とも自宅には戻らず、両親はそれぞれの実家に戻ることにしました。

 

 

 

 

1ヶ月ほど経った頃に、ようやく両親は自宅に帰りました。A君は相変わらず自宅にひきこもったままです。

 

 

 

 

それでも、両親が手紙を出すと返事は返ってくるようにはなっています。ただ、その手紙には依然として「おまえらは、何もしない」「早く死ね」「もう手遅れだ」などと書いてあります。

 

 

 

 

しかし、まったく無視しているわけではなく、どうにかしたいという思いは伝わってきます。

 

 

 

 

ひきこもりのケースで、最も難しい問題は家庭内暴力だと思います。しかし、暴力へは必ず抵抗する姿勢を示してください。

 

 

 

 

A君の両親も最初はどうしたらいいのかと戸惑っていました。心の奥底では、A君は暴力を止めてほしいと思っているのです。

 

 

 

 

表面に現れている怒りは、心の奥底では、実は悲しみなのです。どうしようもない自分のことを救ってほしいのです。

 

 

 

 

暴力は受け止めてはいけません、対抗してもいけません。暴力を受け止めれば、次の暴力へとエスカレートしていきます。

 

 

 

 

彼らの苦しみは暴力へと置き換わっていきます。対抗して暴力に暴力をもって制することはできません。

 

 

 

 

この場合も暴力がエスカレートしますし、親はどうしても子供に対して手加減をしますので、怪我をするのは必ず親なのです。

 

 

 

 

しかし、暴力に対して抵抗は示さなければいけません。言葉ではっきりと言ってください。

 

 

 

 

そして、ひどい暴力に対しては、毅然とした態度で臨んでください。A君の場合のように、警察を呼んだりすることもためらってはいけません。

 

 

 

 

必要なときは、主治医や支援者と相談して、警察の介入も考慮してください。

 

 

 

 

また、A君の暴力が起こりそうなとき、たとえば、前日から物を壊すとか、風呂場で大声をあげるとかがあるときは父親の兄、A君からすれば伯父さんに夜は家に泊まってもらっていました。

 

 

 

 

これはかなり効果的で、伯父さんが泊まった夜はA君の暴力は見られませんでした。

 

 

 

 

このように、第三者が暴力に介入することは暴力を防ぐ優れた方法だと思います。

 

 

 

 

家庭内暴力とは、まさに家庭内で起こるもので、家庭外の人が入ると起こらないのです。

 

 

 

 

ただし、いくら暴力を防いだとしてもひきこもりの人の苦しみ、悲しみは癒されることはありません。

 

 

 

 

暴力は毅然とした態度で否定すべきですが、必ずフォローが必要です。

 

 

 

 

「あなたのことは考えているし、大切に思っている。けど、暴力は反対だ。暴力は何の解決も生まないと思う」という言葉がけは必要でしょう。

 

 

 

 

もし、それができない状況にあれば、手紙やメールを出してください。おそらく返事はないでしょうが、必ず行わなくてはいけません。

 

 

 

 

後回しにしてもいけません。こういったことをしなければ、ひきこもりは100%長期化してしまいます。

 

 

 

 

A君のときも両親が家を出ているときに、母親は自宅のA君あてに手紙を送り続けました。

 

 

 

 

そして、手紙の内容はわたしと相談して、「心配はしている。しかし、今後のことを考えると今は帰れない。

 

 

 

 

必要な物を買うためのお金は送る」というようなものでした。

 

 

 

 

家庭内暴力の対応の仕方で大切なことは、まずは暴力は否定されるべきものであること、毅然とした態度で臨むこと、第三者の介入が効果的なこと、ひどい暴力には、警察の介入も辞さないこと、必ずフォローを必要とすること、などがあげられます。

 

つづく

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