友達とのトラブルと不登校~教師の役割~
ホーム > 友達とのトラブルと不登校~教師の役割~

友達とのトラブルと不登校~教師の役割~

不登校のきっかけと不登校初期段階での対応

 

 

 

 

 

中学生の不登校のきっかけで、「友人関係をめぐる問題」は上位を占めています。不登校体験者の四十五%が不登校のきっかけにこの理由をあげます。

 

 

 

 

 

「友人関係をめぐる問題」に限った話ではありませんが、不登校のきっかけが対応に直接関連するのは、主に不登校の初期の段階です。

 

 

 

 

 

火事も小火の段階では、火元に働きかけるのが効果的ですが、それと同じです。そもそも不登校は、不登校の状態が続くことが問題なのです。

 

 

 

 

 

数日、理由が明確ではない欠席が続いても、それだけで不登校と認識されることは少ないのです。一定期間不登校が継続して、はじめて不登校だと周囲に認識されます。

 

 

 

 

 

ところが、不登校が本格化すると、問題を維持、悪化させる要因が新しく生まれます。問題の維持、悪化の要因が生じると、問題を作り出してきた要因、不登校のきっかけとなった問題を解決しても、不登校の問題解決に結びつかなくなることも少なくありません。

 

 

 

 

 

実際、友人とのトラブルで不登校となった後で、進級や転校となり、トラブルを起こした相手がいなくなっても、不登校の問題が続くことのほうが多いのです。

 

 

 

 

 

このような場合、問題を維持する要因が、問題を引き起こした要因とは異なったレベルで新しく生じてきたと考えるほうがよいでしょう。

 

 

 

 

 

このような場合は、友人とのトラブルそのものに、それ以上手をつける必要はなくなります。これは火事場で火元のタバコの火を消しても、火事が消えるわけではないという理由と同じです。

 

 

 

 

 

とはいえ、不登校のきっかけが、その後の不登校の状態と無関係というわけではありません。

 

 

 

 

 

友達とのトラブルは何を引き起こすのか

 

 

 

 

 

ところで、子ども達はなぜ学校に行くのでしょうか。子どもを学校に誘う大きな要因の一つに、「友達」があります。

 

 

 

 

 

学校は、同世代の友人をつくるには最適の場です。高校生の年齢まで、圧倒的多数の同世代の子どもたちは学校にいます。登校しなければ、昼間に同世代の友人にめぐり合うことは難しいです。

 

 

 

 

 

子どもは学校に行き、友人と出会い、友人に受け入れられる体験をします。その体験が心地よければ友達のいる場としての学校は、子どもを惹きつける大きな魅力を持ちます。

 

 

 

 

 

その友人関係でトラブルが起きれば、子どもに危機的な状況がつくりだされるのは当然のことです。友人関係のトラブルには、さまざまなケースがあります。

 

 

 

 

 

たとえば、学級内で孤立する場合や、いじめられる場合があります。あるいは、親しい友人関係の中で、ケンカなどの関係の不協和が起きることもあります。

 

 

 

 

 

また、友人が持っている価値観とそぐわない動きをして、友人関係からはじき出されることもあります。

 

 

 

 

 

このようにして、友達とのトラブルは、学校の魅力を失う契機となります。そして、それは学校の魅力を失わせるだけではなく、自分の辛い状況をわかり、支えてくれる友人の存在を失うことにもつながります。

 

 

 

 

 

友達とのトラブルよりも、そのトラブルを契機に学校内で自分を支えてくれる人がいなくなったと感じることが、大きなストレスとなって子どもに作用します。

 

 

 

 

 

そのために、友達とのトラブルをはじめとして、友人関係の不調は不登校の引き金にもっともなりやすいのです。

 

 

 

 

 

不登校の初期の段階で教師にできること

 

 

 

 

 

登校しぶりや、保健室の利用が増えることや、欠席が継続して数週間以内が不登校の初期段階です。不登校とは、不快な場面を避け、わが身を守ることです。

 

 

 

 

 

不快な場面を避けるのは、その不快な場面に働きかけ、事態を自力で解決できないと感じているためで、窮余の策です。つまり、不登校の初期段階といっても、不登校傾向が見られた段階で、子どもは問題のきっかけとなったことを、もはや自分では変化をさせられないと考え始めています。「もうこれ以上耐えられない」ので、学級にいられないのです。

 

 

 

 

 

子ども自身は、状況に働きかけることや、友人との人間関係を改善していくのをあきらめかけています。そして。傷ついた場所を離れ、自分の身を守ろうとし始めています。その姿が、不登校の初期段階なのです。

 

 

 

 

 

欲をいえば、不登校傾向が見られる以前に教師が関わることができれば、不登校傾向ですら未然に防ぐことができることもあるはずです。

 

 

 

 

 

実際に、そのような形で不登校にならずにすむ場合も少なくないでしょう。というのも、友人とのトラブルは、比較的子どもの変化を教師が把握しやすい問題だからです。

 

 

 

 

 

教師が子ども同士の人間関係の変化に普段から目配りをしていれば、子ども同士の関係の揺れは把握しやすいはずです。

 

 

 

 

 

友人とのトラブルに遭遇した子どもは、表情が暗くなったり、元気さが失われたり、怒りっぽくなります。その変化が学級の中で現れやすいのです。

 

 

 

 

 

しかも、比較的短期間のうちにそのような変化が起きます。これが、友人とのトラブルに遭遇した子どもの特徴だからです。子どもの変化を感じ取れるセンサーが鋭敏なら、教師がその段階で関われます。

 

 

 

 

 

上手に関われば、不登校に進展することはかなり防げるはずです。一方、登校しぶりや不登校傾向は、何らかの形で保護者や教師等、周囲の大人に関わってほしいと願う動きであるとも理解できます。

 

 

 

 

 

どの不登校傾向の場合でもそうですが、教師が関われる限りでは、できるだけ素早く子どもの傍らに行くのが原則です。そして、「心配をしている」と伝えます。

 

 

 

 

 

友人関係上のトラブルをある程度把握していたのなら、教師が把握し、理解していることを伝えます。今回の不登校傾向と関連性がないかどうかを尋ねてもいいでしょう。

 

 

 

 

 

そして、本人に「教師に手伝ってほしいことがないか」を尋ねます。

 

 

 

 

 

子どもとの信頼関係を再構築する

 

 

 

 

 

しかしながら、友人関係の問題で追い込まれた子どもは、簡単には友人とのトラブルがあったことを是認しないかもしれません。教師に援助を要請することにも消極的な場合が圧倒的に多いです。

 

 

 

 

 

トラブルを把握しながら、不登校傾向に追い込まれるまで教師が静観していたことに不満や不信を抱いている場合もよくあります。

 

 

 

 

 

教師が仲間との人間関係に入ることで、事態がより悪化しかねないのではないかと不安に感じている場合も多々あります。

 

 

 

 

 

さらに難しいことに、人間関係のトラブルは、一般に人に対する信頼感を損なわせやすいです。そのために、関わってくる人に懐疑的になりやすいです。

 

 

 

 

 

この傾向は、不登校期間が延びれば延びるほど強まっていきます。したがって、友人とのトラブルでつまずいた子どもを援助するときには、教師にせよ、保護者にせよ、「子どもの味方である」との姿勢を基本としながら、子どもとの信頼関係を再構築していくことが何よりも重要になります。

 

 

 

 

 

初期段階で関わる場合でも、問題が慢性化した段階でも、このことは基本中の基本となります。では、信頼関係を築くとはどのようなことかと言えば、正直であること、細やかに子どもの意向を確認し、誠心誠意その意向に添った関わりを行うことです。

 

 

 

 

 

教師に対する信頼があれば、「先生に不用意に関わってもらいたくないけれども、友人関係を回復していくことがもしできるのならば、その援助をしてほしい」と、不登校の初期段階の子どもは感じているはずです。

 

 

 

 

 

つまり、「不用意に関わってもらいたくないが、関わってほしい」という微妙な気持ちの揺れがあります。そこに寄り添わなければならないのです。

 

 

 

 

 

また、いじめられているような場合に起きやすいことですが、子ども自身の心理的なダメージが大きい場合ほど、自分自身が辛く、苦しく、そのことで傷ついていることすら感じられなくなることもあります。

 

 

 

 

 

そのようなときには、辛く感じている子どもの感情を受け取り、「それでは辛いよねえ」「しんどいでしょう」と、少々大げさになっても、感情を言語化して、友人とのトラブルで感じたこと、考えたことを語らせます。

 

 

 

 

 

友人とのトラブルの解決策をいっしょに考える

 

 

 

 

 

このときに、「なぜ、そのようなことになったのか」というような理由探しや、原因探しはしなくてもいいでしょう。むしろ、しないほうがいいと思います。

 

 

 

 

 

「誰が何をしていたのか」という事情を、こちらから尋ねることは手控えましょう。子どもの語る事実関係は丁寧に聞いても、客観的な事実を追いかけるのは避けましょう。

 

 

 

 

 

そして、「今、そのことを思い出して、感じること、考えること」を聞くのです。過去の客観的な事実に寄り添うのではなく、子ども自身の今の世界に寄り添うのです。

 

 

 

 

 

その上で、子ども自身が友人関係の回復を願っているのなら、いっしょに問題解決策を探して、あれこれ考え始めます。そして、「友達関係がどんなふうになったらよいのか」と、目指したい方向を定めます。

 

 

 

 

 

「そのために、君はどうすればよいだろうか」「先生は何ができるだろうか」を考えます。そして、いくつものプランを捻出して提示します。

 

 

 

 

 

いくつかのプランが生まれてきたら、その中で実行に移せそうなもの、実現可能性が高い方針を子どもに選んでもらいます。それを実行に移した場合で、悪影響が及ぶとしたらどのような悪影響が及ぶ可能性があるのかも吟味します。

 

 

 

 

 

子ども自身が、その悪影響の可能性も視野に入れながら、取りたい解決策を選び取れるようにします。

 

 

 

 

 

初期対応を誤ると何が起きてくるのか

 

 

 

 

 

実は、友人関係からはじき出された事例では、教師の働きかけをもどかしく感じることが少なくありません。

 

 

 

 

 

「事例」友達と話し合いたいと言う女の子

 

 

 

 

 

たとえば、不登校の初期段階で、自分をはじき出した友達と「話し合いを持ちたい」と語った子ども(小学校高学年女子)の事例がありました。

 

 

 

 

 

しかし、担任は「少し待ってほしい」と言い、一週間ほど待たせました。結局、その担任は、その友達側に事実関係を尋ね、「いじめではないらしいが・・・・・・」との報告を保護者にしました。

 

 

 

 

 

子ども自身はこの対応に落胆して、以後、この話は立ち消えとなりました。ほどなく、担任と会うことすら拒否するようになり、その一方で、外出を恐がるようになりました。

 

 

 

 

 

この外出への抵抗感の回復には、その後数ヶ月を必要としました。そして最終的には、現籍校に復帰せずに、翌年になって転校しました。

 

 

 

 

 

その学校を見限ったのです。転校先では、この子は順調に過ごしています。

 

 

 

 

 

この事例の場合、対人関係の持ち方は積極的でした。当初の友人とのトラブルは、親しくしていた仲間から、ある日を境に冷たくされたことに端を発していました。

 

 

 

 

 

担任は、仲間からはじき出された子どもの訴える事情に寄り添わず、先に仲間の側の事情に寄り添いました。少なくとも、この子どもにそう感じさせました。

 

 

 

 

 

追いつめられた側が、「話し合いたい」と言うのは、よほどの起死回生を願ってのことです。そして、この子どもが願っていたのは、仲間との人間関係の回復でした。

 

 

 

 

 

その段階で、教師がどのようなトラブルがあったのかについての事実関係の調査を始めれば、教師の関わりは、「はじき出したあなたたちが悪い」というメッセージを文脈として友人側に伝える意味を持ちます。

 

 

 

 

 

結果、仲間は不登校の子どもが教師に「自分たちが悪いことをした」と告げたように感じるはずです。この話を聞いて、不登校の子どもは「もはや話し合いはできない」と感じました。

 

 

 

 

 

この段階では、「関係の回復は難しい」という感覚のほうが正常です。教師は、「友達側の事情を尋ねてもよいか」と、教師側の対応について本人の意向確認をすればよかったのです。

 

 

 

 

 

このような対応がなかったことが、本人の担任への信頼感を徹底的に損ねてしまったのです。

 

 

 

 

 

不登校が継続したら、人間不信・対人不安の増大を防ぐ

 

 

 

 

 

この事例に限らず、友達とのトラブルは人間への不信感を増大しやすいです。友達とのトラブルが罪深いのは、それまで信頼を寄せ、気持ちを許していた相手が手のひらを返すように不快な人間関係へと一変する点にあります。

 

 

 

 

 

「どれだけ気を許していると思っても、人は陰では何を考えているのかわからない」という感覚が残されてしまいます。

 

 

 

 

 

小学校高学年から中学生にかけて、このような友達とのトラブルは起きやすいし、男子よりも女子に起きがちです。そして、不登校になり、それが継続するにつれて、「人からどのように思われているのか心配」という気持ちが強まっていきます。

 

 

 

 

 

この感覚を「対人不安」といいます。不登校の結果、対人不安傾向が強まります。この傾向が強まるほど、この事例のように外出を避けるようになります。

 

 

 

 

 

他人との関わりを避ければ避けるほど、自分への自信のなさだけが増していきます。

 

 

 

 

 

このような段階になってから子どもと関わるときは、「不登校の○○さん」と会うのではなく、「○○さん」と会うのだという感覚で会うようにします。

 

 

 

 

 

本人との信頼関係をつくり上げることを第一にします。そして、子ども自身がそのようなことでは褒められないであろうと考えていることや、本人自身では気がついていないことを意識して認め、本心から褒めるようにします。

 

 

 

 

 

つまり、「自分では気がつかないこと、自分ではダメだと思っていることすら、人はよく思ってくれることもある」という体験を繰り返してもらうのです。

 

 

 

 

 

たとえば、ずっと不登校で何もしていないように見える場合でも、「ずーっと気持ちの上では、がんばってきてるんだよね」と語るような働きかけを繰り返します。

 

 

 

 

 

このような関わりが、子どもの人間に対する不信感や対人不安を減らし、子どもの自信の回復につながるのです。そして、この面での回復がなければ、再登校などの次のステップに歩み出すことはできないのです。

 

 

 

メニュー

過去の記事

団体概要
団体名
関東自立就労支援センター
理事長:
大橋秀太
理事:
大畑健太
理事:
杉下真理
住所
東京都東久留米市浅間町1-12-9
TEL
042-439-4355
メール
ki6jt7@bma.biglobe.ne.jp
活動内容
・若年者の就労支援、
 学習 支援、生活訓練
・共同生活寮の運営
・教育相談の実施
・各種資格取得支援