不登校・ひきこもり・ニートに関連する障害~アスペルガー症候群(AS)
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不登校・ひきこもり・ニートに関連する障害~アスペルガー症候群(AS)

アスペルガー症候群(AS)の特徴

 

 

 

 

対人関係(社会性)の未熟

 

 

 

 

ASの人は、深い人間関係を築けないのが最も大きな特徴です。ADHDも対人関係は不器用ですが、人と親しくなりたい、人に近づきたいという欲求はもっています。人付き合いがしたくないわけではなく、したくてもうまくできないのが、ADHDです。

 

 

 

 

これに対してASは、人と親しくなりたいという欲求が希薄です。孤立しても平気で、子どものころから一人遊びが多く、誰かそばにいても一人で遊ぶのを好みます。

 

 

 

 

人と会話していても、視線をあまり合わせず、手振り、身振りの表現が乏しいです。また、人の表情や態度、身振りなどから相手の気持ちを汲み取ったり、その場の雰囲気や空気を読んだりできないので、悪気はないのですが、まわりが困惑したり、傷つくようなことを平気で言ってしまいます。

 

 

 

 

競技やゲームをするときも、仲間と協力して楽しくプレーすることに考えが及ばず、常に一番になることや勝つ事だけにこだわります。これは「自閉症の一番病」と呼ばれるもので、ASやHFPDDにみられる典型的な症状です。

 

 

 

 

また決まりごとやルールを柔軟に考えることができず、融通がききません。変に正義感が強く、完全主義で過度に相手の行為をとがめ、またそれを第三者に言ったりもします。このためなかなか友達ができない場合が多いのですが、本人は一向に気にしません。どう思われようがまったく無頓着なのです。

 

 

 

 

言語コミュニケーションの欠如

 

 

 

 

知能の高いASの場合、幼児期の言葉の遅れはありませんが、彼らの言語コミュニケーションは一種独特なものがあります。会話は一方的で自分の言いたいことだけ話して、相手の話には興味や関心を示しません。

 

 

 

 

言葉のキャッチボールが成立しないのです。人との会話がうまくできないのはASのおおきな特徴です。会話の仕方は形式的であり、同じ言葉の繰り返しや独特の言い回しをします。話し方に抑揚がなく、会話の間もとれません。しばしば話は、回りくどく、細かいところにこだわる傾向が顕著です。しかもあちこち話が飛びやすいので、聞くほうは疲れてしまいます。難しい言葉を使ったり、大人びたしゃべり方をする一方、含みのある言葉や裏の意味は理解できません。言葉の意味を字義通りに捉えるので、冗談やユーモアが通じず、たとえ話を本気で受け取ります。TSU88_tabidachi500_TP_V1

 

 

 

 

こだわり・興味限局傾向

 

 

 

 

ASの人は、自分に興味のあるごく限られた物事に集中し、それに関連した情報を集めるのに多大な労力と時間を費やすことを厭いません。たとえば、車、電車、ロボット、気象、地図、歴史、宇宙、昆虫、恐竜、漢字、計算、時刻表、カレンダー・・・・等々のカタログ的な知識の収集などはその最たるものです。

 

 

 

 

ASには自分の興味を持った分野については驚異的な記憶力を示す人がいますが、これは「イディオ・ヴァン」(天才白痴・サヴァン症候群)と昔から呼ばれていました。

彼らは、自分の興味・関心のあること、特に視覚的な情報を記憶することは得意ですが、頭の中で想像することや予測することは苦手です。

 

 

 

 

ASの人は、自分なりの習慣や手順、順番に強いこだわりがあって、臨機応変な対応ができず、変更や変化を極度に嫌います。ルールや決まりごとを頑固に守り、融通がききません。突然、予定を変えられると、たちまち不機嫌になったり、パニックになったりします。

 

 

 

 

ひどく苦手なことがある反面、とびきり得意なこともあります。自分の空想・ファンタジーの世界に一度入ってしまうと、現実検討力が弱く、現実世界への切り替えが難しくなります。パソコン(インターネット)、携帯、スマホ、ゲーム、ギャンブルなどにいったんはまるとそこから抜け出せなくなるのはそのためです。

 

 

 

 

ASの人の中には、不登校からひきこもりやニートになっている人が少なくありませんが、その背景に昼夜逆転でのパソコンやゲーム依存があることは周知の事実です。

 

 

 

 

感覚・知覚の異常

 

 

 

 

ASの人は、聴覚、触覚、嗅覚、味覚などに異常に敏感だったり、逆に鈍感だったりします。彼らは往々にして食物の好き嫌いが激しく、なかには極度の偏食の人もいます。それは味覚、嗅覚のこだわりとともに、それらに過敏に反応するためです。

 

 

 

 

自傷行為で自分を傷つけることもありますが、これは痛覚が鈍いことがひとつの理由になっています。その一方で、人から触られることに異常に敏感だったりもします。

 

 

 

 

また、ある種の音を極度に嫌がり、騒々しいところでは不機嫌になったり、逆にハイテンションになったりする「聴覚過敏現象」を示すこともあります。特に、花火やピストルなどの大きな音や機械音に対して敏感で、パニックになることもあります。

 

 

 

 

協調運動の不器用さ

 

 

 

 

ASの人は、独特な歩き方や走り方をします。つま先歩きや膝を曲げたまま歩いたりするので、ぎこちなく、操り人形のように見えることがあります。歩行に合わせて腕をふれない子どももいます。

 

 

 

 

縄跳び、器械体操、球技など、スポーツが不得意です。ボールを正確に投げたり受けたりすることは、特に困難なようです。また、スポーツのルールが理解できず、応用するのも苦手です。多くの場合、折り紙、ハサミ、ひも結びなどの手先の運動も拙劣です。

 

 

 

 

字を書くのがゆっくりだったり、絵を描くのに支障が出る場合もあります。このような協調運動の不器用さは、ADHDよりもASに目立つおおきな特徴です。近年のMRIの研究や死後剖検の研究で、自閉症やASに特徴的な所見として、小脳の発育・発達の未熟性が解明されましたが、この小脳は人間の協調運動を司る部分です。

 

 

 

独特のかたい理論を持つ

 

 

 

 

 

アスペルガー症候群の子どもは、こうと決めたらそれをせずにはいられないような、独特のかたい理論を持つのが特徴です。

 

 

 

 

この傾向は、大人になっても残ります。ある二十代後半の男性は、毎朝五時ごろにリヤカーをひいて町内をまわり、彼のいう「まだ使えそうな」ごみはすべて集めてくるという行為をつづけています。

 

 

 

 

しかし、実際に使うわけではなく、集めてきたごみは、自宅の庭に山積みされて悪臭を発し、近所から区の清掃局に苦情が殺到しました。

 

 

 

 

区は、わざわざ彼の家に清掃車を行かせ、ごみを処分しなくてはならなくなりました。

 

 

 

 

一時はすっかりきれいになりましたが、また彼のごみ集めは始まってしまいます。

 

 

 

 

このような騒ぎを起こしても、この青年の意思は揺るがなかったのです。「使えるものを捨てるのは環境問題だ。いま、東京はごみ捨て場がなくなりつつあるんだ。それを考えない人がいる以上、僕はやる。」と言って、毎朝、ごみを集めてくるのです。

 

 

 

 

状況を判断して、考えに柔軟性を持たせたり、臨機応変にかえるなどということはとても苦手です。

 

 

 

 

自閉症の子どももこうした傾向がありますが、アスペルガー症候群ほど独特のかたい理論にとらわれた言動をあらわすことは少ないようです。

 

 

 

 

アスペルガー症候群も自閉症の子どもも運動が不得手ですが、アスペルガー症候群のほうがより目立つ印象があります。

 

 

 

 

ボール遊び、自転車こぎ、縄跳びといった、手と足を同時に動かすような運動に手こずります。

 

 

 

 

また、文字を書くのも苦手です。とくに「あ」のような、交点のあるひらがなを書くときに失敗する子どもがいます。

 

 

 

 

運動が不得手なことについては、アスペルガーも当初から報告しており、アスペルガー症候群の特徴と考えられるかもしれません。

 

 

 

 

自閉症の子どもの多くは、生後二、三ヶ月くらいで、あやしても反応しないという症状が見られます。

 

 

 

 

さらに、お座りするぐらいになっても、「おいで」と言っても反応がなく、母親の姿が見えなくても平気でひとりで遊んでいるような、「愛着行動」がみられないのが特徴です。

 

 

 

 

それに対して、アスペルガー症候群は、このような特徴がはっきりしません。アスペルガー症候群は自閉症に比べて発症が遅いと考えることもできますが、むしろ周囲から気づかれるのが遅いと考えるべきでしょう。

 

 

 

 

生物学的な要因があるとされるのですから、赤ちゃんのころには、明らかな症状がでていなかっただけなのです。

 

 

 

 

アスペルガー症候群は、治療の効果があるとする報告もありますが、疑問におもっている専門家も少なくありません。

 

 

 

 

アスペルガー症候群は、知的レベルの高い人も多く、一流大学を卒業することも珍しくありません。

 

 

 

 

職業も、大学教授や研究職、芸術家のように、人とあまり交流せず、なにかに没頭できるような職種を選べば、これといった問題もなく生きていくことができます。

 

 

 

 

しかし、それは症状が表面にあらわれないだけで、基本的な思考傾向や行動特徴は、一生を通じて変わらないと考えられています。

 

 

 

 

これはアスペルガー症候群だけにかぎらず、広く発達障害に共通していえることです。

 

 

 

 

自閉症の場合、二十五歳ごろから行動量が減ってくるので、一見、症状が落ち着いたようにも見えますが、それは安定したのではなく、自発性が低下したということであり、本質的な問題は一生残っています。

 

 

 

 

ただし、自発性が低下しても、人格が壊れていってすべてに反応がなくなるということはありません。

 

 

 

 

アスペルガー症候群と考えられるある六十代の男性は、長年、会社の重役を勤めてきました。

 

 

 

 

しかし、リタイアして家にいるようになったとたん、妻はイライラするようになりました。

 

 

 

 

「以前から風変わりな人だと思っていたけれど、仕事をしているうちは家にいないので耐えられました。でも、一日中この人と顔を合わすのは我慢できない」

 

 

 

 

妻はそう訴えたといいます。アスペルガー症候群の人がどんな老年期を過ごすのか、あまりデータがありません。

 

 

 

 

周囲の環境のなかで、基本的な症状がどんなかたちであらわれるのかはまだ不明です。

 

 

 

 

アスペルガー症候群の子どもは、家族の中に似たような行動を示す人がしばしば見られます。

 

 

 

 

自閉症やAD/HDでも、その傾向はありますが、アスペルガー症候群ほど多くありません。

 

 

 

 

はっきりしたデータはまだありませんが、遺伝的な要素が影響していることをうかがわせます。

 

 

 

 

アスペルガー症候群や自閉症の子どもたちは、感覚が非常に繊細です。相手の声の調子や話し方、態度を敏感に感じ取り、ひそかに傷ついていることが多々あります。

 

 

 

 

しかも、発達障害の子どもたちはストレスを発散することが苦手なので、自分のなかに溜め込んでしまい、些細な刺激をきっかけにキレてしまうことがよくあります。

 

 

 

 

注意欠陥・多動性障害(ADHD)やアスペルガー症候群(AS)のような発達障害者は、「新奇追及傾向(Novelty seeking)」と「独創性」が共存しています。

 

 

 

彼らは基本的に飽きっぽく、退屈に耐えられず、少しでも退屈を感じると、すぐに何か新しいものを探して頭の中のチャンネルを切り替えます。

 

 

 

古くからある決められたやり方や手順を嫌い、常に新しいものや熱中できるものを探して、好奇心の赴くままに外界の刺激を追及します。

 

 

 

 

簡単に言えば、物見高く、野次馬根性が旺盛なのです。こうした新奇追求傾向は、米ワシントン大学教授クロニンジャーによるパーソナリティ理論ではもっとも遺伝しやすい部分とされています。

 

 

 

 

ちなみに好奇心に関与する遺伝子のデータを見ると、米国人は他の国に比べて図抜けて好奇心が高いことがわかります。これは米国社会が、好奇心やチャレンジ精神旺盛な欧州移民をルーツとしているからではないかと思います。

 

 

 

 

強い刺激を求める傾向については、「へんてこな贈り物 誤解されやすいあなたに 注意欠陥・多動性障害とのつきあい方」(インターメディカル)を著したエドワード・M・ハロウェルらが、わざとスリルを求めて非常に危険な行動をする人はADHDの可能性がある、と指摘しています。

 

 

 

 

実際そのタイプの人たちは、「あー退屈だ、何か面白いことない?」などと口癖のように言っています。彼らは、「刺激のない退屈な人生は生きる価値はない」「波乱万丈こそ人生だ」と思っているのです。ですからたとえば、大金を賭けるギャンブル、不倫、リスクの高い投資、危険なカーレース、バンジージャンプ、急斜面での滑降スキーなどをする人の中には強烈な刺激追求型のADHDの人がいるのではないかと思います。

 

 

 

 

また、ハラハラ、ドキドキさせるようなアクション映画やアドベンチャー映画、冒険小説やファンタジー小説などが大好きで、時間の経つのも忘れて夢中になります。彼らにとってスリルや危険は、脳を興奮させる最高の刺激物なのです。

 

 

 

 

ADHDの人は、爪かみ、チック、抜毛などの習癖(習慣となっているよくない癖)を高い確率で合併しやすいのも特徴です。彼らは自分の興味や関心のないことには覚醒レベルが低下してボーッとなってしまうので、自ら脳を刺激し、覚醒させるために、こうしたスリルや習癖に走っているのです。プロ野球選手などが試合中にガムを噛むことで集中力を高めるのも同じメカニズムです。PAK78_amenosibuya20141220150640500_TP_V1

 

 

 

 

 

ADHDの人はタバコやコーヒーなどの嗜好品に依存したり、コカインや覚せい剤などの刺激系の薬物に依存しやすいのも大きな特徴です。これも覚醒レベルの下がった脳を自分で刺激して注意集中力を上げるためとされ、精神薬理学的には「セルフメディケーション(自己投薬)」と呼ばれています。

 

 

 

 

ADHDでは、アルコール、大麻(マリファナ)、シンナーなどのように逆に覚醒レベルを下げる薬物を自己投薬している物も少なくありませんが、これはそうやって覚醒レベルを下げることで、心の中の強い不安を解消して安心できるからです。

 

 

 

 

一般に覚せい剤などの刺激系の薬物に依存しやすいのはジャイアン型、大麻などの不安をやわらげてくれるまったり系の薬物に依存しやすいのはのび太型とされています。

 

 

 

 

一方、彼らは、自分が興味、関心のあることにはずば抜けた集中力とこだわりを持って長い時間のめり込むことができます。不注意傾向と一見矛盾するようですが、これは「過集中」と呼ばれる現象です。

 

 

 

 

自分の興味、関心の有無によって注意集中力と意欲に大きく差が出るのは、ADHDの典型的な症状であり、大きな特徴です。

 

 

 

 

発達障害者は、しばしば極めて独創的です。無計画で注意散漫でありながら、きらりと光る才能のひらめきを見せることがあります。普通の人なら到底思いつきそうもないことを考え、しかもそれを実行に移す行動力を併せ持っていることがあります。

 

 

 

 

歴史上の偉人には、このずば抜けた集中力とこだわり傾向を持った人が多いです。具体的には、彼らは周りの評価などきにせず、自分の関心、興味の赴くままマニアックにひとつのことにこだわって邁進し、芸術、科学、文学、歴史、冒険、芸能、マスコミなどの分野で偉大な業績を残しています。PAK52_ashibayanohito20140315500_TP_V1

 

 

 

 

発達障害者は、興味のないことへの「不注意傾向」と、興味のあることへの「過集中傾向」を併せ持っています。これは普通の人でもよく見られることですが、発達障害者の場合は、その差が極端なのです。

 

 

 

 

ADHDの新奇追求や独創性は、長所にも短所にもなる症状で、過集中傾向も併せてうまくプラス方向に活用できれば、自分の才能や能力にあった職業に就いて、思う存分、独創的な仕事をやるこができ、結果的にすばらしい業績を残せる可能性があります。

 

 

 

 

しかし、マイナスに作用するような形でしか職業選択ができないと、自分の興味や関心の向く仕事が見つからず、しばしば長続きしないで転職を繰り返したり、ニートになったりします。ですから、ADHDの支援やサポートでは、本人の能力や才能、興味や関心を見極め、彼らが持っている「特別な何か」が生かせるような適切なキャリア・ガイダンスを行うことがとても重要になります。

 

 

 

 

大人のADHDによく見られる症状

 

 

 

 

片付けられず、忘れ物が多いというのは、大人のADHDに必ずと言っていいほど現れる、きわめて出現頻度の高い症状です。

 

 

 

 

これは大人のADHDの基本症状である「不注意」と密接に関連しますが、近年、注目されているのは「記憶障害」、なかでも「ワーキングメモリ(作業記憶)」や「手続き記憶」との関係です。

 

 

 

 

まずワーキングメモリですが、これは一言で言えば、ひとつの情報を保持しながら別の活動をするための機能です。たとえば、キッチンでカレーを作っているときに電話がかかってきたとします。普通であれば、通話相手と話しながらも、鍋のそばを離れず、ときどきは焦げないようにかき回したりするはずです。

 

 

 

 

電話をしていても、「カレーの鍋が火にかかっている、気をつけないといけない」という意識がちゃんと働いているからです。あるいは、二階のベランダに洗濯物を取りに行く場合なら、そこへつくまで、自分は何をしにいくのか、それをしっかり覚えておく。これができないと、二階のベランダに着いたとき、「あれ、何しにきたんだっけ?」となってしまいます。MAR78_kosumosumurasaki500_TP_V1

 

 

 

 

このように、いまやっていることとは別に何かをやらなければならないとき、それに必要な情報を必要な時間だけ貯蔵し、「こっちもあるから忘れちゃだめだよ」と頭の中で注意を喚起する仕組みが、ワーキングメモリなのです。

 

 

 

 

たとえていえば、頭の中に貼った作業用のメモ帳のようなものです。ワーキングメモリは、脳の前頭前野が司っているとされ、ここに問題が発生すると、複数のことを同時にこなしたり、いまある課題をどう順序立てて実行すればいいか考えたり、いくつもある条件のなかから最適な答えを見つけたりするのが困難になります。

 

 

 

 

たとえば、仕事中に同僚宛の電話がかかってきたら、普通は彼の所在を確認し、必要に応じて取り次いだり、不在などで電話に出られないなら、代わりに話を聞いて伝言メモを残したりするはずです。大人のADHDの人は、こうした当たり前の事務、雑務ができず、しばしば取次ぎや伝言をしないでトラブルになったりします。

 

 

 

 

また、前に読んだ内容や聞いたことが前提になる文章の読解や人との会話、講演会でのノート取りなども難しい作業になりますし、普通の人なら暗算で記憶しておけるものがすぐに消えてしまうので、買い物のときなどのちょっとした計算でも苦労します。

 

 

 

 

次に手続き記憶についてお話します。手続き記憶とは、自動的に物事の手順を実行する際の「知覚的(触る・見る)」、「運動的(物を動かす)」、「認知的(物を知覚して認識する)」な記憶であり、具体的には車や自転車の運転、タイピング、楽器演奏、水泳、読経などのように繰り返し行うことで獲得されるタイプの記憶です。簡単に言えば、からだで覚える記憶であり、意識しなくても使えるのが特徴です。

 

 

 

 

手続き記憶には大脳の奥にある基底核などが重要な役割を果たしているとされ、ここが損傷を受けると、たとえば、何度繰り返しても仕事の手順が覚えられず、作業の練度も上がらない、という事態に陥ってしまいます。

 

 

 

 

炊事、洗濯、掃除などの家事にしても、毎日繰り返しやることで手順や要領、段取りなどをだんだん覚えるわけで、手続き記憶に問題があると、たちまち困難に直面します。

 

 

 

 

大人の発達障害は、よく「本業はできるのに、雑務ができない」「仕事はできても家事ができない」と言われますが、それは不注意傾向とともに、記憶障害があって、

 

 

 

 

1、雑多な用事の優先順位をつけ、

 

 

 

 

2、先を読んで、手順を考え、

 

 

 

 

3、やりかけの仕事を最後まで続けて完成させる、

 

 

 

 

という一連の作業を段取りよくできないからです。片付けられず、忘れ物が多いというのは、まさにその結果なのです。彼らは、自分に興味や関心のないことは特に忘れやすく、「記銘(記憶として取り込むこと=符号化)」も「保持(忘れずに覚えていること=貯蔵)」も「想起(思い出すこと=検索)」も苦手です。

 

 

 

 

その一方で、集中力と同じく、自分の興味や関心のあることには驚くほどの記憶力を発揮します。自分の興味や関心の有無によって注意集中力や記憶力に大きく差が出るのは、ADHDの典型的な症状であり、大きな特徴です。

 

 

 

なお、ADHDやASの中には、強い不安感から、かえって強迫的に「整理整頓・片付け」にこだわる人もいます。また、発達障害者であっても、小児期から親がしっかりしつけを行えば、「整理整頓・片付け」は身につくようになります。

 

 

 

 

男性に多いチック症、女性に多い抜毛癖

 

 

 

 

発達障害者、特にADHDやASは、爪かみ、貧乏ゆすり、チック、抜毛など、いろいろな習癖を示しやすいことが知られています。

 

 

 

 

特にチック症や抜毛症(トリコチロマニア)は治療が必要なほど、ひどくなることがあります。

 

 

 

 

ここではこの2つの習癖についてお話します。まずチック症ですが、これは、顔面、肩などにピクピクッとした瞬間的な動きが、本人の意思とは関係なく繰り返し起きてしまうことを言います。

 

 

 

 

一番多いのは瞬きで、ほかにも肩をぴくっと動かす、頭を振る、顔をしかめる、口を曲げるなどいろいろとあります。

 

 

 

 

症状が重くなると、腕が動いたり、音声チックといって声を発したりすることもあります。

 

 

 

 

頻繁にため息のような声を出したり、咳払いをしたり、なかには「馬鹿!」などの汚い言葉を絶えず口にすることもあります。

 

 

 

 

チック症は男性に多く、重度になるほど多発性になり、顔面、首から下のほうにマーチ(行進)していきます。

 

 

 

 

比較的軽い一過性のチックは、母親などの過干渉や支配的な養育態度などによって起こる心因性のものですが、重度の慢性チックになると、家庭の養育環境の偏りだけでなく、何らかの脳の機能的、気質的障害が関与していると考えられています。

 

 

 

 

これまでの研究では、脳の線条体、尾状核などの基底核の異常が指摘されています。

 

 

 

 

このため、ごく大雑把に言えば、軽いチック症は心因的要因、重いチック症は生物学的要因(脳の機能障害)によるものと言えます。

 

 

 

 

次に抜毛症ですが、これは自分の毛髪、眉毛、すね毛などを無意識に引き抜いてしまうものです。

 

 

 

 

ひどい場合、頭皮の地肌が見えるまで抜いてしまう人もいます。この習癖は男性に多いチック症と異なり、女性に多い習癖であり、通常、小学生から中学生に発症しますが、成人になっても続くことがあります。

 

 

 

 

なかには自分の毛だけでなく、飼っている犬や猫の毛を抜いたり、人形の毛を抜いたりするケースもあります。

 

 

 

 

また抜いた自分の毛や人形の毛などを食べる「食毛症」になる人もいて、この場合は毛が腸内に移動してイレウス(腸閉塞)を発症したり、毛が胃液で結石化(毛髪胃石)して胃潰瘍を発症することもあります。

 

 

 

 

実際、抜毛症のあるADHDの女性が、「お腹が痛い」というので、ひょっとしたらと思い、胃の中を調べてみたら、案の定、毛髪胃石が見つかったことがあります。

 

 

 

 

抜毛癖の原因としては、親などの過干渉や支配的な養育態度のほか、子どものころ、十分に甘えられなかったことがあげられますが、発達障害も大きな要因となります。

 

 

 

 

ADHDがなぜ抜毛癖を示しやすいのか、はっきりしたことはわかっていませんが、彼らはストレスに対する抵抗力が弱いので、おそらく養育環境のゆがみを直接受けてしまうのだといわれています。

 

 

 

 

また抜毛癖は、爪かみと同様、不注意優勢型のADHDに多いので、半覚醒・半睡眠の状態にある自分の脳を覚醒させるために自己刺激的におこなっている自己投薬の一種なのかもしれません。

 

 

 

 

アスペルガー症候群と適応障害

 

 

 

 

自閉症スペクトラムは社会性の障害と固執性を特徴とする状態ですが、そのなかでも知能が正常で、言語的な発達に遅れが見られないものを、アスペルガー症候群と呼んでいます。

 

 

 

 

アスペルガー症候群は、能力的には他の人に遜色のないどころか、特定の領域については誰にも負けないような興味と知識を備え、専門分野で秀でた能力を示すことも多いです。

 

 

 

 

人を扱うのは苦手でも、物や数字を扱うのは得意で、また日常的な会話はぎこちないですが、抽象的な言葉を駆使するのには長けているということもしばしばあります。

 

 

 

 

そのため、IT技術者やエンジニア、研究者などとして活躍する人も多いです。ただ、対人関係の面で消極的であったり、うまく周囲と協調できずに孤立したりしやすいです。

 

 

 

 

また固執性が強く、興味が狭い傾向もあり、双方向のコミュニケーションをしたり、妥協をはかったりするのがうまくできず極端な反応をしてしまい、自分で自分を追い詰めてしまう場合もあります。

 

 

 

 

神経が過敏な傾向もあり、ストレスを受けやすいです。こうした特性のため、せっかく優れた才能を持っていても、それがなかなか活かされず適応障害を起こすケースが増えています。

 

 

 

 

企業としても、こうしたタイプの才能がうまく活用できず、うつ病などにしてしまい、つぶしてしまったのでは、将来の発展を阻害することにもなります。

 

 

 

 

なぜなら、このタイプの人たちこそ、もっとも専門性と独創性に富み、飛躍とブレークスルーをもたらす人たちだからです。

 

 

 

 

このタイプの人をいかに上手に使いこなすかが、企業にとっても大きな課題となっています。

 

 

 

 

そこで必要になってくるのは、企業の仕組みに彼らを合わせようとするのではなく、このタイプの人の特性を踏まえた上で、企業の仕組みを彼らに合わせていくことです。

 

 

 

 

シリコンバレーでは、自閉症スペクトラムの有病率は一割を超えるという数字も示されています。

 

 

 

 

これは、その地区の児童の有病率です。IT企業で働く人ではもっと高いでしょう。

 

 

 

 

彼らが破綻なく働けているということは、それらの企業での環境が、このタイプの人にとって働きやすいものとなっているということです。

 

 

 

 

その代表的な仕組みとして、フレックス・タイムやSOHOスタイルの働き方が挙げられます。

 

 

 

 

また、業績評価の方法を、主観的なものではなく客観的な評価にするということも重要でしょう。

 

 

 

 

他の社員や上司に好かれるとか嫌われるとかではなく、いくら数字をあげられたかという点で競争させたほうが、このタイプの人にとっては受け入れやすいからです。

 

 

 

 

その点、日本企業も徐々に変わり始めているとはいえ、まだ横並び意識が強く、平均的な能力を求めがちです。

 

 

 

 

偏った能力を活かす体制は、まだまだ不十分だといえるでしょう。このタイプの人が適応障害を起こさずにうまくやっていくためには、社会性の面での弱い部分と固執性や過敏性という特性を理解した対応が重要になります。

 

 

 

 

家庭や学校においてであれ、企業においてであれ、基本は同じです。社会性の面での弱点を補うためには、コミュニケーションを促したり、助けたりする存在が重要になります。

 

 

 

 

大学での研究室ではメンター(本人を精神的にも支える教育係)の制度を取り入れているところが多くなっていますが、メンターやバディ(先輩として面倒を見たり、アドバイスをする存在)といった役割を担う存在が、困ったことがあればすぐに相談にのって助言を与えたり、調整に乗り出したりすることが、破綻を防ぐうえで非常に有効です。

 

 

 

 

メンターやバディが安全基地としてうまく機能すれば、それだけで、彼らは安心して過ごすことができます。

 

 

 

 

医療機関などでカウンセラーがそうした役割を担うこともできます。もちろん、彼ら自身の社会的能力を高めることも重要です。

 

 

 

 

その能力がないというよりも、社会的なかかわりに関心が乏しいため、訓練をおこたってきたという面が強いように思います。

 

 

 

 

 

実際、社会的なスキルが非常に低いと思われる人でも、そうしたトレーニングを行うと、顕著に変化する例を多く見てきました。

 

 

 

 

もうひとつの課題は、固執性や過敏性です。まずは本人が安心でき、ストレスが減らせる環境を整えることを優先すべきでしょう。

 

 

 

こちらが本人に合わせる努力をします。秩序だった生活のルールや仕組みを作り上げ、それをあまり乱さないように一つの流れとして行っていきます。

 

 

 

 

そして安心感が十分に育まれてきたら、少しずつ変化する余地を増やして、決まりきったパターンから徐々に幅をもたせるようにこころがけていきます。

 

 

 

 

思春期以降、本人は自分の傾向を自覚するようになり、意識的にそれを変えていこうとする時期がやってきます。

 

 

 

 

目覚めの時期です。個人差がありますが、自分をかえたいという気持ちをもつようになれば、それは変化の大きな原動力となりますので、その気持ちを活かす方向に働きかけやトレーニングを行っていきます。

 

 

 

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