不登校の歴史を振り返ることは、ひきこもりの問題を考えていくためのヒントになる
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不登校の歴史を振り返ることは、ひきこもりの問題を考えていくためのヒントになる

不登校の歴史を振り返ることは、まだまだ解決の糸口が見えてこない、ひきこもりの問題を考えていくためのヒントになるのではないかと思います。

 

 

 

 

1980年代半ばごろから、不登校の子どもたちが急増してきて、精神科医やカウンセラーや支援者のもとにも相談に来るようになりました。

 

 

 

 

はじめ、何もわからなかったこれらの人たちは、不登校の子どもたちを、それぞれ個人の問題、病理として医学的なモデルから治そうとがんばりました。

 

 

 

 

そのため、うつ病や統合失調症に用いる薬を投与したり、家庭内暴力の子どもたちを精神科に入院させたりしました。

 

 

 

 

しかし、その結果は惨憺たるものでした。医者と当事者、親とが三つどもえとなり、不信を募らせて互いを傷つけたり、葛藤を強めるだけの多くの不幸な結果を招いてきました。

 

 

 

 

当時は、問題解決の専門家と見なされる人たちにあまり経験や知識が無く、危険性があったのです。

 

 

 

 

そして、不登校の人たちと接していくことで、精神科医やカウンセラーや支援者自身が少しずつ多くのことを学び、変えられてきました。

 

 

 

 

そういう点では、不登校の人たちの存在は、親や周囲の人たちを変えていく力を持っていたと思います。

 

 

 

 

それは一人ひとりの病理としてではなく、あるいは、どちらが正しいか間違っているかという価値判断の問題でもなく、みんなと違う生き方を模索する大きな新しい流れとして、この社会に生まれてきた現象としてあったのです。

 

 

 

 

ひきこもりの問題についても、「あいつらはおかしい、変だ」という個人の病理や価値判断の問題にしていくと、また不登校問題のように不幸な歴史を繰り返すことになってしまうのではないかとの危惧があります。

 

 

 

 

特に、そういう発想にしばられた専門家と呼ばれた人たちが、どれほど多くの誤った対応をしてきたのかという事実を謙虚に受け入れ、そのことを忘れてはならないと思います。

 

 

 

 

ひきこもりの問題は、まだまだわからないことが多くて、まだ誰もその答えを持っていないと思います。

 

 

 

 

そういう意味では、ひきこもり問題の専門家はどこにもいないし、そういう専門家を求めておすがりすれば解決できるものではないのです。

 

 

 

 

では、誰を頼ればいいのでしょうか。今のところはっきりしているのは、どこにもひきこもりを解決してくれる専門家はいないし、誰も頼れないということだけです。

 

 

 

 

関東自立就労支援センターにも、ひきこもりやニート・不登校の相談が毎日のように来ていますが、けっして特別な「処方箋」をもっているわけではありません。

 

 

 

 

ただ、話を聞いて、いっしょに悩んで、少しずつ行動範囲を広げていく作業ができるだけです。

 

 

 

 

でも、ただ手をこまねいていればいいのでしょうか。何もできることはないのでしょうか。

 

 

 

 

アルコール依存症や薬物依存、ギャンブル依存、あるいは拒食症・過食症、アダルトチルドレン(機能不全の家庭に生まれて、生きにくさをかかえた人たち)などの問題では、そういう問題に苦しむ当事者たちが集まって、あちこちで自助グループを立ち上げて、自分たちの問題を自分たちで取り組んでいこうとする動きが活発になっています。

 

 

 

 

また、いままでは専門家の治療に任されてきた、うつや統合失調症の人たちの自助グループも生まれてきています。

 

 

 

 

事実として、アルコールや薬物依存の問題では、専門機関での治療を受けるだけよりも、こういう自助グループに参加した人のほうが、高い回復率を示す結果が出ています。

 

 

 

 

増え続ける新たな心の問題の領域では、旧来の専門家たちより、素人である当事者たちの自助グループの活動のほうがたしかな力を持ってきているのです。

 

 

 

 

ひきこもりの問題でも、当事者や親たちの自助グループが、全国各地にできて活動をしています。

 

 

 

 

まずは同じ問題を抱える人たちが集まって、一人ひとりが孤立することなくつながっていくこと、それがとても大切なことだと思います。

 

 

 

 

また、当事者だけの集まりだけでなく、ひきこもりの問題に関心を持つ民間のサポーターや医療機関、行政機関との連携も大切です。

 

 

 

 

わたしたちは「三つの輪のモデル」と呼んでいますが、まずひきこもり当事者のネットワーク、親たちのネットワーク、それに加えて民間や公的機関のサポーターたちのネットワーク、この三つのネットワークが、大きなゆるい一つのネットワークを形成していくこと、そういう動きが生まれてくるといいのではと思っています。

 

 

 

 

長い歴史を持つアルコール依存や薬物依存の世界では、そこから回復した人たちが、今度は同じ問題をかかえている人たちの支援者となっていくというシステムが作られたことから、有効な支援態勢が生まれてきています。

 

 

 

 

このような同じ問題を抱えた当事者たちが、誰よりも強力な仲間たちの回復の手助けを行っているモデルとしては、たとえば、アメリカの犯罪者たちの治療共同体である「アミティ」という組織があります。

 

 

 

 

「アミティ」は現在、アリゾナ州を中心にいくつかの州で活動を展開しています。

 

 

 

 

それらの州では、比較的軽い犯罪を犯した人は、裁判所から「アミティ」のプログラムを受けるように命じられます。

 

 

 

 

通常の刑務所に入るよりも、「アミティ」のプログラムを受けた人のほうが、はるかに再び犯罪に手を染める割合(再犯率)が下がるからです。

 

 

 

 

通常の刑務所での処遇を受けた人の再犯率が75パーセントといわれているのに対して、刑務所内での重大犯罪(殺人、強盗、強姦)を犯した人へのプログラムなども含めて、「アミティ」での回復プログラムを受けた人たちの再犯率は27パーセントと約3分の1にまで下がるという数字が出ています。

 

 

 

 

「アミティ」で活動している支援者は、元犯罪者です。なかには殺人などの重大犯罪を犯して終身刑を受け、服役中の人たちもいます。

 

 

 

 

そういう人たちがカウンセラーの資格を取って、今度は援助者として活動しているのです。

 

 

 

 

ひきこもりの問題においても、やがては元当事者やその親たちがもっとも強力な支援者となっていく可能性があると思います。

 

 

 

 

それをさらに外側からサポートしていくような民間や公的機関の支援が望まれます。

 

 

 

 

わたしたちも2002年の6月に、神奈川県内でひきこもり問題をともに考えていく民間のネットワークを立ち上げました。

 

 

 

 

その参加メンバーの多くは、各地で長年にわたり不登校・ひきこもりの親の会やフリースペースなどの活動をやってこられた方々です。

 

 

 

 

みなさん不登校やひきこもりの子どもを抱えた親の立場でもあり、また自助的なグループの一員として地域のなかで不登校・ひきこもりの問題の相談に関わってきた人たちが主体となっているネットワークです。

 

 

 

 

いうなれば不登校・ひきこもりの人たちやその親たちが安心して集まれる、地域での「峠の茶屋」を営んできた人たちです。

 

 

 

 

みなさん家庭や仕事を持っているごく普通の生活者ですが、自分の子どもさんたちが、不登校やひきこもりになったことによって、今の社会の論理とはまた違うもう一つの価値観を、まさに身をもって学んできた人たちの集まりです。

 

 

 

 

そういう方たちが集まって、地域で不登校・ひきこもりの親や子どもたちをサポートするコミュ二ティをつくってきました。

 

 

 

 

その存在は、きっと増え続けるひきこもりの人たちやその家族にとっても、安心できる場を提供できる人たちなのだと思います。

 

 

 

 

この民間の支援ネットワークは、こういう各地域に活動の根を持った自助的なグループが自主的に集まって、さらに互助的なネットワークを持とうとはじまったものです。

 

 

 

 

支援者というよりも、親たちという当事者を中心としたネットワークであり、そういう自助グループが互いに孤立することなく、互助的なつながりあうことで、今後さまざまな幅広いサポートを展開していくことができるのではないかと感じています。

 

 

 

 

わたしたちは、これからのひきこもりサポートモデルを考えていくうえで、専門家や公的な機関は主導して上からの支援を行うという形ではなくて、こういう地域に根ざした当事者や親たちの自助グループが今後各地域に生まれていき、それが互いにつながりあっていくという形が、ひきこもりの問題でもっとも有効なのではないかと考えています。

 

 

 

 

ひきこもりのサポートの問題を考えていくうえで、どうしても強調しておきたいことがあります。

 

 

 

 

専門家や公的な支援機関がついやってしまう危険な発想に、「自立」や「社会復帰」という錦の御旗をかかげてしまうということがあります。

 

 

 

 

自立や社会復帰を望みながら、それができない自分を責めている人たちに対して、そのようなスローガンをつきつけることは、彼らをさらに崖っぷちへと追い込むことになってしまいます。

 

 

 

 

残念ながら、わたしたちの社会は、心身の障害を持つ人たちにやさしくありません。

 

 

 

 

心身の障害を持つ人たちは、多くは生きるだけで精一杯であることが多いのに、なぜか、この社会はそういう人たちにさらに追い討ちをかけるように、「社会復帰」などという重荷を背負わせようとします。

 

 

 

 

専門家が軽々しく口にする「社会復帰」の意味するところは、病院や施設から外の社会へ放り出し、あとは知らんぷりをすることだったりすることなのではないかと思うこともあります。

 

 

 

 

そうなると、「みんなと同じようにしろよ」というただの脅迫にすぎなくなってしまいます。

 

 

 

 

ひきこもりのサポートにおいても、そういう中身のない「自立」や「社会復帰」という脅しを用いないことが大切です。

 

 

 

 

ひきこもり問題の本質は、孤独や孤立にあります。たとえ、学校に行っても、仕事についても、その孤独や孤立が解決されるわけではないのです。

 

 

 

 

優先されるのは、就労よりも、仲間をつくることです。まずは「自立」や「社会復帰」という空虚なスローガンを捨てたところから、サポートははじまるのではないでしょうか。

 

 

 

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