不登校のわが子~ある父親の述懐~
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不登校のわが子~ある父親の述懐~



 

Mさんは、プロフェッショナルなセラピストとして活躍していますが、父親として10年前の息子さんの不登校の体験を語ってくれました。当時、小学6年の息子が「学校に行きたくない」と言い始めたんですよ。わけあって転居し、小学5年の3学期から本人も新しい学校に転校することになって、その4ヶ月くらいしてから、小学6年の5月のことでした。

 

 

朝になると泣き出して、はじめのうちは母親がどやしつけて学校に送り出していたんですが、1週間あまりするとそれもできなくなって、わたしが車に乗せて学校の前まで連れて行くことになりました。



ご多分に漏れず(?)、わたしも世間の親たちといっしょで、このまま休ませたらずっと学校に行かなくなっちゃうんじゃないかって、そんなことが心配になっちゃったりしまして・・・・。専門家としてアドバイスするときだったら、子どもが嫌がっているのに、無理強いしてはいけないとか、もっともらしいことを言うんでしょうけど、実際その場に親子で向き合っていると、そんなきれい事では済まないんですよね。



やっぱり親としてはわたしも素人の親だった、とまあ、つくずくそう思いますよ。妻に言われたわけでもなく、このわたしが「いい、俺が連れて行くから。ともかく車に乗れ」と、ベロベロに泣いて嫌がるわが子を追い立てるように車に押し込んだんですよ。「いま行けばまだ間に合うんだから」とか「いやなら帰ってくればいいんだから、とにかく車に乗れ」とか言いました。

 

 

学校まで歩いて10分もかからない距離ですから、車だったら2~3分ですよね。でもその2~3分間、ただ後部座席のわが子のわーわー泣いているのが聞こえていたこと以外、途中に一ヶ所ある信号がどうだったか、どうやって学校に着いたのかさっぱり覚えてないんですよ。



そうやって、学校の門の前に着いたあたりで、「ほら、着いたぞ」「今なら何ともないから」「遅刻ではないし、間に合うから」と繰り返したものの、いっそうひどく泣き出すばかりだったですね。そこで車を止めていたのは、ほんの数十秒のことだったはずですが、それでわたしもあきらめました。

 

 

そしてそこで、親がわが子に伝えなければいけない言葉、いつもわたしが相談に来る親に向かってこう言ってあげてくださいと言っている言葉を言ったんですよ(職業はセラピスト)。



でも、これがまず、すごく大変でした。「そうか、学校に行きたくないんだ。じゃあ、家に帰ろう」・・・・・この一言をのどから絞り出すのが、これほど苦しいものなのかって・・・・・・。うーん、自分自身の中で何かがガラガラと崩れ去っていくというか、そんな感じですよね。そして、ほとんど何が見えているかわからないまま、車を発進させて家に戻ってきました。

 

 

そのときのわたしは、目は開いているものの何も見えていない、そんな状態だったと思います。そんな状態で車を運転し、途中の信号が近づいてきたあたりで、後ろから息子の声が聞こえてきたんですよ。



「ねえ、お父さん、僕って変な子かなあ」・・・・・・これが決定打、KOパンチでしたね。「何てこと聞いてくるんだ」と思って、心臓はドッキンドッキンで、もう、頭の中の脳みそがぐらんぐらんと煮え返るような、そんなぐっちゃぐちゃの気分でした。ただ、そのとき信号が青で、その信号を右折しなければと必死だったのを覚えています。その右折の前か後か、曲がりながらかわかりませんが、息子に言ったんですよ。



「おまえは、嫌なときに嫌だって言えるんだから、いいんだ。ちっとも変じゃないよ」と言ったんですが、とってもこんなストレートには言えません。漢字混じりじゃないですね、ひらがなで一文字ずつ押し出すような感じですね。のどが詰まるような、その詰まるのどの隙間から力いっぱいでようやく絞り出すような、あの苦しさは今でも忘れられません。ものすごいエネルギーのいる作業ですね。専門家としてある程度はわかっているつもりだったんですけど、甘かったですね。現実にはまったくわかっていませんでした。



こんなたいへんなこととは思ってなかったです。いつ思い起こしても、今こうして話していても、息苦しくなる感じがしてきます。気分だけではなく、身体が反応しますね。これは一生消えることはないでしょうね。相談を受ける中で心理教育と称して、えらそうに子どもとの関わり方のレクチャーをすることがありますが、そのとき以来、相談に来た親御さんたちにいつも申し訳ない気がしていますね。



だって、こんなに苦しくって、難しいことをやってくださいなんて、プロだったらもっと簡便なやり方を工夫するべきじゃないのかってね。でも、他にやりようもなくて・・・・・・。だから、こんな言葉を実際に子どもにも言えたという話を聞いたりしたら、そうですね、うれしいというより、むしろ「よく言えたなあ」と尊敬する気分ですね(フーとため息)。

 

 

全体で、三週間ほどでしたが、あれはあれでやっぱりわが家の危機だったんでしょうかね。その息子も、もう22歳になっちゃいましたね・・・・・。

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