ひきこもり・ニートの社会復帰に近道はない
ひきこもり・ニートの社会復帰支援や治療に際して、まず確実にいえることは、相談が持ち込まれたときには、状況がかなりこじれてしまっているということです。いったんこじれてしまった場合は、もはや周囲がどのように働きかけても、好ましい変化は起こりにくくなっています。
それどころか、働きかけること自体が、本人を追い詰める結果になってしまいがちです。ですから、まず家族が理解しなければならないのは、このような状態から短期間で立ち直らせる特効薬はないということです。
ともかく、じっくりと腰をすえて取り組むほかはありません。しばしば、家族や支援者の励ましや適切なアドバイスによって、一気に立ち直ったかのような事例が紹介されます。
しかし、わたしたちの経験では、このような「美談」は、ありえないとまではいいませんが、まったく例外的なものです。そうでなければ、そうした励ましの効果は一過性のことが多い気がします。
一般的にひきこもり状態からの立ち直りには、短くても半年、平均して2~3年以上の時間が必要となります。もちろん、これはあくまでも、適切な対応がなされていた場合の話です。
ひきこもりをはじめとする思春期の問題に対しては、「周囲がどれだけ待つことができるか」が、その後の経過を大きく左右します。したがって家族の基本的な構えとしては、「本人の人格的な成熟を、ゆっくり伴走しながら待ち続ける」ことが必要となります。
「焦り」は何ももたらしません。むしろ、慢性的な焦りこそが「ひきこもりの悪循環」を強化してしまいます。希望を捨てずに待つという姿勢は、それ自体が本人に好ましい影響をもたらします。
「待つ」ということはまた、冷静に構えるということでもあります。
本人の言動や、わずかな状態の変化に一喜一憂せず、長期的展望を持ってどっしりと構えることが大切です。
家族がまず、専門家に相談すべきなのは、こうした展望をしっかりと確保するためでもあります。つまり「ひきこもりは簡単には治らない」ということと、「粘り強く十分に対応を続ければ、必ず改善する」ということの2点を、深く理解するためです。
ひきこもりの支援や治療のなかでときどき起こることですが、本人がある日突然、理由もなく活動的になったり、意欲的になったりすることがあります。こんな場合に「やっとやる気を出してくれた。」などと、手放しで歓迎すべきではありません。
思春期に起こる急激な変化は、しばしば精神疾患のはじまりを意味していることが多いからです。一見よい変化に見えたとしても、理由や方向がはっきりしないものであるなら、むしろ十分に注意しなければなりません。
もちろん、ただ待てばよいというものでもありません。変化を待ち受けつつも、水面下での絶え間ない努力が必要です。家族間の意見調整や、家族だけの治療相談なども欠かせません。そして同時に、本人が症状を通じて何を訴えようとしているかを、しっかりと見極めることです。いたずらな干渉をひかえて、暖かく見守り続ける姿勢が大切なのです。
焦らず、慌てず、あきらめず
引きこもりや不登校に自分の子どもがなってしまうと、本人は当然として家族も不安になるものです。なにが不安なのかといえば、同世代から孤立してしまう・・・・というものではないでしょうか。
本来はそこに帰属すべき同じ世代から置き去りにされてしまう不安、といってもいいかもしれません。ですから、家族は「なぜこうなったのか」と、ことの本質と向き合う前に、ともかく「同世代の人間関係に早く復帰してほしい」という願いが先行してしまい、焦ります。
そしてその「方法」や「手段」を模索します。しかしなかなか思うようにはいきません。すると親子の間に不信と混乱だけが残ってしまいます。ついには疲れ果て、突き放したり、絶望感にうちひしがれ、子どもへの関わりを希薄化していく親御さんは多いものです。
がんばりすぎて、燃え尽きて、力尽きてしまうのです。子どもたちは不安にさまよう気持ちを誰かに聞いて欲しいと願っています。弱音を安心して話せる場を日々求めているのです。
「なんとかしてほしい」と願う前に、子どもたちは自分の気持ちを知ってもらいたいのです。気持ちを知らずに、ただやみくもに「学校に行け!」とか「こんなことをしていたら将来がお先真っ暗だぞ」と脅され、励まされても、気持ちは少しも晴れないのです。
ただただつらい思いを募らせていくだけです。親や教師、大人たちが、呪文のように唱える言葉に、「がんばれ、しっかりしろ、がまんしろ」があります。この言葉には、「気持ちを聞いてあげる」というニュアンスは含まれていません。
子どもの背中を押すだけのニュアンスです。親や教師や大人が、子どもに対してこの言葉が口にでそうになったら、グッとこらえてください。そして、心の中で、こうつぶやいてほしいのです。「焦らず、慌てず、あきらめず」と。
それは親自身、教師自身への言葉です。24歳の引きこもる青年がこんなことを言っていました。「24歳の男ざかりのこの年齢に引きこもっていて、慌てず、焦らずにいられるはずがない。本人がいちばん焦っているんだ」引きこもったり、登校しない子どもたちは、一見なにもしていないように思われるかもしれません。
でも、本人はふれあいに焦り、いらだち、苦しんでいるのです。だから、周りの大人は、焦らず、慌てずあきらめずに子どもたちのことを見守ってほしいのです。
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