ひきこもりのさまざまな背景
ここではひきこもりのさまざまな背景について述べてみたいと思います。
ひきこもりの家族背景については、父親は大卒の会社員、とりわけ管理職が多く、母親も高卒かそれ以上で専業主婦というパターンが平均的で、多くは現代日本の中流以上の階層が占めています。
また離婚、単身赴任などの特殊家庭事情については、特に問題ないものが7割近くを占めています。
今まで支援してきた印象からみても、ひきこもりの事例の背景に、極端に破綻した家庭環境や、虐待などといった「大きな」問題が控えていることは少ないように思います。
むしろ「ひきこもり」が、さまざまな意味で日本のもっとも平均的な家庭にみられるという事実は、この問題が現代日本の社会病理と深いかかわりを持つことの証拠でもあります。
おそらくそれは「青少年の無気力化」といった、一種素朴な問題意識ではすくいきれない病理性ではないかという、漠然とした予感もあります。
兄弟については、本人も含めて2人以上が85.0%で、順位では第一子が60%と過半数を占めていました。
さらにこのうち、第一子長男の占める割合が49%となっています。
長男は第一子とは限らないため、長男だけの比率は確実に過半数を占めることになり、「ひきこもりは男性、とりわけ長男に多い」という推測は、あながち無根拠なものではありません。
長男に過大な期待がかかりがちな日本の社会的背景から考えても、興味深い結果と言えます。
ひきこもり状態にいたるきっかけについては、「不明」であるものがもっとも多く39%、次いで「家族以外の対人関係の問題」が38%、「学業上の挫折体験」が18%、「就学環境の変化」が10%という順になっていました。
最初にどのような症状ではじまったかについては、「不登校」がもっとも多く69%、ついでひきこもりの29%、無気力の25%となっていました。
またひきこもりの持続期間については、初診時点で平均23ヶ月間、評価の時点では平均39ヶ月間であり、もっとも長期のものは168ヶ月間(14年間)におよんでいました。
発症した時点での所属は「高1」が23%ともっとも多く、ついで「中2」、病院にはじめて受診した時点の所属は「所属なし」が45%と半数近くを占め、ついで「高1」「高2」の順でした。
この結果は、問題が生じてから相談機関を訪れるまで、年単位の時間がかかってしまうという事情を反映しています。
また本人の最終学歴は「中卒」がみっとも多く31%、ついで「高卒」29%、「高校中退」18%となっており、現在の職業については「無職」がもっとも多く48%、次いで「学生」が44%という結果でした。
ひきこもりの発症のきっかけで、明らかなものとしては「学校関係」が大半を占めています。
発症時平均年齢は15.5歳ですから、彼らの多くは問題が起こった時点では学生であり、これは当然の結果と言えます。
したがって、最初の「症状」として、いわゆる「不登校」が7割近くの事例で認められたこと、また経過中に起こったものをすべて含めるなら、9割近い事例に不登校を伴っていたことは重要です。
不登校は思春期・青年期における不適応のサインとして、あるいはなんらかの精神疾患の初期症状としてきわめて重要ですが、この結果はそれを裏付けるものです。
いわゆる不登校の予後調査はこれまでにいくつかの報告があります。しかし予後不良の群についての十分な追跡調査は、ほとんどなされてきませんでした。
この調査には、経過の思わしくなかった不登校群の予後調査という側面もあるように思われます。
ともかく、一部の不登校事例がひきこもり状態として長期化の経過をめぐり、ひきこもりの経過が長くなるほど社会復帰が困難になるという事実は、軽視されるべきではありません。
子どものサインをどう見抜くか
少年犯罪の増加から、最高裁判所は少年たちが起こした事件を分析した研究結果をまとめました。
それによると、犯罪を起こす少年には必ず前兆があるそうです。
その前兆は、自傷行為や自殺願望など追い詰められた心理を反映したものだといいますが、不登校も引きこもりも、大きな犯罪を起こす少年の前兆行動と捉えることができます。
もちろん、不登校や引きこもりのすべてが犯罪へ向かうわけではありません。
拒食症などの摂食障害にも必ず前兆があるといいます。では、不登校にはどんな前兆があるのでしょうか。
それは人間行動のパターンから推察することができます。
人間が何か行動を起こすときにとる態度は次の4つに限られます。
1、すぐにやる
2、引き伸ばす
3、避ける
4、拒否する
朝起こしてもなかなか起きてこないのは「引き伸ばし」の前兆かもしれません。
それがだんだんひどくなり、「学校を休みたい」と言い出したら、「避ける」が始まりつつある状態です。
この状態がさらに進むと不登校になります。表面に現れる行動には差があり、仮病を使ったり、いろいろ理由を並べるようになります。
ところが、こうした変化に気づかない家庭があります。その理由ははっきりしています。
一家団らんが少なくなってしまったからです。
一日一回でも家族全員が顔をそろえる場があれば、親は子どもの異変を見逃すことは少ないはずです。
生活サイクルが昔とは違ってきているので、毎日家族全員が顔をそろえるのは難しいかもしれません。
だからこそ、可能な限り一家団らんの場を作るよう親は努力してほしいと思います。
それができれば、特別優れた観察眼の持ち主ではなくても、子どもの変化にはきっと気がつきます。
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