ひきこもりと力支配
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ひきこもりと力支配

引きこもる子どもを持った親に対して、「そんなふうに自室にこもらせているから、いつまでたってもよくならない。

 

 

 

 

自室からたたき出さないとだめだ」と見るのが力支配の考え方です。「そのくらい厳しくしないと、そんな連中はよくならない」といった恐怖による力支配に共感する意見は、現代社会ではかなり根強いと思われます。

 

 

 

 

同様に、親のほうにも、しごき訓練は効果があると思っている人がおそらくかなりいるでしょう。

 

 

 

 

一日中続く激しい家庭内暴力のなかで絶望し、最後の望みとして力支配であるしごき訓練の効果を信じて、それにすがりつく親が絶えないのは想像できないことではありません。

 

 

 

 

だから、力支配を行う施設は今もなくなりません。1987年には埼玉の私塾「不動熟」で、逃亡した少年が連れ戻されて塾長とほかの塾生に殴り殺される事件がありました。

 

 

 

 

1991年には広島県三原市の私塾「風の子学園」で園長から虐待を受け続けた末、コンテナに監禁された少年と少女が死亡しています。

 

 

 

 

近年でも2006年に、NPO法人「アイ・メンタルスクール」で入寮者の男性を監禁・死亡させた事件が、2008年に「丹波ナチュラルスクール」で入所中の中学生への暴行事件が発生するなど、事件や犯罪行為が後を絶ちません。

 

 

 

 

力支配の集団訓練施設では、「ひきこもりを2時間で治す」などとうたっているところもあります。

 

 

 

 

わたしはそのようなことを喧伝できるのは、この問題の基本的なことをまったく理解できていない証拠だと考えます。

 

 

 

 

10年以上、ときには何十年にわたる生き方のひずみや、親子関係を中心とした人間関係のひずみは、潜在意識にしっかりと条件付けられています。

 

 

 

 

そのことによって当事者は、過剰なストレスをため続けてきたのです。「状態がよくなる」のは、その潜在意識が溜め込んできたものがほぐれだすことによって、生命活動が高まるからこそ元気になるのです。

 

 

 

 

たとえ、ひきこもって考え続けても潜在意識は変わりません。当然ながら恐怖でしごくことによってもそれは変わりません。

 

 

 

 

よけいにストレスが増え、生き方がひずむだけです。生き方を変えることは、とても難しいことなのです。

 

 

 

 

元気になって、自発的な行動が増えるには、かなりの年月がかかります。だから、ひきこもりの人が動き出せるようになるには、長期間かかるのが現実です。

 

 

 

 

そこに、先のような「速効性」を売り物にする力支配的な施設が出てくるのでしょう。

 

 

 

こういう施設の特徴は、まず費用が高額であることです。次に、カギ部屋の存在や、入所時に車に無理やり乗せるなど、監禁・拘束まがいの手法が横行していることです。

 

 

 

 

また、親が入所中のわが子に会いにくることを歓迎せず、拒否するところもあります。

 

 

 

 

ひきこもりの人に対する親の影響力はとても大きいので、親と本人の関係調整に協力することは、もっとも重要といっていいほど大切なことです。

 

 

 

 

しかし、そういう基本的な理解すらできていないのです。大金を投じて施設に預けたら、「すばらしい人間にして返してくれる」という、そんなうまい話はありません。

 

 

 

 

親以上の真剣さで第三者がやってくれるわけはないのです。たとえどんなに真剣であっても、どう対応したらよいかがわからなかったり、不適切な対応をしてしまったりすることがあります。

 

 

 

 

そこを手伝うのが、カウンセラーなどの専門家の役目なのです。カウンセリングについては、力支配の施設でも、「カウンセリングを行う」とうたうところが多いのですが、本来、カウンセリングは力支配とは対照的な手法です。

 

 

 

 

力支配的な人がカウンセリングを行うことは困難ですから、実際のところは「説教」をしたり、一方的に自分の考えを押し付けたりしているのかもしれません。

 

 

 

 

力支配への崇拝や傾倒は、ひきこもりなどの問題を抱えた子どもの集団施設だけでなく、古くは軍隊、戦後もスポーツの世界などで見られます。

 

 

 

 

それは、ハードな訓練、すなわちしごきが根性を鍛え人間を成長させるといういわば「根性論」です。

 

 

 

 

高校野球などもかつては厳しい根性論スポーツのイメージがありましたが、ある監督が「以前は厳しい練習をしていたが、今は選手たちに任せている。

 

 

 

 

やってみると、そのほうが効果はあがる」と言っていました。ほかのいろいろなスポーツの練習でも、楽しく練習することで効果を上げているケースが増えているようです。

 

 

 

 

企業においても、社員教育として「地獄の特訓」といわれるような過酷な訓練がありましたが、今はコーチングのような個人を尊重し、個人の考える力を育てる手法のほうが注目されているようです。

 

 

 

 

もちろん、元気な人が自らハードな訓練を受けるのは自由です。ひきこもりの人でも、自分から「お遍路に行きたい」と言い出し、ひとりでやり遂げた体験によって、自信を取り戻した人がいました。

 

 

 

 

しんどさがありながらも、自発的にやり遂げようと実践し続けるなかで、気づかないうちに、精神的なプラスのエネルギーが働き出したのです。

 

 

 

 

しかし、この例を聞いて、ひきこもりの人を強制的に遍路に行かせても、回復しないでしょう。

 

 

 

 

自発的にチャレンジした場合と、強制され恐怖に支配されてやった場合とでは、効果はまったく違うのです。

 

 

 

 

力支配の強い集団訓練施設では、ほとんどの人は親によって参加させられるのであり、自分から入所を希望したのではありません。

 

 

 

 

親にだまされて施設の迎えの車に乗せられてしまうケースさえ少なくないのです。

 

 

 

 

学校に行くのに恐怖を感じている人が、「学校へ行かないと殺される」というそれ以上の恐怖を感じれば、学校に行くことがあるかもしれません。

 

 

 

 

しかし、それでひきこもりから回復したとは到底いえないと思います。心の傷ついた人に必要なのは癒しです。

 

 

 

 

極端な根性論によって恐怖で力支配する訓練は、一時的に動き出すことはあっても、長い目でみれば状態を悪化させるだけなのです。

 

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