ひきこもりとお説教
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ひきこもりとお説教

ひきこもり状態にある人と、きちんと向き合うことはきわめて困難なことです。

 

 

 

 

なぜなら、わたしたちは基本的に「働かざるもの食うべからず」という価値観が、骨がらみに染み付いているからです。

 

 

 

 

このためわたしたちがとってしまいがちな態度は、ひきこもりを最初から「否認・否定」する態度です。

 

 

 

 

つまり、まさにそこにいるにもかかわらず、何もないふりをすることです。その結果の一つが、彼らに対する「叱咤激励」ということになります。

 

 

 

 

もう15年以上もひきこもりの社会復帰支援を行ってきたわたしたちですら、しばしば「お説教」や「議論」の誘惑に負けてしまいそうになります。

 

 

 

 

それどころか、時には「彼らは甘えている」「怠けている」「権利を主張しつつ責任を回避している」「両親に責任転嫁している」などといった、どこかで聞いたような紋切り型が、ふと頭をよぎることすらあります。

 

 

 

 

ひきこもりの人と向き合うためには、まずこうした社会通念、言い換えれば「ひきこもりを否認したい衝動」と戦わなければなりません。

 

 

 

 

そのために重要なことは、「ひきこもり」という状態が、ともかくそこにある、という事実を認めることです。

 

 

 

 

言い換えるなら、ひきこもりの人たちが「人として間違ったあり方をしている」という見方をしてはならないのです。

 

 

 

 

そうではなくて、彼らが何らかの形で援助や保護を必要としている、という視点を受け入れることです。

 

 

 

 

お説教や議論、時には暴力などによってそれを「否認」するやりかたは、失敗する可能性がきわめて高いことを、ここであらためて強調しておきます。

 

 

 

 

子どもにプレッシャーをかける親の過剰な期待

 

 

 

 

不登校やひきこもりの状態に陥る子どもたちの家庭における特徴の一つに、親の過剰な期待があげられます。

 

 

 

 

そして、その内容はほぼ決まっています。

 

 

 

 

よい学校を出て、よい企業に就職する、あるいは高級官僚や医者、弁護士など社会的なステータスの高い職業につくこと、つまり社会のエリートを目指すことです。

 

 

 

 

こうした親の期待に押しつぶされてしまった子は数え切れないでしょう。

 

 

 

 

ですが、もう一つ問題なのは、親のほうは一つもその種の期待を抱いていないにもかかわらず、子どもが一方的に「期待されている」と思い込んで、自ら押しつぶされてしまう場合です。

 

 

 

 

「わたしは一度も過剰な期待などかけたことはありません」こう言って、困惑するお母さんも珍しくありません。

 

 

 

 

たしかに母親の気持ちはそうかもしれません。

 

 

 

 

しかし、戦後の日本はずっと学歴偏重主義できましたから、ちょっとした親の態度に子どもは過剰反応して「親はそう望んでいるのだ」と思い込んでしまうことは大いにありえることです。

 

 

 

 

ここで事例を紹介してみようと思います。二男一女の三子を持つ母親がいます。

 

 

 

 

三人とも学業成績がとても良いです。長男は自由闊達なタイプで、学歴主義にとらわれず、らくらく入れる私立高校、私立大学に進んでジャーナリストになりました。

 

 

 

 

長女も長男と似たようなコースをたどりました。

 

 

 

 

「一人くらい国立の大学へ入ってもらいたいわ」長男が大学へ進んだ頃から、母親はよくこう言うようになりました。

 

 

 

 

たまたま有名進学校へ進んだ次男は、母のこの言葉を「自分に向けられた期待」と思い込むようになったのです。

 

 

 

 

しかし、次男の資質はどちらかといえば芸術家肌で、受験勉強向きではなかったため、結局は挫折して不本意な大学へ進み、一年で中退してしまいました。

 

 

 

 

それ以来、ろくに働きもせずに、親に寄生する生活を続けています。

 

 

 

 

引きこもりではありませんが、友人はほとんどおらず、母親に時々暴力を振るっているようです。

 

 

 

 

何度か精神科にも通院しました。軽い気持ちで言った母親の言葉を真に受けたことで、彼は人生を大きく踏み誤ってしまったようです。

 

 

 

 

わたしはこのお母さんのことをよく知っていますが、けっして学歴にこだわるような方ではありません。

 

 

 

 

三人子どもがいて、みんなすごく優秀だったら、「一人くらい国立の有名大学へ・・・・」と思うのは、ごく自然な成り行きで、過剰期待とは言えませんが、この程度でも押しつぶされてしまう子どももいるのです。

 

 

 

 

ひ弱と言ってしまえばそれまでですが、親の思いを子どもが間違って受け取っているなと思ったら、「そうではない」ことを、はっきりメッセージとして子どもに送らないと、子どもは誤解したまま迷路に踏み込んでいってしまうかもしれません。

 

 

 

 

親の中途半端な態度は、子どもを困惑させる

 

 

 

 

ひきこもりの子どもを持つお父さんとお母さんを見ていると、みんな優しくて子どものことを本当に心配しています。

 

 

 

 

また、子育てはどんな親でも試行錯誤の中で行われることがほとんどです。

 

 

 

 

ですが、何か問題を抱えているようなときは、その問題に対する姿勢はあまりころころ変えないほうがよいと思います。

 

 

 

 

ここでは多重債務に陥った二十歳の青年のケースを紹介しましょう。

 

 

 

 

この青年は中学生くらいから不登校を繰り返していましたが、それでもなんとか高校を卒業して働くようになりました。

 

 

 

 

少し内気な性格ですが、いつもニコニコしていて優しい青年でした。

 

 

 

 

ただ一つ大きな欠点は、お金を安易に借りてしまう癖がついてしまったことでした。

 

 

 

 

借りたお金を何に使うのかは、親もしっかりとつかみきれていない様子でした。

 

 

 

 

でも借りる金額が十万、二十万円程度だったので、返済に窮すると親が尻拭いをしてあげていました。

 

 

 

 

しかし、あまり何度も同じことを繰り返すので、あるときお母さんはこう宣言したのです。

 

 

 

 

「今後はもう二度と援助はしてあげませんからね」そうしたら給料日の翌日に突然行方不明になって、一週間後に公園で自殺しているのが発見されたのです。

 

 

 

 

持っていたバッグの中から借金の督促状の束が見つかりました。

 

 

 

 

所持金は給料日から間もないにもかかわらず、百円足らずでした。親はこう言って嘆きました。

 

 

 

 

「初めからいっさい援助しないか、とことん面倒を見てあげればよかった。中途半端に厳しくしたことが悔やまれます」

 

 

 

 

不登校やひきこもりも同様ですが、親は一つの態度をとってしまったら、その態度をやたら変えないほうが結果的にはよいようです。

 

 

 

 

特に、甘やかして育ててしまったようなとき、急に厳しくしてしまうと子どもは絶望してしまいます。

 

 

 

 

自殺してしまったこの青年は、お母さんの宣言をストレートに受け入れましたが、自分の悪い癖は直せませんでした。

 

 

 

 

それでお母さんに顔向けできないと思ったに違いありません。

 

 

 

 

その弱さを非難するのは簡単なことですが、親の中途半端な態度はマイナスになりがちです。

 

 

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