ひきこもりが立ち直るために
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ひきこもりが立ち直るために

こじれきった慢性のひきこもり状態から、社会復帰に向けてどのようにして立ち直りをはかればよいのでしょうか。

 

 

 

 

この場合、おおざっぱに考えて、2つの段階があります。まず第一段階は、隣り合った2つのシステム同士の接点を回復することです。

 

 

 

 

すなわち、ひきこもり本人と家族、また家族と社会という、2つの接点が十分に回復されなければなりません。

 

 

 

 

そして第二段階では、ひきこもり本人と社会との接点をいかに回復するかが、はじめて問題になります。

 

 

 

 

このように書きますと当然のことのようですが、意外にこの順番は守られないのです。

 

 

 

 

 

しばしば見られるのは「個人」を、いきなり「社会システム」に結び付けようとして失敗するケースです。

 

 

 

 

たとえば、地方の全寮制の学校にひきこもり本人を強制的に送り込むこと、強引にアパートを借り、単身生活をはじめさせること、住み込みの職場を見つけ出して、無理に就職させることです。

 

 

 

 

これらは初期には軌道に乗るかに見えても、じきにひきこもり本人がつぶれてしまい、家族への深い不信を残すのみの結果に終わることが多いのです。

 

 

 

 

このような失敗を繰り返さないためにも、まず隣接するシステム間の接点を回復する作業からとりかかるほうが確実です。

 

 

 

 

 

 

「家族」と「社会システム」との連動は、比較的容易です。具体的には、両親が治療相談機関に赴いたり、あるいは家族会に参加したりすることです。

 

 

 

 

「ひきこもり問題」を家族の問題として抱え込むのではなく、社会との連携において考えるような、開かれた態勢を作ることが大切です。

 

 

 

 

次いで取り掛かるべきは、家族システムと個人システムの連動です。ひきこもっている本人とその家族が、どのようなかたちで接点を回復できるかが重要になってきます。

 

 

 

 

さらに具体的には、ひきこもり本人と家族との会話がまず可能になり、より親密でうちとけたやり方へ向けた働きかけの段階です。

 

 

 

 

わたしたちの経験では、この段階がもっとも困難で、時間がかかります。

 

 

 

 

こじれ、慢性化したひきこもり事例では、ひきこもり本人が家族と顔を合わせることも避けていたり、いっさい口をきかず、メモだけで意思表示するようなケースもあります。

 

 

 

 

しかし、いかに断絶が深いように見えても、この段階を抜きにして支援や治療は進展しません。

 

 

 

 

逆に言えば、この段階をどれほど手を抜かず丁寧に行うかによって、その後の経過がかなり違ってきます。

 

 

 

 

この段階はそれほど重要な意味を持っています。この段階をまっとうすることが難しいのは、問題とされるのがひきこもり本人と家族という関係に限らないからです。

 

 

 

 

支援や治療の中で、しばしば家族間のさまざまな価値観の相違や摩擦が問題化してきます。

 

 

 

 

もっとも多くみられるのは、母親だけが熱心で、父親や兄弟はまったく無関心か、単なる「怠け」として批判的に捉えているようなケースです。もちろんこの逆のケースもあります。

 

 

 

 

ここで改めて強調しておきますが、ひきこもりの社会復帰に際して、もっとも重要なことは両親のかかわりです。

 

 

 

 

死別や離婚といった例外をのぞき、両親間の一致した協力態勢を抜きにして、十分な改善は期待できません。

 

 

 

 

あるケースでは、ひきこもっている本人の姉が一人で気をもんでおり、両親は叱咤激励に明け暮れるのみ、という状況でした。

 

 

 

 

病院に通うのは必然的に姉一人です。私たちは姉に対して「きょうだいが関わりすぎることは、治療の役に立たないばかりか、双方のためにならないことが多い。あなたはこれ以上、本人の治療相談にタッチすべきではない。それよりはむしろ、自分の将来を考え、それに向けての行動をとるべきではないか」と答えました。

 

 

 

 

姉はわたしたちの指導を受け入れ、以後いっさい本人の治療に協力しなくなりました。PAK85_notetokakutei20140312230514500_TP_V1

 

 

 

 

その結果、両親がいやおうなしに通院をはじめざるをえなくなりました。

 

 

 

 

ささやかではあっても、これは一つの進展です。治療者・支援者は家族とねばり強く交渉しつつ、このような小さな進展を積み重ねていくよりほかありません。

 

 

 

 

このように家族間で意見の相違が大きい場合、ひきこもり本人とのコミュニケーションをはかる以前に、まず家族全体の協力態勢をある程度固めておく必要があります。

 

 

 

 

「ある程度」というのは、最初から万全を望めないためもあります。

 

 

 

 

また、治療が順調に軌道に乗ることで、はじめて両親の治療意欲が固まってくるという部分がどうしてもあります。

 

 

 

 

しかし少なくとも、「ひきこもり」が「怠け」とは違うこと、それが治療を必要とする状態であること、家族の協力が必要であるということ、この3点だけはしっかりと踏まえたうえで、対応をはじめることが望ましいです。

 

 

 

 

 

もし両親の間の葛藤が深刻で、どうしても意見がかみ合わないような場合は、本人の治療以前に、夫婦カウンセリングを勧めることもあります。

 

 

 

 

まず両親が変化を恐れず、困難に立ち向かう姿勢を示すことが大切です。

 

 

 

 

こうした両親の態度変更は、なからずひきこもり本人に伝わり、よい影響をもたらします。a0960_005103

 

 

 

 

以上のような態勢が整ったものとして、家族のひきこもり本人への対応を、どのように進めるべきでしょうか。

 

 

 

 

わたしたちは実際の事例においては家族の対応を段階的に行うことを勧めてきました。

 

 

 

 

「ひきこもりシステム」に即していうなら、いきなり接点を持とうとすること、つまりコミュニケーションを強要することは、いたずらに本人を刺激するのみであることが多いためです。

 

 

 

 

まず家庭環境を十分に調整して、本人が張り巡らしている「家族への防護壁」を徐々にやわらげていく必要があります。

 

 

 

 

家族の対応も、本人の状態の変化にしたがって、やはり段階的にすすめる必要があります。

 

 

 

 

ひきこもり本人は、周囲からの働きかけをはじめはまったく拒否することが多いからです。

 

 

 

 

こうした本人の抵抗感を、時間をかけて少しずつやわらげていく作業が、まずなされなければなりません。

 

 

 

 

ですから、第一の目標は「家庭の中でひきこもり本人の気持ちを安定させること」になります。

 

 

 

 

ひきこもりのほとんどが友人も少なく、長期間外出もしないような生活を送っています。

 

 

 

 

つまり、家庭こそが本人にとって唯一の居場所なのです。せめて家庭の中では、安心してくつろいでいられること、まずこのことが、その後の社会復帰をすすめる上で欠かせない前提となります。

 

 

 

 

そのためにはまず、ひきこもり本人の状態をけっして「怠け」と考えてはいけません。

 

 

 

 

家庭の中では本人の悩みや葛藤は目に付きにくく、ただ気楽にぶらぶらしているとみられがちです。

 

 

 

 

しかし、本人が感じているであろう引け目、挫折感、劣等感などは、しばしば周囲の想像を絶したものです。

 

 

 

 

叱咤激励が有害であることはさきにも述べましたが、いわゆる「正論」というものも、社会復帰に向けた治療や支援にはあまり役にたちません。

 

 

 

 

「20歳を過ぎれば社会的に責任がある」「働かざるもの食うべからず」「親が甘やかしたからこうなった、もう甘やかさない」「自分で稼ぐ年齢なのだから、小遣いは渡さない」。

 

 

 

 

いずれも、しごくまっとうな意見ばかりです。一つ一つはけっして間違った意見ではありません。

 

 

 

 

しかし、これらの正しすぎる言葉は、実際には本人を辱しめ、傷つけるだけです。

 

 

 

 

思春期の事例では特に「本人に恥をかかせない」ということを心がける必要があります。

 

 

 

 

「怠け」や「正論」の視点からは、本人を追い詰める発想しか出てきません。

 

 

 

 

「甘え」「わがまま」「自己中心的」という見方も同様です。しかし追い詰めるだけでは支援や治療にならないことは、いうまでもありません。

 

 

 

 

しかしそうはいっても、家族の不安の種はなかなかつきません。たとえば、「あまり家庭の居心地がよくなっては、外の世界に出て行けないのではないか」という心配が、しばしば聞かれます。

 

 

 

 

しごくもっともな疑問ですが、実はこのような意見は、ひきこもり本人の気持ちを十分に理解していれば、まず出てこないはずのものなのです。

 

 

 

 

ひきこもったままになることを恐れているのは、誰よりもまず、ひきこもり本人自身であるということを忘れてはいけません。

 

 

 

 

これは、ほとんどすべてのひきこもり事例についていえることではないでしょうか。

 

 

 

 

家庭の居心地がどんなによくても、この不安がすっかり解消することは、けっしてないでしょう。

 

 

 

 

つまり家族の心配はそのまま、ひきこもり本人の心配でもあるのです。

 

 

 

 

家族は「親の心子知らず」のように感じていても、本人はむしろ普通以上に、家族と同じ価値観を共有していることが多いのです。

 

 

 

 

親のお説教や「正論」が通用しないのは、一つにはこのためでもあります。

 

 

 

 

身にしみて判っていることをさらに諭されるのは、誰であれ不愉快ですし、反発したくもなるでしょう。

 

 

 

 

 

本人もまた、将来の不安を感じ、自分の状態を情けなく思い、しかしどうしていいのかわからないのです。

 

 

 

 

けっして気楽な身分でのんびり気ままに過ごしているわけではなく、不本意な思いを強く抱きながらも、社会に出て行けないのです。

 

 

 

 

こうしたつらさは、まず家族が共感的に理解しておくべきです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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