いじめっ子も不登校になる
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いじめっ子も不登校になる

クラスメイトを不登校に陥らせるようないじめっ子が、どのような人生を歩んでいるか、ご存知でしょうか。

 

 

 

 

学校では強者なので、その後も強者として生きていると思われがちですが、現実は違います。

 

 

 

 

彼らの大半は、歳を重ねるごとにうまく生きられなくなっていきます。その理由は、彼らが学校でいじめる側にまわったそもそもの理由と関係しています。

 

 

 

 

わかりやすく説明するために、かつてわたしのクラスメイトでもあったあるいじめっ子の事例を紹介しましょう。

 

 

 

 

彼は高校に進学したとたん、不登校からひきこもりになり、その後かなりの時間をかけてニートになってしまいました。

 

 

 

 

いじめっ子のL君は、不登校発ひきこもり経由でニートになった

 

 

 

 

L君は、幼稚園から中学までの間を某大学の付属校で過ごしました。施設に恵まれた大学のキャンパスで育ったL君は、中学に入ると外部から受験で入ってきた者たちをいじめはじめました。

 

 

 

 

その有様はえげつないほどすさまじく、ときには幼稚園来の親友が割って入って彼を止めるほどでした。

 

 

 

 

ですが、そんな彼にも転機が訪れました。付属高校以上は女子高だったので、外部の高校を受験する必要に迫られたのです。

 

 

 

 

彼の実家は開業医だったので、L君は当然のことのように有名私立大学の医学部を目指していました。

 

 

 

 

そのためには、その大学の付属高校に入るのが手っ取り早いのです。L君はその私立大学でいちばんと言われた付属高校に的を絞って受験しました。

 

 

 

 

ですが彼はその高校には合格できず、他県にある二番手の付属高校に入学しました。

 

 

 

 

そんなL君がノイローゼになって高校に通えなくなったという噂を聞いたのは、わたしがL君の自宅にほど近い都立高校に通い始めた最初の秋でした。

 

 

 

 

同じ私鉄沿線に自宅があるという理由で彼からいじめをうけなかったわたしは、高校が学園紛争でロックアウトされたのを機に、彼の実家を訪ねてみました。

 

 

 

 

ドアを開けて出てきたのは、目の下に深い隈を刻んだ母親でした。L君の母親は、「息子は学校に通えなくなったうえに、夏休み以来、部屋にとじこもったまま出てきません。

 

 

 

 

ですから、せっかく来てくれたけど息子に会うことはできません」と疲れきった顔でわたしに言いました。

 

 

 

 

そして困惑するわたしに小声で、「お願いですから、中学時代のお友達には息子のことは内緒にね」と言い添えました。

 

 

 

 

L君は高校に進学したとたん、不登校からあっという間にひきこもりになってしまったのです。

 

 

 

 

L君のその後は長い間、同窓生のだれひとりとして知りませんでした。ですが、ひょんなことからわたしは彼の消息をつかみました。

 

 

 

 

彼はその後、転校して不登校とひきこもりを克服し、どこかの大学を卒業したのですが、働き始めて数年で今度はニートになってしまい、再び自宅に閉じこもってしまいました。

 

 

 

 

L君が不登校になった理由は、いまのわたしにはよくわかります。付属校育ちで内弁慶だったL君は、猛者が集まる進学校であっという間に行き詰まり、不登校になってしまったのです。

 

 

 

 

また中学時代、受験のストレスをいじめることで発散してきたL君が、高校ではそれができずに行き詰まりを見せたと考えることもできます。

 

 

 

 

いじめっ子がいじめをはじめる背景には、ほとんどの事例で親との葛藤や、親か日常的に受けているプレッシャーへの不満が隠れているからです。

 

 

 

 

ですから発散先を失うと、さしものいじめっ子ももろいのです。彼がひきこもりになった理由も、いまのわたしにはかなりわかります。

 

 

 

 

彼の母親と医師である父親が、中学でも有名な職業差別主義者だったからです。

 

 

 

 

つまり「職業には貴賎があり、もっとも尊ばれて当然なのは医師である」と彼の両親は考えていたのです。

 

 

 

 

ですからそれを盲信していたL君は、医師への道が閉ざされると一気にひきこもりました。

 

 

 

 

学校というミニ社会で君臨していたいじめっ子が、別のミニ社会に入るといともたやすく不登校やひきこもりになってしまうことがあります。

 

 

 

 

ですから、現在いじめに悩んでいるあなたには、その意味で希望を失わないでほしいと思います。

 

 

 

 

なぜなら未来永劫続くいじめなどありはしないからです。それでも絶望に負けそうになったら、転校や休学など、奥の手をつかうこともぜひ考えてみてほしいと思います。

 

 

 

 

では、不登校者の三大プロフィールである「生真面目」組と、新種の不登校である「不真面目」組、そして「いじめっ子」組の三者は、なぜ素顔がまったく異なるのに不登校という同じ停滞に陥るのでしょうか。

 

 

 

 

「生真面目」組をひと言で表現すると「一方的な被害者」といえます。「新種の不登校」組は、「自業自得」組とも言い換えられます。

 

 

 

 

そして「いじめっ子」組は加害者です。彼らが不登校に陥る原因は、やはり彼らが持つ価値観にあります。

 

 

 

 

その価値観とは、「内なるものが持つ価値」と「外なるものが持つ価値」に対するものです。

 

 

 

 

「内なるものが持つ価値」とは、家庭や親が持つ固有の考え方のことであり、当人がその価値を肯定しているあいだはなんら問題はありません。

 

 

 

 

「外なるものが持つ価値」とは、家庭の外にある考え方や取り決め、常識などになります。

 

 

 

 

これも、当人がその価値を受け入れられ、納得できれば問題は発生しません。

 

 

 

 

不登校になる者たちは、「内なるものが持つ価値」は受け入れていますが、「外なるものが持つ価値」に違和感、嫌悪感、恐怖感を持ち、不登校になってしまいます。

 

 

 

 

つまり「学校という外なるミニ社会」だけを否定しているのです。

 

 

 

 

いじめっ子のL君が進学競争が激しい高校に入学したとたん不登校になったのは、自分が「これが世間だ」と思っていた世界だけが世の中ではないことを思い知らされ、それに適応できなかったからなのです。

 

 

 

 

ですが、若者が不登校に陥る原因はそれだけではなく、もうひとつ要因があります。

 

 

 

 

それは、核家族の親子関係とそこから生まれる偏った人間関係です。日本の核家族家庭では、友だち夫婦のもとに生まれたこどもが、あたかも友達同士のような親子関係を結んでいます。

 

 

 

 

中には、強権的な父親が支配している家庭もありますが、よく観察してみると、その家の父親は妻に対しては高圧的ですが、子どもに対しては甘いことが多いです。

 

 

 

 

つまり、父子の人間関係は友だち風で、母親は配偶者の留守中にこれまた子どもと友だち関係を結んでいます。

 

 

 

 

このような水平の人間関係の中で育った子どもも、成長するにつれて徐々に外の社会との関係を深めていきます。

 

 

 

 

つまり、幼稚園(保育園)にはじまり、小学校・中学校・高校・大学という具合に、若者たちは外の社会との関係を深めていきます。

 

 

 

 

若者たちを待ち構える外の社会の人間関係とは、学年や教師に象徴される、縦の人間関係です。

 

 

 

 

学校という場は、ピラミッド型の序列で構成された外の社会です。ですから、水平の人間関係でのふるまい方しか知らない子どもたちは、学校という縦社会でどうふるまってよいのかがわからず、戸惑ってしまいます。

 

 

 

 

じつは、不登校者へのインタビューをおこなったところ、彼らの「学校が嫌い」「学校がイヤ」という言葉の奥には、「学校とは自分の考えを押し通せない場所」「自分の生き方や考え方を認めてくれない居心地の悪い場所」という認識がありました。

 

 

 

 

彼らが「本来は通うべき学校に通わない・通えない」のは、彼らにとって学校より家のほうが居心地がいいからです。

 

 

 

 

彼らはまず第一に、自分が慣れ親しんだ考え(価値観)を認めてくれず毎日不快な思いや戸惑いを感じさせる学校より、家にいたいと思います。

 

 

 

 

また彼らは、学校で身の危険を感じている場合が多いので、安全が保証されている家にいることを選びます。

 

 

 

 

当人にとって不登校とは、自分には抗しがたい「外なるものが持つ価値」や「外なるものから生まれる行為」からわが身を守るためのシェルターなのです。

 

 

 

 

「学校という名の外なるミニ社会」への拒否を鮮明にした不登校者は、必ず親からの関与を受けるようになります。

 

 

 

 

それはまず、「なぜ、学校に行かないの?」というやさしい問いかけからはじまります。

 

 

 

 

しかし不登校者は、親の猫なで声には動かされず、ますます不登校を強固なシェルターにしていきます。

 

 

 

 

こうなりますと、今度は親のほうが切れます。「なんで学校に行かないんだ!」「ぐずぐずしていないで早く学校に行け!」と、通学を促す声が豹変します。

 

 

 

 

ですが、この程度のことでは不登校者は動じません。ですから、親は腕力に訴えたり、より強い口調で子どもを非難します。

 

 

 

 

「おまえは人間のクズだ」「おまえなど家の子じゃない」「学校に通えないような人間はニートになるぞ」などがその代表例です。

 

 

 

 

このように当人の心境をいっさい考慮せず、「学校に行け!」とばかり繰り返す親の言動は、不登校の当人に、これまで安らぎの場だと信じていた家庭に対する不信感や絶望をもたせてしまいます。

 

 

 

 

つまり、「外なるミニ社会」を失ったうえ、残されていた「内なるミニ社会」からも疎外され、違和感を持つようになります。

 

 

 

 

ここで、いったん不登校者から目を離し、わが子を責め立てる親について見てみましょう。

 

 

 

 

親がしだいに態度を硬化させるのは、わが子の将来を案じてという理由だけでなく、不登校の親ならではの状況が深く関与しているとわたしはみています。

 

 

 

 

学校には参観日や父母会、教師との面談や親が同席する進路指導があります。運動会や文化祭もふくめたこれらさまざまな学校とのかかわりは、子どもが不登校になり時が経過するほど希薄になっていきます。

 

 

 

 

そして親は子ども以上に「内なるものが持つ価値」だけを唯一無比の物差しにしてしまいます。

 

 

 

 

これが、親の干渉が日増しに強まる理由です。このように、親がいっそう頑固になり保守色を鮮明にしていくと、子どもは新たな対応を迫られ、「不登校という名のシェルター」の中にさらに強固な要塞をつくるようになります。

 

 

 

 

そのときできあがる、より頑丈なシェルターが、「ひきこもり」と呼ばれる停滞なのです。

 

 

 

 

ひきこもりとは、当人が「外なるものがもつ価値」からわが身を守るだけでなく、「内なるものが持つ価値」からも身を守るための完璧なシェルターなのです。

 

 

 

 

ですから、子どものひきこもりを親が自力で解決しようとしても、当人はますます頑なになり、自分だけの世界に深く埋没してしまいます。

 

 

 

 

ひきこもり自立支援センターに長女のひきこもりの相談にきたある夫婦は、3時間におよぶ面談を終えた数日後、「やはり自分の子なので、自分たちでなんとかします」と言ってきました。

 

 

 

 

その長女は高校で不登校になり、その後、通信教育でようやく高卒の資格を取得した19歳で、すでに丸1年ひきこもっています。

 

 

 

 

獣医になりたいという希望が過去にあったそうですが、彼女の社会的な時計は17歳で止まっています。

 

 

 

 

だから彼女は、今後ひきこもりが長引くほど、「学校」と「家庭」という、社会全般から見ればごく小さなパーツにすぎないふたつのミニ社会しか知らないまま歳を重ね、いびつな思考のまま生きることになります。

 

 

 

 

そうした事態の深刻さがこの夫婦にはわかっていませんでした。不登校者は、当初は自分の親や家族がもつ価値を肯定していても、長期化すると、我が家のあり方にも疑問持ちはじめます。

 

 

 

 

ですから、不登校は長引くとひきこもりになってしまいます。そして完璧なひきこもりになると、問題は「内なるものが持つ価値」の否定に凝縮され、決定的になってしまいます。

 

 

 

 

その「内なるもの」の代表である親が、自分たちの力だけでひきこもりを解決できない理由はここにあります。

 

 

 

 

解決が容易な「原形タイプのひきこもり」でも、停滞が長引いたり親がそれを自分たちの力で解決しようとすると、かならず解決困難な「今日タイプのひきこもり」に変わってしまうので、くれぐれも注意してもらいたいと思います。

 

 

 

 

面談時点でまだ「原形タイプのひきこもり」と判断できた長女は、すぐに手を打てば数ヶ月から半年でふつうの若者に戻れたはずでした。

 

 

 

 

ですがその道は、彼女の知らないところで親によって断ち切られてしまいました。

 

 

 

 

これから毎日、親からさまざまな干渉を受けるにちがいないこの長女が「今日タイプのひきこもり」に変貌する日は近いと思います。

 

 

 

 

そのうえこの夫婦が、「学校に行かない」長女を無理やり働かそうとすれば、かなり厄介なニートになることはすでに判明しています。

 

 

 

 

そうなればこの両親は、これまで見たこともないような、わが子の奇態や奇行、粗暴行為に振り回されるようになるでしょう。

 

 

 

 

わが子のひきこもりを親が解決しようとすることは、いまやわが子に対する「虐待」と言っても過言ではありません。

 

 

 

 

だからこそ、ニートにくらべ親への恨みつらみが強いひきこもりは、最終段階にいたると、親をターゲットにさまざまな逆襲を試みるのです。

 

 

 

 

わたしは最後のアドバイスとして長女の父親に電話をしました。「お嬢さんのひきこもりの原因はお父さんにはあまりありませんが、明らかにお母さんにあることがすでに面談時に判明しています」と。

 

 

 

 

電話を終えたわたしの脳裏には、かつて何度も惨状を目撃した崩壊家庭・・・母親の家事放棄、父親の逃亡、当人による家屋破壊など・・・・の有様が、家の中に漂うすえた臭いとともにうかびあがってきました。

 

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