「親が死んだら餓死する」と言う引きこもり
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「親が死んだら餓死する」と言う引きこもり

「友達もいない、恋人もいない、結婚もできない、死ぬしかない」と言うのは、ある男性の引きこもりの言葉です。

 

 

 

引きこもりに「親が死んだらどうする」と質問すると、ほとんどが「自殺する」、「そのまま餓死する」、「ホームレスになる」と答えます。「なんとか働く」と答える人はごくわずかです。

 

 

 

 

また、快復して引きこもりの本質がよく見えるようになった引きこもりの人は、引きこもりのままでは結婚できないし、子供を育てられないと言います。

 

 

 

 

人と関われない引きこもりは、子孫を残せないということになります。引きこもりの支援目的は、そんな人たちが人間らしい「ふつうの生活をできる状態に戻す」ことにあります。

 

 

 

 

わたしが引きこもりのキーワードとしてあげておきたいのは、アタッチメント・トラウマ(親との絆が切れること)、共依存、解離性障害とPTSD(心的外傷後ストレス障害)の四つです。

 

 

 

 

どれもトラウマ(心の傷)に関係します。「共依存」という概念は「自分よりも相手を優先する病的な自己犠牲」のことです。

 

 

 

 

多くの引きこもりは成長期に親に甘えられないために発生しています。

 

 

 

 

親子間にコミュニケーションがないと次の四つの問題が発生するようです。

 

 

 

 

1、親との共依存がある(親を優先して自分を否定する)。

 

 

 

 

2、親との絆が切れているか薄皮一枚でつながっている(アタッチメント・トラウマ)。

 

 

 

 

3、多くの引きこもりが「本当の自分」と「偽りの表の自分」の二重人格を持つ。

 

 

 

 

4、人と関わる能力が欠けており、人間を信用していない。

 

 

 

 

わたしはこの認識を基本にして社会復帰支援をしています。ここでは支援テーマのうち重要なものを紹介してみます。

 

 

 

 

アタッチメント・トラウマ(親との絆が切れること)が発生すると、子供は本来の自分(自分の感情と考え)を表現しなくなります。

 

 

 

 

本音を言えない親子関係を維持するには、子供は二つの自分を必要とします。

 

 

 

 

一つは親に合わせる「表の自分」、もう一つは親に見せない「本当の自分」です。

 

 

 

 

表の自分は、親の期待にそった子供として完成します。表向きは親になついていますが、本当は親を警戒しています。

 

 

 

 

これに対して、本当の自分は心の底に隠れており、それが誰にも見せない負の感情、人間不信、見捨てられる恐怖、怒り、悲しみ、憎しみなどを抱えています。

 

 

 

 

つまり、本当の自分はまるで野良猫のように人間を警戒しているのです。

 

 

 

 

この二重人格システムが学校生活や社会生活に広がります。

 

 

 

 

引きこもりは人間関係が辛くて学校や職場にいけなかった場合が多いのですが、それは本当の自分が人に緊張しているからです。

 

 

 

 

引きこもりを抱える親はしばしば「あの子は昔はとても良い子だった」と言いますが、それは親を喜ばせるための仮面人格だったのです。

 

 

 

 

本音を言わない引きこもりは、ある意味、子供の頃から親を騙していたといえるでしょう。

 

 

 

 

そのままでは親に受け入れてもらえないために、親が気に入る子供を演じて「親に育ててもらった」のです。

 

 

 

 

引きこもりが「本当の自分を理解して欲しい」と思う反面、「本当の自分を知られるのが怖い」という矛盾した気持ちを持つのは、二重人格のシステムと関係しています。

 

 

 

 

二重人格のシステムを理解すると、人と楽しそうに会話をしながら人間関係に疲れてしまう引きこもりの気持ちを理解できます。

 

 

 

 

表では楽しそうに振る舞いながら、裏では人を恐れている本当の自分がいるのです。

 

 

 

 

先生に叱られた、友達と喧嘩したなどの些細な理由で引きこもる背景には、もともと「人間関係に疲れた本当の自分」がいるからです。

 

 

 

 

引きこもりの社会復帰支援では、「本当の自分を取り戻すこと」を目的にします。

 

 

 

 

幼児期から親にも隠してきた本当の自分は、人間を非常に警戒しています。

 

 

 

 

しかし、そんな「本当の自分」が人間とコミュニケーションを持つと、生きる力が戻ってきます。

 

 

 

 

本当の自分が復活し、支援者に本音を言えるようになると、人間への安心感が戻ってきます。

 

 

 

 

そんな相談者は、自分から友人を訪ねたり、人を家に招待して遊んだり、新しい人間関係を求めてアルバイトを始めたりします。

 

 

 

 

関東自立就労支援センターでは、本人に外に出たり、少しでも働くようにアドバイスすることはありません。

 

 

 

 

なぜなら、人を求める気持ちが戻った引きこもりは、周りが無理強いしなくても、自分の意思で社会に戻る努力を始めるからです。

 

 

 

 

「本当の自分」には次のような特徴があります。

 

 

 

 

1、感情(生きる力、願望、自発性)がある。

 

 

 

 

2、決断力がある。

 

 

 

 

3、人と関わる能力がある。

 

 

 

 

4、成長する能力がある。

 

 

 

 

引きこもりの多くは、幼児期に本当の自分が体の中に隠れ、現実の世界に参加していません。

 

 

 

 

そのために、何のために生きているのか分からない、人と親しくなれない、居場所がない、現実感がないなどの感覚を持っています。

 

 

 

 

こうした問題は、本人にもよくわからないのですが、本当の自分が復活したときに明らかになります。

 

 

 

 

本当の自分の特徴を逆にすれば、それが表人格の性質となります。

 

 

 

 

表人格は感情が乏しく、ひどい場合は現実感がなかったり、疲労がわからなかったりします。

 

 

 

 

表人格のもっとも大きな特徴は「自分で何も決められない」ことです。もともと親に好かれるために作られた仮面人格なので、人と対立しないように相手に合わせる癖があります。

 

 

 

 

「その場しのぎ」は表人格の基本的な性格です。親や周囲の期待で動くロボットと言ってもいいでしょう。

 

 

 

 

関東自立就労支援センターに相談に来る相談者の半数以上は二重人格を持っていますが、これはセンターだけの現象ではありません。

 

 

 

 

精神科医の川谷大治氏は、著書「思春期と家庭内暴力」の中で二重人格の16歳の高校生について述べています。

 

 

 

 

少年の人格は、頭が良くてそれを自慢する「表の自分」と、勉強もしないで遊ぶ「裏の自分」に分離しています。

 

 

 

 

本人は、頭痛、けいれん発作、意識消失などを訴えていて、支配的な母親の育てられていました。

 

 

 

 

「前思春期、小学四年の盗み(大人としての自分)を契機に、一体感を満たす心地好い母子関係を保証する『オモテの自分』と、その関係を崩壊の危機に陥れる『ウラの自分』を形成することになった。

 

 

 

 

・・・(中略)・・・『オモテの自分』は現実に適応する顔であり、母親の自己愛的願望に応じようとする服従的な姿がその原型である。(思春期と家庭内暴力・金剛出版)

 

 

 

 

抑圧的な環境に適応するために発生する二重人格は、アメリカのアダルトチルドレンでも報告されています。

 

 

 

 

親がアルコール依存症などの機能不全家庭に詳しい精神科医チャールズ・ウィットフィールドはアダルトチルドレンの二つの自分、本当の自分と偽りの自分について述べています。

 

 

 

 

彼は「本当の自分」を内部の子供あるいはインナーチャイルドと呼んでいます。

 

 

 

 

「内部の子供とは、生き生きとした、元気のよい、創造的かつ潜在能力に満ちた部分である。

 

 

 

 

それは誰もが持っている本当の自分、本来のわれわれの姿である。・・・(中略)・・・内部の子供が愛情を受けなかったり、自由な表現を許されないときには、偽りの自分あるいは共依存の自分が発生する。

 

 

 

 

・・・(中略)・・・・内部の子供の否定と共依存の自分の発生は、機能不全家族の子供たちに共通する特徴である。」

 

 

 

 

日本の引きこもりも、アメリカのアダルトチルドレンと同じく、偽りの自分を形成します。

 

 

 

 

彼らは機能不全の親に育てられるために、偽りの人格を作るのです。

 

 

 

 

日本の場合、個性を否定する学校教育が抑圧をひどくして、さらに強固な仮面の自分を作ります。

 

 

 

引きこもりの当事者たちは「偽りの自分」の苦しさを切々と訴えます。

 

 

 

 

〇 親に期待に添って自分を作っていた。気づいたら自分でも自分の心がわからなかった。自分には感情も願望も意思もない。(32歳・男性)

 

 

 

 

〇 外の自分は人に合わせるだけ。人との交際、疲れが同時進行する。(22歳・女性)

 

 

 

 

〇 中学の頃から人に気を遣っていた。人間関係で緊張ばかりしていて、外の自分は人間のぬけがらだった。(28歳・男性)

 

 

 

 

表の自分は、いわば仮面人格で、自分の感情を殺して他人に合わせます。

 

 

 

 

引きこもりが人間関係に苦しむのは、本当の自分が対人関係で緊張しているのに、表の自分が他人に無理して合わせるからです。

 

 

 

 

彼らは、本当の自分を見せると人間関係が壊れてしまうと考えており、本当の自分を対人関係では抑圧します。

 

 

 

 

引きこもる前、友達と明るく付き合っていたのに、一人になるとホッとするのはよくあるパターンです。

 

 

 

 

引きこもりが「居場所がない」「なんのために生きているのかわからない」という感覚を持つのは、本当の自分が自分の人生を生きていないからです。

 

 

 

 

ひきこもりの二重人格は多重人格(正式名は解離性同一性障害)とは決定的な違いがあるので、誤解を防ぐためにも簡単に触れておきましょう。

 

 

 

 

まず、多重人格の症例を見てみましょう。

 

 

 

 

「症例・24歳・女性」

 

 

 

 

短大卒業後に一流企業の総務部勤務。最近、頭痛がひどく、パニック発作がある。

 

 

 

 

記憶が抜けることが多く、気づいたら知らない場所にいたり、朝起きると手首を切った痕がある。

 

 

 

 

男性恐怖症だが、気づいたら見知らぬ男性とホテルにいたことがある。

 

 

 

 

自分でもよくわからないが、過去に一度、身に覚えのない妊娠をしている。

 

 

 

 

部屋の中に自分の好みではない洋服と靴があったり、筆跡の違うメモがあるなど、まるで別の人間が自分の部屋にいたような気配がある。

 

 

 

 

時々、「おまえなんか死ね」という声が頭のなかで聞こえる。数回の面接後、幼女、女性、男性など計五つの別人格が出現したが、本人は人格交代中の会話をまったく覚えていなかった。

 

 

 

 

彼女には子供時代の記憶がところどころ抜け落ちている。

 

 

 

 

引きこもりとの違いがお分かりでしょうか。

 

 

 

 

多重人格者はふつう、引きこもりの人と違って、社会参加能力があります。

 

 

 

 

しかし、気づいたら知らない場所にいるなどという極端な記憶喪失があります。

 

 

 

 

多重人格者はしばしば、自分の行動をコントロールできなくなりますが、この種の行動コントロールの喪失は引きこもりの人には見られません。

 

 

 

 

また、引きこもりは二重人格システムですが、多重人格は人格数が10以上あるなど、人格の数も種類も多様化しています。

 

 

 

 

さらに、多重人格者はひどい性的、あるいは身体的虐待の生育歴があります。

 

 

 

 

こうしたひどい児童虐待の生育歴は、引きこもりには見られません。

 

 

 

 

アメリカの精神障害マニュアルDSM-IVに基づくと、記憶喪失が伴わないと多重人格とは診断されません。

 

 

 

 

引きこもりは人格が解離(人格が分裂すること)していても記憶喪失が伴わないので、多くの引きこもりはDSMーIVでいう「その他の解離性障害」という診断名にあてはまります。

 

 

 

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